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「逆転人生:魂の解放ーLGBTパレードはこうして生まれたー」のスタジオ・コメント原稿 [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

11月30日(月)

NHK総合「逆転人生:魂の解放ーLGBTパレードはこうして生まれたー」のスタジオ収録では、7つのテーマにコメントしたが、残ったのは3つ半くらい。

以下、コメントの原稿。

(1)【「同性愛は病気」、とされてきたこと】(すべてカット)
長らく「同性愛は病気」と位置づけられ、治療の対象でした。欧米で19世紀まで宗教犯罪だったのが精神病と考えられるようになり、その考え方が20世紀初めに日本に入ってきます。異性を好きになるようにカウンセリングや電気ショックなど様々な治療が行われ、WHO(世界保健機構)も同性愛を国際疾病分類のリストに載せてきました。それが1990年になってやっとリストから外れ、「同性愛はいかなる形でも病気ではない」ということになりました。そうした変化はここ30年ほどのことですので、南さんの時代は病気だったわけです。

(2)【”クローゼット”の中の苦しみ】(一部カットで放送)
「クローゼット」はセクシュアルマイノリティのほとんどに共通する苦しみです。自分の性の在り様が、世の中で認められない、だから外に出られず、閉じこもってしまい。それはとてもつらいもので、自分のアイデンティティを肯定できない、否定してしまい、精神的に傷つき耐えられなくなる。セクシュアルマイノリティのうつ病の発症率や自殺を試みる率が高いという研究結果は、そうした悪循環の結果ですね。

「クローゼット」の大きな要因となっているのが、「性のあり方の固定化」です。「男性は男らしくなければならない」という戦前からの価値観が、「企業戦士」という言葉に示されるように、戦後の経済成長を効率化する中で固定化されていきました。現在でも、その「男らしさ」や「女らしさ」から外れるものに対しは、社会から厳しい偏見の目が向けられます。「クローゼット」は社会が作り出したものなのです。

(3)【カミングアウトについて】(ほぼ放送)
今でも、とても勇気がいることです。大切なのは、周囲が強要せず、ご当人が自分の意思でカミングアウトすること。また、周囲の受け止め方によっては、当人を傷つけ、自殺すらも招きかねないので、もしカミングアウトされたら、周囲は「ああ、そうなんだ。教えてくれてありがとう」という感じで、当人の気持ちに寄り添って、受け止めることが大切ですね。
その一方で、カミングアウトしない選択肢も、社会が認めることが大切です。それぞれのタイミングや周囲の理解度、必要性を考え、自分ができる時にすればいいことです。

(4)【エイズパニックの苦悩】(全部カット)
現在みられる感染者を悪者視する偏見が、従来の同性愛者への偏見に乗っかる形で、一気に差別が強まりましたね。不道徳なことをした報い、神が与えた罰みたいなことを平然と言う人もいました。

(5)パレードで感じた、ゲイであることの”プライド”】(前半カット、後半一部カットして放送)
「プライド」とは、自分の性の在り方を自己肯定して、クローゼットから出て、広い社会の中で胸を張って生きていこうとする、矜持(きょうじ)のことです。パレードは、クローゼットを出る勇気や自己肯定するきっかけを与えてくれる機会です。そして堂々と歩くことでプライドと仲間の連帯が生まれていきます。

(杉浦)南さんのパレードはどんな影響をもたらしたのでしょうか?
パレードの社会的意義は「ビジビリティ」、つまり可視化です。社会に「いない」とされてきた人々が、自分たちが「いる」と存在を示すことで、社会はその存在を無視できなくなります。偏見にさらされることを恐れて、声を上げなければ何も変わりません。南さんが始めたパレードは、私たちセクシュアルマイノリティにとって意味があるだけでなく、様々な価値観を認め合う多様性のある社会を目指す現代につながっていったという点で大きな意義があったと思います。

(6)【なぜ、パレードに人は集まっていったのか?】(全部カット)
傍観者からプライドを持った「主体」への変化ということですね。何しろ最初のことなので、「そんなことしていいの?」「できるの?」という感じで出発地点や沿道で「様子見」をしていた人たちも多かったわけです。パレードが動き、歩いている人が沿道に知人を見つけて「あんた、何見てるのよ!いっしょに歩きましょう!」と誘い込む。そうやって雪だるま式に増えていった、と聞いています。南さんが始めたパレードには、それだけのパワー、訴求力があったということでしょう。国際的動向と時代的潮流をしっかり踏まえていたということだと思います。

(7)【今の社会と、LGBTの未来について】(一部カットして放送)
同性婚の法制化は新しい権利の獲得ではないのです。「自分が大切に思う人と一緒に暮らすこと」を社会や国家がバックアップする婚姻制度が一部の人にだけ適用されていない、それが問題なのです。本来、平等に認められるべき権利を「回復」することは「婚姻の平等」であって、当然のことだと思います。ヨーロッパやアメリカなど多くの国々で同性婚が認められ、アジアでも、去年台湾で婚姻平等が達成されました。日本でも同性婚が法的に認められて婚姻平等が達成でききれは、同性愛者への偏見が減り、社会状況は大きく変わっていくと思います。

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NHK総合「逆転人生:魂の解放ーLGBTパレードはこうして生まれたー」 [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

11月30日(月)

NHK総合「逆転人生:魂の解放ーLGBTパレードはこうして生まれたー」
ゲイ・アクティビスト南定四郎さんの人生を、ご本人の熱い語りと再現ドラマでたどった力作。
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スタジオでは7つのテーマに9回コメントして、4回分(クローゼット、カミングアウト、可視化の重要性、歴史的意義)が残った。
まずまずかな。

お金をかけて作った再現ドラマや実写映像はカットできないから、結局、スタジオ収録部分が大幅にカットされる。
2時間近くの収録で、たぶん15分も残ってない。
まあ、そういう番組だとわかっていたから、腹は立たないけど。

全体的には、ディレクターの熱意が実った形で、良い感じに仕上がったと思う。

いろいろ批判はあるだろうけど、それは立場や考えが違うのだから、仕方がない。

私としては、大先達である南定四郎さんからコメンテータとしてご指名をいただき、光栄に思いながら、力を尽くしたつもり。

少しでも「恩返し」になったのなら、たいへん幸いに思います。

担当ディレクターから取材依頼のメールが来たのが6月26日で、面談したのが7月3日、そこでコメント出演することになって、スタジオ収録が9月23日。
放送まで5カ月かかったことになるが、「コロナ禍」でいろいろ動きに制約があったことを考えれば、まずまずだろう。

【再放送】
12月5日 00:15~01:00(12月4日の深夜)
12月7日 15:08~15:55
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