ある女装者の「日記」 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
9月3日(日)
新宿・歌舞伎町にあった女装スナック「ジュネ」を舞台にした、ある女装者の「日記」が、「自費出版するので下読みしてください」と送られてきた。
10万字超の長編だが、京都出張の車中で読み終える。
時期は1986~1994年の9年間で、私が「ジュネ」のお手伝いを始める(1995年夏~)時期とは重ならず、最後のあたりで1箇所だけちらっと出てくるだけだが、薫ママ、麻衣子さん、あゆみ先輩、ニーナさん。美樹姉さん、静香姐さん、中島恵さん、滝(あすか)さん、斎藤さん・・・、懐かしい人たちがたくさん出てきて、目頭が熱くなる。
昭和末期~平成初期の新宿女装コミュニティの記録はほとんどないので、史料としての価値が高い。
加えて、バブル全盛期から崩壊期の活況に満ちた、ある意味、めちゃくちゃな世相も、今となっては貴重な記録。
1人の女装者が、コミュニティでの交流を通じて、女装の技術と社会性を身につけ、自己肯定感を高めていく物語として、読むことができる。
まさに、1980~90年代の女装者の「リアル」がそこにある。
出版まで、全力でサポートしたい。
新宿・歌舞伎町にあった女装スナック「ジュネ」を舞台にした、ある女装者の「日記」が、「自費出版するので下読みしてください」と送られてきた。
10万字超の長編だが、京都出張の車中で読み終える。
時期は1986~1994年の9年間で、私が「ジュネ」のお手伝いを始める(1995年夏~)時期とは重ならず、最後のあたりで1箇所だけちらっと出てくるだけだが、薫ママ、麻衣子さん、あゆみ先輩、ニーナさん。美樹姉さん、静香姐さん、中島恵さん、滝(あすか)さん、斎藤さん・・・、懐かしい人たちがたくさん出てきて、目頭が熱くなる。
昭和末期~平成初期の新宿女装コミュニティの記録はほとんどないので、史料としての価値が高い。
加えて、バブル全盛期から崩壊期の活況に満ちた、ある意味、めちゃくちゃな世相も、今となっては貴重な記録。
1人の女装者が、コミュニティでの交流を通じて、女装の技術と社会性を身につけ、自己肯定感を高めていく物語として、読むことができる。
まさに、1980~90年代の女装者の「リアル」がそこにある。
出版まで、全力でサポートしたい。
「乙女塾」インタビューシリーズ完結 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
8月12日(日)
「乙女塾」のインタビューが完結。
順子の「昔話」というか、「遺言」というか、まあ、そんな企画。
(1回目)
「『LGBTQ+とそのアーカイブ』集める意味は?」
https://otomejuku.jp/media/10628
(2回目)
「「女装は男に尽くすもの」昭和の女装カルチャーって本当?」
https://otomejuku.jp/media/10686/
(3回目)
「インターネット以前、女装やトランスジェンダーはどうやって出会っていた?」
https://otomejuku.jp/media/11433
「乙女塾」のインタビューが完結。
順子の「昔話」というか、「遺言」というか、まあ、そんな企画。
(1回目)
「『LGBTQ+とそのアーカイブ』集める意味は?」
https://otomejuku.jp/media/10628
(2回目)
「「女装は男に尽くすもの」昭和の女装カルチャーって本当?」
https://otomejuku.jp/media/10686/
(3回目)
「インターネット以前、女装やトランスジェンダーはどうやって出会っていた?」
https://otomejuku.jp/media/11433
戦後世界初の「性転換手術」はやはり日本(ほぼ確定) [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
6月29非(木)
日本最初の「性転換女性」永井明子さん(男性名:明)の「性転換手術(造膣手術)」の時期については、今まで「1951年春」という記述をデータとしていた。
ところが、先日入手した『りべらる』1955年7月号の「男になった女体」という記事に「昭和26年(1951年)2月」という記載があることを見つけた。
記事自体は女性から男性に「性転換」した陸上女子投擲競技の日本チャンピオン堤清貴(女性名:妙子)さんについてのものだが、思いがけない拾い物。
これで今まで微妙だったイギリス空軍中尉Robert Marshall Cowell(女性名:Roberta Elizabeth Marshall Cowell)の「性転換手術」(1951年5月)との先後関係が明らかになり、永井さんの「性転換手術」が、戦後9世界最初であることが、ほぼ確定した。
https://junko-mitsuhashi.blog.ss-blog.jp/2017-01-15
日本最初の「性転換女性」永井明子さん(男性名:明)の「性転換手術(造膣手術)」の時期については、今まで「1951年春」という記述をデータとしていた。
ところが、先日入手した『りべらる』1955年7月号の「男になった女体」という記事に「昭和26年(1951年)2月」という記載があることを見つけた。
記事自体は女性から男性に「性転換」した陸上女子投擲競技の日本チャンピオン堤清貴(女性名:妙子)さんについてのものだが、思いがけない拾い物。
これで今まで微妙だったイギリス空軍中尉Robert Marshall Cowell(女性名:Roberta Elizabeth Marshall Cowell)の「性転換手術」(1951年5月)との先後関係が明らかになり、永井さんの「性転換手術」が、戦後9世界最初であることが、ほぼ確定した。
https://junko-mitsuhashi.blog.ss-blog.jp/2017-01-15
「We are Transgenders.」に記録された1990年代後半の先進性 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
5月29日(月)
ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」(尾川ルル監督、1998年)に記録されている1990年代後半の先進性。
(1)「Xジェンダー」概念の萌芽が確認できる
「自分が生まれた時に決められた性別と違う何かになろうとしている人」
↓
MtX、FtX(2000年代)
↓
Xジェンダー(2010年代)
(2)民法を勉強し、可能な限り婚姻と同等の権利を記した事実婚公正証書を作成した同性カップルがいたことが記録されている。
→ 渋谷区が公正証書を取り入れた同性パートナーシップ条例(2015年)に先立つこと18年前。
(3)性的マイノリティの「挙児」に注目している。
「おかま」と「おなべ」(いずれもご本人たちの自称)の夫婦の「挙児」と子育て。
→ 性的マイノリティの「挙児」が社会的に注目される2010年代後半の約20年前。
(4)いろいろな人たちが、性別(ジェンダー)は自己選択・自己決定であることを語っている。
→ 精神科医に性別を認定してもらう「性同一性障害」の病理的・他律的な発想と決定的に異なる自律的思想。
ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」(尾川ルル監督、1998年)に記録されている1990年代後半の先進性。
(1)「Xジェンダー」概念の萌芽が確認できる
「自分が生まれた時に決められた性別と違う何かになろうとしている人」
↓
MtX、FtX(2000年代)
↓
Xジェンダー(2010年代)
(2)民法を勉強し、可能な限り婚姻と同等の権利を記した事実婚公正証書を作成した同性カップルがいたことが記録されている。
→ 渋谷区が公正証書を取り入れた同性パートナーシップ条例(2015年)に先立つこと18年前。
(3)性的マイノリティの「挙児」に注目している。
「おかま」と「おなべ」(いずれもご本人たちの自称)の夫婦の「挙児」と子育て。
→ 性的マイノリティの「挙児」が社会的に注目される2010年代後半の約20年前。
(4)いろいろな人たちが、性別(ジェンダー)は自己選択・自己決定であることを語っている。
→ 精神科医に性別を認定してもらう「性同一性障害」の病理的・他律的な発想と決定的に異なる自律的思想。
5月28日(日)ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.」上映会 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
5月28日(日)
ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」(尾川ルル監督、1998年)の上映会にご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。
上映後の質疑応答も活発で、企画者としてとても有意義な時間でした。
会場でお話ししたとおり、このフィルムに記録された1990年代後半のトランスジェンダー世界の先進性は、あらためて再評価されるべきものだと思います。
同時に自分が生きてきたこの時代がすでに「歴史」になっていることに、今さらながら気付きました。
そして、歴史研究として客観的に評価する必要を感じました。
ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」(尾川ルル監督、1998年)の上映会にご参加くださいました皆さま、ありがとうございました。
上映後の質疑応答も活発で、企画者としてとても有意義な時間でした。
会場でお話ししたとおり、このフィルムに記録された1990年代後半のトランスジェンダー世界の先進性は、あらためて再評価されるべきものだと思います。
同時に自分が生きてきたこの時代がすでに「歴史」になっていることに、今さらながら気付きました。
そして、歴史研究として客観的に評価する必要を感じました。
「We are Transgenders.」上映会の準備 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
5月25日(木)
日曜日の、ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」上映会のため、PP資料を作り始める。
夕方、尾川ルル監督のインタビュー記事を文字入力。
夜中、メモ取りながらチェック。
どんな場面があったか、ほとんど忘れている。
「いずみちゃんナイト2」(1997年10月11日)のシーン、31歳のいずみちゃんが実にかわいい。
会社でOLしているシーンもある。
それにしても、あらためて25年前(1997年)のトランスジェンダー当事者は、よく勉強しているし、真っ当な考えをしていると思った。
まあ、そういう人たちがチョイスされて映像になって残っているのだとも言えるが、今よりずっと困難な社会状況の中で、生き抜いていくためには、それぞれが学ばないとやっていけなかったのだと思う。
社会経験が少なく、たいして勉強もしない人でも、「活動家」としてやっていける現在が、どれだけ良い時代になったかということ。
日曜日の、ドキュメンタリー映画「We are Transgenders.~性別を超え、自分らしく生きる!~」上映会のため、PP資料を作り始める。
夕方、尾川ルル監督のインタビュー記事を文字入力。
夜中、メモ取りながらチェック。
どんな場面があったか、ほとんど忘れている。
「いずみちゃんナイト2」(1997年10月11日)のシーン、31歳のいずみちゃんが実にかわいい。
会社でOLしているシーンもある。
それにしても、あらためて25年前(1997年)のトランスジェンダー当事者は、よく勉強しているし、真っ当な考えをしていると思った。
まあ、そういう人たちがチョイスされて映像になって残っているのだとも言えるが、今よりずっと困難な社会状況の中で、生き抜いていくためには、それぞれが学ばないとやっていけなかったのだと思う。
社会経験が少なく、たいして勉強もしない人でも、「活動家」としてやっていける現在が、どれだけ良い時代になったかということ。
4月30日(日)トークライブ「歴史をほぐし、編みなおす」(代官山「アマランスラウンジ」) [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
4月30日(日)
本日のイベント『躍動するゲイ・ムーブメント』刊行記念トークライブ「歴史をほぐし、編みなおす」(代官山「アマランスラウンジ」)にご来場の皆さま、ありがとございました。

第2部で、わざわざお出かけくださった関係者の方から、「砂川パレード」(00年代の東京のゲイ&レズビアンパレード)の「闇」について、当時の状況を具体的にうかがうことができ、とても有意義でした。
同時にその「闇」の深さに驚きました。
そして、なぜ00年代の「砂川パレード」が無残に崩壊し、10年代の東京レインボープライドが立ち上がることになったのか、一定の見通しを得ることができました。
こうして、多くの方のご協力で「歴史を編みなおす」ことができるのだと、新たな力をいただいた思いです。
ありがとうございました。
本日のイベント『躍動するゲイ・ムーブメント』刊行記念トークライブ「歴史をほぐし、編みなおす」(代官山「アマランスラウンジ」)にご来場の皆さま、ありがとございました。

第2部で、わざわざお出かけくださった関係者の方から、「砂川パレード」(00年代の東京のゲイ&レズビアンパレード)の「闇」について、当時の状況を具体的にうかがうことができ、とても有意義でした。
同時にその「闇」の深さに驚きました。
そして、なぜ00年代の「砂川パレード」が無残に崩壊し、10年代の東京レインボープライドが立ち上がることになったのか、一定の見通しを得ることができました。
こうして、多くの方のご協力で「歴史を編みなおす」ことができるのだと、新たな力をいただいた思いです。
ありがとうございました。
この本を出した意味 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
【論文】「「唄子」を探して——大阪における「女装バー」の成立と展開」(『Antitled』2号、2023年3月) [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
3月29日(水)
お待たせしました。
拙稿「「唄子」を探して——大阪における「女装バー」の成立と展開」(『Antitled』2号、2023年3月)がようやくご覧にいれられます。
https://kihtty.files.wordpress.com/2023/03/an02_03_3-34.pdf
最後の最後(校了後)に、思いがけない有益な情報提供があり、そのお陰で「唄子」について、現状で分かる限りのことを残すことができました。
私ににとって、おそらく最後の実証論文になると思います。
いろいろ情報をいただいた、女装世界の先輩・仲間たちに心から感謝です。
お待たせしました。
拙稿「「唄子」を探して——大阪における「女装バー」の成立と展開」(『Antitled』2号、2023年3月)がようやくご覧にいれられます。
https://kihtty.files.wordpress.com/2023/03/an02_03_3-34.pdf
最後の最後(校了後)に、思いがけない有益な情報提供があり、そのお陰で「唄子」について、現状で分かる限りのことを残すことができました。
私ににとって、おそらく最後の実証論文になると思います。
いろいろ情報をいただいた、女装世界の先輩・仲間たちに心から感謝です。
どこか、調査費用、出してくれないかなぁ [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
3月5日(日)
どこかの公的機関かNPOが、年間100万円、3年間、調査費用を出してくれたら、インタビュー調査が蓄積できて、LGBTの現代史がもう少し鮮明になるのだが。
4月に、石田仁編著『躍動するゲイ・ムーブメント――歴史を語るトリックスターたち』(明石書店)が刊行されると、今までほとんど蓄積がなかったゲイの現代史の口述資料が公になる。
同時に、まだまだ蓄積が不足なことも思い知らされた。
関西の状況を語る口述は今回の本には入らなかったし、東京の2000年代のパレード(TRP以前)をめぐる「闇」も晴れていない。
どこか、調査費用、出してくれないかなぁ。
自分に、お金を引っ張ってくる能力がまったく欠けているのがうらめしい。
どこかの公的機関かNPOが、年間100万円、3年間、調査費用を出してくれたら、インタビュー調査が蓄積できて、LGBTの現代史がもう少し鮮明になるのだが。
4月に、石田仁編著『躍動するゲイ・ムーブメント――歴史を語るトリックスターたち』(明石書店)が刊行されると、今までほとんど蓄積がなかったゲイの現代史の口述資料が公になる。
同時に、まだまだ蓄積が不足なことも思い知らされた。
関西の状況を語る口述は今回の本には入らなかったし、東京の2000年代のパレード(TRP以前)をめぐる「闇」も晴れていない。
どこか、調査費用、出してくれないかなぁ。
自分に、お金を引っ張ってくる能力がまったく欠けているのがうらめしい。