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毎日新聞「大学ミスコンは今」 [現代の性(一般)]

12月9日(水)

『毎日新聞』藤沢美由紀記者の「大学ミスコン」についての連載記事。

5~6年前、ミスコンがない明治大学のアナウンサー志望の受講生が講義の後でやってきて「(ミスコンがある)他大学に比べて、肩書(ミス〇〇など)がないのは、就職試験でとても不利なんです」と言ってきたことがあった。

実際、「これだけ関連性がある」というリストを見せてもらい、 「大学ミスコンは女子アナウンサーの登竜門なんです。なのに明大にないのは、就職機会の不平等です」という主張には、それなりの説得力があった。

さらに、聴いたところでは、 ミスコンの評価基準とアナウンサー採用基準がかなり似ていると感じた。

私は、「商業ミスコン」については擁護論者だが、同時に、大学でミスコンを開催する必要性については懐疑的だ。

彼女にもその旨を説明したが、「機会均等に反する」「就労における不平等」と訴える学生に、その返答をするのが辛かった。

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大学ミスコンは今
女子アナへの近道、人気呼ぶ 大人社会が求める「美」

今年も各地の大学で開催されてきたミスコンテスト。活動する舞台が近年、ネット交流サービス(SNS)上にも広がり、出場者たちはやりがいと同時に精神的な負担も抱える。それでもグランプリを争うファイナリストとして活動すれば、それまでとは比較にならないほど知名度や発信力が増し、テレビ業界や芸能界など華やかな場に近づく可能性も生まれる。多くの学生たちが出場する本音に迫った。【藤沢美由紀、五味香織/統合デジタル取材センター】

「ミスコンでしかできない経験がある」
くっきりとした顔立ちと柔らかい雰囲気。数年前にミス東大コンテストのファイナリストとなった女子学生は「テレビ出演や雑誌の取材など、出場しなければできない経験が多く、楽しかった」と振り返る。

コンテストの期間中、動画配信やSNSでの活動は自分で無理のない範囲にとどめたが、それでもコンテスト終了時のツイッターのフォロワー数は1万人近くになった。ファイナリストの存在は、大学ミスコンを通して多くの人に知られ、発信力は格段に大きくなる。

見た目を評価対象にするミスコンに対する批判があることは理解しているが、「大学生全員に容姿で順位をつけるべきではないと思うけれど、勉強だって順位がつく。容姿やアピールのうまい人が評価される場と分かって出場している」と話す。

出場は「見つけてもらえる」チャンス
大学ミスコンが世間の注目を集めるようになったのは2000年代半ばだ。ミス慶応だった中野美奈子さんや青木裕子さんをはじめ、ミスコン出身者が民放キー局のアナウンサーとして存在感を発揮するようになった。その結果、大学ミスコンは「女子アナウンサーの登竜門」と位置づけられ、アナウンサーを目指す女子学生が多く出場するようになった。高校生が進学先を選ぶ時、より知名度の高いミスコンを開催する大学を優先するケースも出てきたという。首都圏で注目度が高いベスト4とされてきたのは、慶応、上智、立教、青山学院の4大学だ。

「ミスキャンパス評論家」として多くの大学ミスコンを見てきた霜田明寛(しもだ・あきひろ)さん(35)によると、ファイナリストは、テレビ局にとって「青田買い」の対象になりやすい。「アナウンサーの採用は総合的な判断で決まるけれど、応募書類に占める写真の割合が大きいことからも、まず見た目が重視されるのは明らか。ファイナリストに選ばれた学生は、見た目がよいと客観的に評価されているとも言えるのです」

ファイナリストを対象にしたアナウンスセミナーが開催されたり、コンテストの賞品としてテレビ局主催のアナウンススクールに通う権利が与えられたりすることもある。霜田さんは「ファイナリストになることは、『見つけてもらいやすくなる』こと。アナウンサーやタレントを目指す学生にとってチャンスにつながる」と指摘する。

霜田さんは就職セミナーを主催し、テレビ局などを志望する学生の後押しもしている。近年はミスコンへの批判が強まり、開催中止や選考基準の変更を打ち出す大学もあるが、「例えばアナウンサーの採用試験で見た目を重視する評価基準が変わらなければ、ミスコンだけが美を競うことをやめても意味がないのではないか。社会が変わらなければ、本質的な変化にはならないと思います」と語る。

11月初めに発売された雑誌「週刊プレイボーイ」(集英社)に、こんな見出しとともに8ページにわたる大学ミスコンのグラビア特集が掲載された。毎年恒例の企画で、各地で大学祭がピークを迎える前の時期に、主な大学のファイナリストを紹介している。今年は東大や慶応大、立教大など7校の約40人が読者に笑顔を向け、写真とともに出身高校や好きな大学の授業などの情報も添えた。

編集部の菅沼慶さん(47)は、約20年前に特集を発案して以来毎年、担当編集者を続けてきた。企画を提案した当時、大学ミスコンの記事はグランプリを獲得した学生のインタビュー記事を掲載する程度で、大きな扱いではなかった。そこで、菅沼さんは「学生にとってもメリットのある企画にできれば」と、選考前に多くのファイナリストを紹介することを思いついた。

週刊プレイボーイは、水着をはじめ露出度の高い女性の写真を掲載することが多いが、特集で掲載する写真はあえて性的な部分を強調しない。「ファイナリストの両親が見ても恥ずかしくないもの」を意識している。企画は毎年好評で、バックナンバーの希望も寄せられるほど。芸能事務所から、登場した学生を名指しして「芸能活動に関心はないか」などと問い合わせが来ることも少なくない。他の週刊誌なども特集を組むようになった。

変化するファイナリスト
菅沼さんが特集を掲載してきた約20年間で、ミスコンのあり方だけでなく、ファイナリストの姿も変化してきたという。

テレビの視聴者が減ったとはいえ、女子アナウンサーは華やかな存在として今も人気が高い。官僚や弁護士など堅い職業を希望する声が強かった東大ミスコンのファイナリストの間でも、最近は女子アナウンサーを望む声が多い。今年の特集に掲載した各大学のファイナリストのうち半数以上が、アナウンサーを希望する仕事の一つに挙げたという。

一方で、気軽な動機で参加する学生も少なくない。昨年、首都圏の有名大学でファイナリストになった女子学生は、「刺激を与え合える良い出会いがあるんじゃないかと思って出場した」と語る。ツイッターに自分の趣味について投稿し、同じ趣味の人たちから多くの反響があった。「学外の人や大人とも接点ができ、社会勉強ができた」と話す。

菅沼さんも「ミスコンをきっかけに、アルバイトをする感覚で在学中だけタレント活動をしようという学生もいます」と語る。

近年は、ファイナリストに選ばれてから大学祭の本番当日までの数カ月間で、SNSを通した発信やイベント参加などに追われる。菅沼さんはそうした対外的活動による「弊害」を指摘する。「活動を通してスポンサー企業の社員など大人との接点ができる。派手な生活に触れることで、学生らしい天真らんまんさが失われてしまう面がある」

選考過程も含め、きらびやかな世界ではあるが、最後にグランプリに選ばれるのはたった一人で、あとは「敗者」になる。有名大学のファイナリストは、高校までは成績が校内でトップクラスだった優等生が多く、ミスコンでグランプリに選ばれないことで、プライドを傷つけられるケースも少なくない。菅沼さんは言う。「注目されるイベントだけに、参加者の挫折感も大きくなる。目立つことでいろいろな誘惑を受け、場合によっては人生を左右しかねない。気軽に出場して、つらい思いをするリスクを背負うことが、学生たちにとっていいのかどうか」

『毎日新聞』2020年12月9日 15時00分(最終更新 12月9日 16時39分)
https://mainichi.jp/articles/20201208/k00/00m/040/241000c?fbclid=IwAR0bck_a68kqwFh0xw67sdTNiiODx1lspiRkIJT8dyAL1houCV7tkd5DxTk
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