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『毎日小学生新聞』のLGBT特集(2018年7月24日号)。 [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

7月26日(木)

『毎日小学生新聞』のLGBT特集(2018年7月24日号)。

特集1面は、松信ひろみ先生(駒沢大学教授)のLGBT解説。
毎日小学生新聞20180724 (1).JPG
解説図、なぜ、Tには「恋をする相手(性的指向)」の欄がないのだろうか?

2面は、「レインボーメッセージ for children」
毎日小学生新聞20180724(2).JPG

3面は、「こんなにすてきな先生がいます」
毎日小学生新聞20180724 (3).JPG
反面教師が1人、混じってます。

4面は、「もっと知りたいLGBT」
毎日小学生新聞20180724 (4).JPG
仕掛け人の松中権さんと編集長の太田阿利佐さんのメッセージ。

松中さんに誘っていただき、少しでもお役に立てたのなら、うれしいです。

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『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」第12回(最終) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月10日(土)
『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第12回(最終)
7月24日から始まった連載も3週間12回で完結。

紙面で「男の娘」のことを「性的マイノリティーの人は、どう見ているのか。」という部分が気になった。
これだと、「男の娘」は「性的マイノリティ」ではないという構造になってしまう。
実際には、「男の娘」には、性的マイノリティという意識を持っている人も、性的マイノリティではないと言う人も含まれているわけで、そこらへんの多様性が「男の娘」の特質だと私は思っている。
そもそも「誰が性的マイノリティか?」ということを外的に規定するのはかなり問題がある。
その背景として、この10年間、トランスジェンダーか、性同一性障害者かという対立構造をベースに「誰が性的マイノリティか?」を外的に規定する議論が延々と行われ、その過程で新たな差別の再生産が行われてきた歴史がある。
私としては新しい「男の娘」概念には、そうした誰も得るものがない、お互いを傷つけるだけの不毛の構造を超えて欲しいという思いがあるので、その点、最後の最後で、また不毛な構造に引き戻された感じがして残念に思った。

それはともかく「男装/女装」というテーマを『朝日新聞』の教育欄が取り上げた意義は小さくない。
男装や女装をする生徒を「問題行動」や「病気」ととらえるのではなく、なぜ彼女/彼たちがそうした自己表現をしようとするのかを考えて、見守って欲しい。
これを機会に学校現場での理解がいっそう進むことを願う。

担当の原田朱美記者は、お世辞抜きで良い仕事をされたと思う。
私も、お手伝いができて幸いだった。
同時に、「女装」関係者の一人として、こうした連載企画を実現してくださったことに、心から感謝している。
「お疲れ様でした。そして、ありがとうございました」
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いま子どもたちは)男装/女装:12 
一人ひとり、違うと分かって

「若衆Bar化粧男子」の事務所で働く佐々木和さん=東京都文京区
No.570

「見た目は女性、中身は男性」とされる「男の娘(こ)」。
そのブームは10代にも広がっている。性的マイノリティーの人は、どう見ているのか。

「『男の娘』って、すごくあやふやですよね」
東京・湯島の飲食店「若衆Bar化粧男子」で働く佐々木和(のどか)さん(23)はそう話す。男性として生まれ、それに違和感を感じている性同一性障害だ。

「男の娘」の定義ははっきりしない。単に「見た目が女性」という人をそう呼ぶことも多い。佐々木さんは、自分が「男の娘」と言われるのは嫌だという。男性であることが苦しいのに「中身は男性」という人を意味する言葉でくくられるのはつらい。「そもそも『男』っていう字が入ってますよね」

「男の娘」の中には、「かわいく変身した自分」を見せたい人が少なくない。佐々木さんは違う。「とにかく人目につかないように、男だと見られないように、隠れて生きてきた」。着る服も化粧も、飾り気のない、ごくふつうの女性のものだ。

職場の経営者は、女装男子のリーダー的存在である井上魅夜(みや)さん(31)だ。井上さんの元には、様々な性的マイノリティーの若者が集う。

井上さんは「『男の娘』の中には、性的マイノリティーも多い。オカマ、ニューハーフといろんな表現を経て、今は新しくて色のついていない『男の娘』という言葉の陰で一息ついているんです」と言う。

一緒にされたくないという佐々木さんとは逆に、「男の娘」ブームを利用して、世間の偏見から逃れようとする人もいる。華やかで明るい男装と違い、女装の世界は複雑だ。

佐々木さんは、性同一性障害の人たちの交流の場を作る団体に参加する。「『オカマ』も『女装』も『男の娘』も、世間的には同じかもしれない。でも一人ひとり違うって、分かってもらえるような活動がしたい」
 (原田朱美)
     ◇
「男装/女装」は終わり、次回は21日に始めます。
 〈+d〉デジタル版に「男装女装を許さない時代の共通点」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308090437.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308090437
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(以下、デジタル版のみの掲載)
男装女装を許さない社会

明治大学非常勤講師の三橋順子さん。トランスジェンダー(性別越境者)で、女装を実践・研究している。著書に「女装と日本人」など

【原田朱美】明治大学非常勤講師の三橋順子さん(性社会史)に、男装・女装と社会との関係について語ってもらった――。
     ◇
男装女装が許されなくなった歴史上の最初の転換点は明治だと思う。欧米に追いつこうと欧米の思想を輸入した際、「男は男らしく、女は女らしく」という規範が庶民にも広まった。

次は、戦時体制になった昭和10年代から。「お国のために戦う」という時代で、男性が男性性を捨てることは許されなかった。

第2次世界大戦後、それまでの軍の締め付けが緩み、1940年代後半から50年代にかけて女装の男娼(だんしょう)やゲイボーイが出てきたが、高度経済成長期を迎えると、再び女装のブームはしぼんでいく。

高度経済成長期は、24時間働く「企業戦士」という闘争的な男性像が一般的だった。企業戦士たりえない男性は社会から認めてもらえない。一方、女性は「一般職OL」という男性を補佐する存在。こうした「企業的なジェンダー」が社会を覆っていた。

明治、戦争、高度経済成長という三つの時代に共通するのは、社会が単一化しているという点。目標に向かって一丸となって戦うというときは、単一化圧力が強くなる。逆に言うと、多様性が失われた社会。そうした時代がいったん崩壊すると単一化圧力が弱まり、男装女装のブームが出てくる。

この10年の男装女装のブームは、60~90年代に築かれた企業的ジェンダー観の崩壊の表れではないか。

男装女装を許す時代を「下り坂のダメな時代」と考えるか、「多様化を尊重する時代」と考えるかは価値観による。

連載「いま子どもたちは 男装/女装」を読んでいると、特に女装をめぐり、社会の厳しい視線が子どもたちに精神的な負荷を与えている様子がよくわかる。大人たちには、子どもたちの男装・女装を、自己表現のひとつとして受け取ってほしい。頭ごなしに否定的なとらえ方をしないでほしい。(談)
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308090375.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308090375

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」第11回 [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月9日(金)
『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第11回。
「紙面」の見出し「『男の娘』が楽」は、フェミニストの先生方に叱られそうだが、「男の娘の方が楽」と思ってしまうほど、現代社会、いや近代社会以降、「男らしくない男の子」を取りまく社会状況、とりわけ学校における状況がきついということ。
そうした学校教育現場の厳しい状況について、私は11年前に「トランスジェンダーと学校教育」 (『アソシエ』8号 2002年、御茶の水書房)で指摘したのだが、当時は性同一性障害の大流行期で、トランスジェンダー視点で書いた論文はまったく顧みてもらえなかった。

「デジタル版」は、読んでいていろいろ感慨深かった。
茶漬けさんが言っている「履歴書に「趣味・女装」って書ける世の中になってほしい」というのは、私がずっと言ってきたこと。
思いは次の世代に受け継がれているのだなと、うれしかった。
一方、魅夜ちゃんが言っている「女装は年を取ってもかわいくて、格好良くて、ステキな人というモデルになる先輩がいない」という指摘には、上の世代の一人として「申し訳ない。これが精一杯でした。力が足りませんでした」と頭を下げるしかない。
たしかに、魅力的な女装・男装のロールモデルは必要だ。
それを作り上げるのが、茶漬けさんや魅夜さんたちの世代の「仕事」だと思う。

この連載も、残りわずか。
9日(土)朝刊に掲載の第12回が最終回となります。
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(いま子どもたちは)男装/女装:11 
男らしくなくていい「男の娘」が楽

「男の娘」の写真集の出版記念イベントでは、女装の実演もあった。男子生徒(17)もこの後、同じようにメークをしてもらった=東京都新宿区

 No.569
2日夜、東京・新宿で「男の娘(こ)」の写真集の出版記念イベントがあり、モデルになった「男の娘」たちも出席した。

定員50人の会場は満員。20~40代の男女に交じり、都立高校2年生の男子生徒(17)の姿もあった。「見た目は女の子だけど中身は男性っていう『男の娘』に、会ってみたかった」

彼は、「男の娘」に自分を重ねていた。
自分が「男らしくないこと」をずっと悩んでいた。幼いころ、転んで泣くと、母親が言う。「男の子なんだから、泣かないの」。なぜ男はダメで、女ならいいのか――。

成長してくると、同級生の男子たちが、自分のことを「僕」ではなく、「俺」と言い始めた。しぐさも乱暴になってくる。自分はそうしたくないのに、「男の子はみんな、こう振る舞うべきだ」という圧力を感じた。そして、元気でやんちゃな「男らしい」男子が女子にモテる。「男らしさ」がない自分は、きっと女子には好かれないのだろうと、落ち込んだ。

好きになるのは女子だけど、男らしい言動は苦手。自分はいったい何者なのかと本気で悩み、1年ほど前からインターネットで調べ始めた。いろんな性的マイノリティーや「男の娘」の存在を知り、今はかなり楽になった。

「男の娘」のような女装にも、興味がある。女子のかわいい世界観を時々体験してみたい。できれば「男の娘」としてモデルをやりたい。有名になって、こんな人間もいるのだと、世間に訴えたい。
出版記念イベントで、ステージに見入っていると、主催者が、女装メークをしてもらいたい客を募り始めた。「この子にしなよ!」。会場のどこかから、自分を推す声が上がった。

彼は、あっという間に「人生初」の化粧を施され、顔だけ女性に。会場から「かわいい!」という声が上がった。「早く男の娘モデルになれるように、頑張ってメークを覚えなきゃ」。そう心に決めた。
(原田朱美)
 〈+d〉デジタル版に「女装はこれから、どこに向かう?」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308080531.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308080531
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(以下、デジタル版のみ掲載)
女装はこれから、どこに向かう?

出版記念イベントに出席した(左から)立花奈央子さん、茶漬けさん、井上魅夜さん=2日、東京都新宿区

「男の娘」の写真集出版記念イベント。「男の娘」たちが女装のきっかけや今後の夢を語った=2日、東京都新宿区
 【原田朱美】女装はこれから、どこに向かうのか――。東京都新宿区で8月2日、「男の娘(こ)」の写真集「ゆりだんし」(マイウェイ出版)の出版記念イベントがあった。女装男子をめぐるトークの一部を紹介する。

出演者は、写真集で撮影を担当した立花奈央子さん▽「男の娘」の女装メードカフェ「NEWTYPE」を経営する茶漬けさん▽「男の娘☆ちゃんねる」などを手がける井上魅夜さんら。トークは、「男の娘」ブームをめぐる議論から始まった。

立花 私、自分の仕事ではもう「男の娘」って言葉を使わないって宣言しちゃった。「男の娘」の意味には大きく二通りある。ひとつは女装する男の人。自分のために女装する人たち。もうひとつは2次元のキャラ。2次元の「男の娘」って、とっても若い中高生くらいの女子と見間違うほどの美少年に描かれている。男性の性的な欲求を満たすために作られている偶像です。自分のためと性欲のため。ふたつが指すベクトルが全然違う。
2次元が好きな人たちから3次元の女装した「男の娘」を見ると、男っぽさが残っていたりするので、全くの別物に見える。彼らはものすごい拒否反応を示すんですよ。「死ね」「認めない」とか悪口の嵐。私は女装の理解をすすめたいと思って「男の娘」と銘打って出版物を出したけど、2次元好きの人にとっては自分の好きなものを汚される脅威でしかなかった。すごく攻撃されました。

茶漬け 3次元の「男の娘」って、最初はすごくきれいな女装の人を指す言葉として登場した。でもそれがブームになって広まって、必ずしもキレイじゃない人が「僕も男の娘です」と言うようになって、いろんな人がまじったぐちゃぐちゃな使われ方になってきた。「男の娘」って客観的なものだと思う。

井上 「男の娘」って、2次元の理想を一生懸命3次元に落としこむ人を指す言葉でいいんじゃないかな。理想の星を追いかけている姿が「男の娘」だと思う。かわいいから認めるとか認めないとかではなく、そういうものでいい。ムーブメントってやっぱりそういうもの。

茶漬け 履歴書に「趣味・女装」って書ける世の中になってほしい。昔はオタクって人に言えなかったでしょ? 性犯罪者予備軍だと思われていた。だけど今は女の子がすすんで「自分はオタクだ」と言える世の中になった。ビジュアル系バンドも、昔は「悪魔でも信仰してんじゃないか」とか「ドラッグやってんの」「ウツなの」って言われてた。だから、女装もできると思う。
最初に必要なのはアイドルグループ。あらゆるサブカルチャーにはカリスマがいる。誤解なく発信できる人が出て、理解がすすんできた歴史がある。たとえばビジュアル系バンドなら「X JAPAN」。オタクは「電車男」。だから、女装もアイドルとプロデューサーと、性的な要素を取り除いたファッション女装の雑誌という三つがあれば売れると思う。

井上 自分は、街をつくりたい。この範囲は女装の人が当たり前にいるという街。普通に安全に暮らせて、共同体にも溶け込んで、いっそ祭りも参加するような。僕は上野から秋葉原までをそうしたいと思ってる。
あと、女装は年を取ってもかわいくて、格好良くて、ステキな人というモデルになる先輩がいない。日本全体にも言えるかもしれないけど、若ければ若いほどいいとか、チヤホヤするのは社会として幼い。僕も年を取るけど、そういうモデルを示せるようにしていきたい。

茶漬け 女装とエロを切り離したくて仕方ない。女装と言うと「エロだろ」「ゲイだろ」と言われる時代が続いてきた。性を切り離して、男が好きだろうが女が好きだろうが、女装が好きならそれでいいじゃんっていう世の中をつくりたい。

立花 女装するってことについて、それだけで非難されない世の中になってほしい。今回写真集『ゆりだんし』をつくったのも、女装って気持ち悪くなんかない、普通にかわいいじゃんって思ってくれたらいいなと。夢は、熟年女装写真集をつくること。

井上 いろんな理想の女装があると思うけど、ムーブメントは1人の力でつくるものではない。みんなで盛り上げていってもらえたら。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308080227.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308080227

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第10回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月8日(木)
『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第10回。
今回の見どころは、デジタル版に載っている五十嵐さんという「男の娘」の写真。
http://www.asahi.com/culture/articles/TKY201308070557.html
いや~ぁ、すごい!
でも、こういう「娘」が「男の娘」の標準レベルにされると、みんな困ると思う。
「女装男子」に対する社会の評価が厳しいのは、「見られる性」としての女性になるから。
「わざわざ『見られる性』の女になるんだから、それなりのものがあるんだろうな?(そうじゃなかったら許さないよ)」ということで、生得的な女性よりもさらに厳しく評価される。

ちなみに、私がそうしたジェンダーの構造、ジェンダーの非対称性を肯定しているかのように批判する人がいるが、それは違う。
論理的に肯定はしないが、そうした現実があることを踏まえて、対応すべきだと言っているだけ。

短いけども、今回もデジタル版でコメントしている。
私のコメント解説は、このシリーズで4度目。
たぶんもう1回、最終回に登場する予定。
7月24日 第1回(紙面)「この世代ならではの文化」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-07-24-2
7月31日 第5回(デジタル版)「『華やか』男装、『日陰者』の女装 寛容度に差、なぜ」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01-2
8月7日 第9回(デジタル版)「今どき女装は「かわいい」が鍵」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-08-07
8月8日 第10回(デジタル版)「女装はなぜ難しいのか」
合わせて、お読みいただけたら、幸いです。
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(いま子どもたちは)男装/女装:10 
女性服着て、自由を手にしたんだ

「『あの格好なんだろう?』と目に留まるようなファッションを目指す」と言う大内修平さん=東京都渋谷区
 No.568
女物のスカートをはき、腰あたりではワンピースの裾をフリルのようにチラ見せ。男物のシャツを重ね着し、サングラスでキメている。
「女装じゃないですよ」
そう話すのは、東京都内に住む大内修平さん(18)。「バンタンデザイン研究所」(東京都渋谷区)で、ファッションを学んでいる。女性ものの服をうまく採り入れるのが、彼のスタイル。「女を装う」のではなく、あくまでも男として着る。
種類が乏しい男性服に比べ、女性服は多種多様だ。コーディネートに加えると、組み合わせがぐんと増える。女性服は、自分で買いにいくという。
5月にあったファッション誌の編集長の講演が、女性服を着るきっかけになった。「いま、ファッションには男女なんて関係ない」。その言葉とともに、女性服を着た外国人男性モデルのショーの映像を見せられた。「かっこいい」と素直に思ったという。
男の自由度が低いのは、服だけではない。大内さんは中学時代、必死に勉強をしていた。「男だから、将来は家族を養わなきゃいけない。いい大学に行かなきゃならない」。それが当然という重圧があった。
ところが中2の夏、ファッションリーダーとして若者に人気のあるミュージシャン、VERBAL(バーバル)を知り、ファッションの世界に心を奪われた。「ファッションで生きていこう」と決め、受験のための勉強をやめた。今では、「男女関係なく、好きなことをして食べていけたらそれでいい」と思っている。
「もしファッションに出会わなかったら、たぶん大学に行って、好きでもない勉強を漠然と続けてたと思う」。そう言って顔をしかめて見せた。
毎日ファッションのことを考え、仲間と熱く語るのは楽しい。女性服を着るようになってから、より一段と斬新なファッションを思いつくようになったという。またひとつ、自由を手にした。
 (原田朱美)
 〈+d〉デジタル版に「女装はなぜ難しいのか」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308070646.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308070646
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(以下、デジタル版のみ掲載)
女装はなぜ難しいのか

女装した五十嵐さん。「女装したら似合う顔立ちなんじゃないか」と思い、半年ほど前から女装を始めた。「ネットにあげて目立ちたいだけで、性的な指向ではないです」と話す
【原田朱美】東京都在住の女装男子、五十嵐智紀さん(20)は、ある男装女子の写真を見て、こう言った。

「こんなの、ずるい! 男装って言ってるけど、男には見えないじゃん!」
彼が言いたいのは、変身のクオリティーのことだ。女装は、男っぽさが残っていると「キモい」と嫌われる。だから女装男子は、ただの女子ではなく「かわいい女子」にならなければ、認めてもらえない。
一方、男装は女の子っぽさが多分に残っていても、拒否されることはない。たとえばEXILEのような「いかにも男性」という見た目にならなくても受け入れられる。
男装は女装ほど努力をしていないじゃないか、というのが五十嵐さんの主張だ。ちなみに、五十嵐さんの女装姿を見ると、たしかに「かわいい女子」になるべく頑張っている。

ではなぜ、女装は難しいのか。
社会的な受容度の違いもあるが、何より男女の骨格の違いが大きい。男性は、骨格が女性より太い。ぱっと見た時の違和感の大きさが、男装より女装の方が大きいのは、これによる。骨が細い女性が太く見せるには着る物で調節できるが、太いものを細く見せるには、骨を削る以外にないのだ。
男女の体の違いが大きい場所は、背丈、肩幅、のど、骨盤、おしりなど。顔では、額、あごなどが特徴的だ。性同一性障害の人の中には、こうした特徴を消すための手術を受ける人もいる。

骨格の太さはどうしようもなくても、写真写りでごまかすというテクニックもあるらしい。
冒頭の五十嵐さんは、ウィッグで額と眉毛を隠して撮ると「ぐっと女っぽくなる」という。
別のある女装男子は、「片方の肩を前に出し、もう片方を後ろに引いて斜めに写るようにする」と教えてくれた。そうすると、肩幅が多少は狭く見える。インターネットで知り合った女装の先輩に教えてもらったという。女装男子たちは、こうしたノウハウを互いに情報交換している。

ただ、「今は昔ほど女装は難しくない」と、明治大学非常勤講師の三橋順子さんは指摘する。
最近の男性は、「ほっそりしたあごやウエストなど、骨格が細い人が増えている」と三橋さん。身長が高い女性も増えたため、女装した男性が飛び抜けて大きく見えてしまうということも減った。三橋さんは「もちろん個体差はありますが、全体的には女装をしやすい時代になってきたと思います」と言う。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308070557.html

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第9回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月7日(水)
『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第9回。
『朝日新聞』朝刊の教育面連載「いま子どもたちは」では、7月24日から「男装/女装」を扱っています。
第7回までは「男装女子」に注目していましたが、8月3日掲載の第8回から「女装男子(男の娘)」に対象が移っています。
第9回は「乙女心がきゅんきゅんする時に」。
デジタル版は「今どき女装は『かわいい』が鍵」で、湯島「若衆Bar化粧男子」の井上魅夜ママの登場です。
それに関連して私のコメントが掲載されました。
(「娘分」との共演が実現して、うれしい!)
今どきの女装の価値観と、その問題点について語っています。

私の解説は、このシリーズ3度目になりますが、たぶんもう1回、最終回に登場する予定です。
7月24日 第1回(紙面)「この世代ならではの文化」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-07-24-2
7月31日 第5回(デジタル版)「『華やか』男装、『日陰者』の女装 寛容度に差、なぜ」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01-2
8月7日 第9回(デジタル版)「今どき女装は「かわいい」が鍵」
合わせて、お読みいただけたら、幸いです。
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(いま子どもたちは)男装/女装:9 
乙女心がきゅんきゅんする時に

ワンピースを着たハヤトさん。ヒールのあるブーツは、妹のものを拝借してきた

No.567

女装したハヤトさん(19)に会ったのは、九州北部のカラオケボックスの一室だった。
「3カ月に1回くらい、乙女心がきゅんきゅんするときがあって。そういうときに女装したら、すごく楽しいんですよねー」
お気に入りの黒いワンピースを着たハヤトさんは、淡々とゆっくり話す。昨春高校を卒業し、今は飲食店で働いている。

生体リズムのせいなのかどうか分からないが、自分の中に「男モード」と「女モード」があるのだという。
男モードのときは、女の子を見ると、「付き合いたい」「かわいい」「守りたい」。それが女モードになると、「守られたい」に変わり、繁華街を歩くと、女性ファッションや小物雑貨に目がいくようになる。
男装する女子が、自分の中の「男の子」を表現しようと男装するように、ハヤトさんも、自分の中の「乙女」に服を着せている。ただ、男装とは違い、他人に無邪気に姿を見せることはない。

女装を始めたのは去年の冬。周囲の人には、女装のことは語っていない。「まあ、話すことでもないかなって。得することでもないし」。自宅でこっそり「変身」し、かわいく女装できたときは、その姿をインターネットに投稿することもある。

時々、写真を見た男性から「会いませんか」と、性的な関係を求めるメッセージが届く。だいたいそれは、30~40代の男性だ。「それはちょっと引きます。僕は女の子になった自分を見て満足してるだけで、正直、性欲目的じゃないですもん」

「女装」という言葉を使いにくいという。「性的なものを連想させるから。『コスプレ』だと言いやすい」

「女装」という言葉を嫌う女装男子は少なくない。女装が常に、変態、異常者、気持ちが悪いというマイナスイメージと共に語られてきた証しでもある。
「別に、この姿で目立ちたいってわけでもない。普通に生活できると幸せなんだけどなあ」。ぽつりとそう漏らした。(原田朱美)
 〈+d〉デジタル版に「今どき女装は『かわいい』が鍵」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308060557.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308060557
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(以下、デジタル版のみ掲載)
今どき女装は『かわいい』が鍵

「若衆Bar化粧男子」を経営する井上魅夜さん。ニコニコ動画で放送している「男の娘☆ちゃんねる」にも参加している

【原田朱美】女装する男子を取材していて、必ず出てくるのが「かわいい」という言葉だ。数年前からブームになった「男の娘(こ)」も、「女の子のようなかわいい男子」という表現をよく使う。でも、容姿は人それぞれ。どうしてもかわいくなれないこともありそうだが――。

東京・湯島で「若衆Bar化粧男子」を経営する井上魅夜さんは、「男の娘」のリーダー的存在の一人。
その井上さんがきっぱりと言った。
「かわいくなかったら価値がないっていう場所です」

「場所」とは、毎月最終土曜日の夜に東京・新宿で開催される女装イベント「プロパガンダ」のこと。毎回300人以上の人々が集まる「おそらく日本最大級の女装イベント」(井上さん)だ。未成年は入場不可。ここで女装男子たちは、互いのかわいさを競い合う。
「かわいくなれない人」は、こうしたイベントで美しい女装男子を見る側に回るという。井上さんによれば、「自分はかわいくなれないけど、せめてかわいい人にお酒をおごりたい」という心理なのだとか。

従来の女装コミュニティーは、男性が、女装者を美しくするためのスポンサーとなる代わりに、女装者が男性に従属し、性的関係をもつのが一般的だった。しかし今は、かわいい女装男子であるほど、男性より立場は上。貢がれることも珍しくない。

著書「女装と日本人」などがある明治大学非常勤講師の三橋順子さん(性社会史)は、「昔の女装世界より、今は価値が単一化している」と指摘する。
以前は、女装者をほめる言葉はいろいろあった。「女っぽい」「気立てが良い」「料理がうまい」……。見た目が必ずしも美しくなくても、スポンサーとなる男性に認めてもらえたという。でも今、価値があるのは「かわいい」だけ。

三橋さんは「それは女性の価値観だ」という。クールジャパンとして海外にも輸出される「かわいい」。この女性的な視点が女装の世界にも浸透している。
「男性視点だったら、セクシーとかキレイとかいう表現になる。女性的な視点だから『かわいい』なんです」と三橋さん。そして、「かわいい」の反対語は「キモい」。そうなると、今度は排除される。三橋さんは「この残酷さも、女性的です」と言う。

ただ、「そうでもない」という意見も。「男の娘」の専門誌「わぁい!」(一迅社)の土方敏良編集長代理は「同人誌とか小さなイベントで女装男子が集まったときは、お互いにいいところを見つけて『かわいい』ってほめ合ってますよ」。まるで女子中学生のような光景だという。お互いに劣等感をもつからこそ、ほめて励まし合っているらしい。

ただ、かわいくなれたからといって、必ずしも幸せではないようだ。冒頭に紹介した井上さんは言う。
「かわいいヤツに限って、かわいくなくなったら、死ぬんですよね」
自死を選ぶのだという。「3カ月に1回くらい、そういう話を聞く」と井上さん。

井上さんに言わせると、「20代前半の若いうちは、あまり金をかけなくてもかわいくなれる」。でも、人は老いる。その後もかわいさを維持しようとすると、多額の金が要るし、金をかけても若いころほどには容姿を保てない。そうした実情に精神的に耐えられなくなった人が、死を選ぶのだという(もちろん、本当のところは本人にしかわからないのだが)。

「ドーピングをしまくってフルマラソンに出続けるようなもんですよ。ある日、ばったり倒れてしまう」。井上さんの言葉は、心が痛くなる。「それってよくないでしょ? 『かわいい』だけしか価値基準がないから、そうなるんです。僕はそうじゃない場をつくろうと思ってる」

三橋さんは「かわいい」という価値基準が、女装の低年齢化とも関係していると指摘する。「『きれい』という価値観なら30代、40代にも使える。でも『かわいい』は30歳にはもうきつい。むしろ10代の方がいいという考えすらある」。「男の娘」たち自身も「僕はもう23歳で、年ですから」といった発言をするという。

三橋さんは言う。
「昔から、女装のプロであるニューハーフの世界では自殺の話をよく聞く。見た目でしか人に評価されず、それにすがると、失ったときに追い詰められてしまうから。だから、女装世界の先輩たちは『見た目以外に自分を肯定できる価値観を身につけないとダメだよ』と言ってきた。でも、10代や20代前半の人間的に未成熟な時期に、この言葉はなかなか通じない。それが今の難しさだ」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308060311.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308060311

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第8回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月3日(土)
『朝日新聞』朝刊の教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第8回。
ようやく「女装男子」篇。
今回のキーワードは「男装女子の明るさに比べ、女装男子には、どこか影がつきまとう」。
私の時代(20世紀)に比べたら、ずいぶん和らいだとはいえ、やはり、「女装」は「男装」に比べて社会的抑圧が強い。
今回の主人公の「娘」のように「女っぽい男の子」は、学校でも家庭でも生きにくい。
その結果として、メンタルヘルスを悪化させるケースがしばしばある。
その部分が「影」になってしまう。
この「娘」が「女装」をすることで、自己肯定できることを願っている。
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(いま子どもたちは)男装/女装:8 
男だって「かわいい系」が楽しい

女装メードカフェで働く通信制高校2年の男子生徒。長い髪はウィッグだ=東京都千代田区  
 No.566
 「男の娘」で「おとこのこ」と読む。女装する男子の間ではすっかり市民権を得た言葉だ。
 「見た目は女性だけれど、中身は男性」。2000年代後半から登場し、同性愛指向でも性同一性障害でもないことが新しいと、注目を集めてきた。
 東京・秋葉原の女装メードカフェ「NEWTYPE」は、そんな「男の娘」たちが店員として働く店だ。
 現在、10代の店員は3人。その1人、都内の通信制高校2年の男子生徒(17)は6月末から、ここで働いている。すらりと細い体。黒のミニスカートから伸びる長い足が目を引く。
 「女の子の服の方がめっちゃ種類があるし、楽しい!」。重そうな付けまつげをパチパチと上下させ、よく笑う。恋愛対象は、やはり女性だという。
 中2の夏から化粧を始め、女装は半年ほど前から。好きなブロガーが女装を始め、それに憧れて自分でもやってみた。
 もちろん男の格好で出かけることもあるが、「女物の服の方が種類が多くてかわいくて、気に入っている」という。
 「この姿で人に見られたい。ここにいるって、存在をめっちゃアピールしたい」
 「男の娘」の専門誌「わぁい!」(一迅社)の土方敏良編集長代理は、「大げさに言うと男の娘は、かわいいものに魅力を感じる男の解放運動なんです」と言う。
 女は自由に服を選べるのに、男がかわいいものを好きだと言うと「変態扱いされる」。女服に「カッコいい系」はあるが、男服に「かわいい系」はない。
 ただ、「解放」は、まだそんなに進んでいない。
 先の男子生徒は、女装して家を出るとき、父から目を合わせてもらえない。同級生からは何度も「オカマ」「男らしくしろ」と言われてきた。
 「だって無理じゃん? 保育園のころから、女の子の方が話が合うんだもん」
 男装女子の明るさに比べ、女装男子には、どこか影がつきまとう。(原田朱美)
 〈+d〉デジタル版に「男の娘」の世界とその変遷
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308020561.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308020561
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(以下、デジタル版のみの掲載)
男の娘はどこからきて、どこに向かうのか

「男の娘」の専門誌「わぁい!」の2013年7月号。イラストは男性っぽさをあえて残すため、ヒザが骨張っていたり、胸が真っ平らだったり。「こんなにかわいい子が女の子のはずがない!」がキャッチフレーズ
 「見た目は女性だけれど、中身は男性」とされる「男の娘(こ)」。2000年代後半から登場し、女装界で一大ブームになりました。彼らはどうやって生まれてきたのか、何を求めているのか、本当に今までの女装と違うのか。「男の娘」の専門誌「わぁい!」の土方敏良編集長代理に聞きました。
男装女子・女装男子の記事はこちら
 ――「男の娘」のはじまりは漫画だったと聞きます。
 有名な「ストップ!! ひばりくん!」(1981年連載開始)をはじめ、女の子のような外見の男子を描いた漫画は、以前から少なくありません。でも、キャラクターの1ジャンルとして確立されるまでには至ってきませんでした。
 最初に「男の娘」という言葉が出てきたのは、おそらくネットの掲示板。08年くらいでしょうか。主に18禁のアダルトゲームのキャラクターを指していました。男性の性欲の対象の一つでした。
 ――男装とは逆ですね。男装はむしろ下ネタを嫌うピュアな世界です。
 そうなんですよね。女装って、性欲と切り離せないから「変態」って言われちゃうんです。ただ「男の娘」はその後、性欲目的ではない人たちにも広がっていきました。「わぁい!」は10年の創刊で、当初は30代くらいの読者を想定していました。でも、今の読者層の中心は10代後半から20代前半。「エッチな内容は苦手です」という人も少なくない。驚いたのは、女性読者の存在。男性しか買わないと思っていたら、2~3割が女性でした。
 ――2次元世界の「男の娘」が3次元化した経緯を聞かせてください。
 2次元と3次元は並行していましたね。だいたい2次元ではやるものはコスプレされますから、ゲーム世界の「男の娘」のコスプレをする人たちがいた。同じころ、テレビ番組を中心に女装がブームになって、女装の間口が広がった。そういう動きが重なって、「男の娘」が一部のマニアやオタクの世界から外に広がっていったという印象があります。
 ――「男の娘」を見るのが好きという男子と、なりたいという男子はどっちが多いのでしょうか。
 「わぁい!」の読者でみると、見るのが好きという方が多いです。6対4から7対3くらいかな。
 ――なぜ「男の娘」が魅力的なんでしょう。
 以前の男子は、たとえばあるゲームが好きだとすると、自分が主人公の男性キャラになりきって、相手の女性キャラとの関係を妄想していた。でも、今の男の子は女性キャラ同士が仲良くしているのを見るのが好きと言います。
 女性のみの世界って、彼らにはキレイに見えるんです。例えて言うと、お花畑で遊ぶみたいな。でも、その世界に男である自分が入るとぶち壊してしまう。だから、そこに入るには女装するしかないんです。これはこの2~3年の傾向ですね。女の子の世界に入ったところで、彼らは何をするわけでもない。その世界に浸っているのが好きなんです。
 ――女同士の世界を見たい男子というのは、男性同士の恋愛を描いた「ボーイズラブ(BL)」を女性が読んで楽しむというのに似ていますね。
 ええ。そういう視点は女性向けのBLしかなかったんですが、男性にもそういう視点が入ってきた。オタクの世界も男女の好みが近付きつつあるんです。
 最近のアニメ作品も変わってきました。昔は主人公が男で、モテるとかモテないとかいう話。今は登場するのは女性キャラだけ、というのが増えました。
 ――現実の女性の世界は、全然キレイな関係ではないですが……。
 ええ。若い男子ほど、それは受け入れられない事実ですね。だからあえて見ない。「ないことにする」というか。年を取ると、それはそれ、と切り離して考えられるようになりますが。
 ――とはいえ、女装に対する拒否感が強い人はまだ少なくありません。
 はい。女装には「変態」という言葉が常につきまといます。男がかわいいものを身につけたいと思っても、そういう服がないですからね。女性の服にはいろんな選択肢がありますが、男性は昔から言われるように「カミソリの幅しか選択肢がない」。男服にヒラヒラとかリボンとか、持ち込んではいけないものとされている。でも身につけたい。だったら女服を着るしかないんです。
 ――女装に対しては、女性の方が寛容です。
 女性って幼いときから「かわいいもの」に慣れ親しんでいるでしょう? だから男がかわいいものを身につけたいと言っても「いいんじゃない?」と思いやすい。でも男は「かわいいもの」に免疫がないですから。
 ――「男の娘」がブームになったと言っても、街中を歩く人はまだまだ少なく、家でこっそりという「おうち女装」の方が圧倒的に多いです。
 社会が許してくれませんからね。現在でも、やはり女装は奇異の目で見られます。女装で電車に乗ったとき、周りにどう見られるか。やはりその視線には耐えられないというのが普通の感情かもしれません。
 ――「男の娘」は「見た目は女性だが中身は男性」と言われますが、実際の女装男子たちを見ると、性的指向は様々です。かつてのような同性愛指向を持った人もいます。
 「男の娘」の使われ方が広がってますよね。単に女装をした人を指すこともある。ブームってそういうものです。実際に女装をする人は、旧来の人たちの方が多いんじゃないでしょうか。そしてどうしても3次元のリアルな女装となると性的指向が絡んでくる。だから「男の娘」が好きという男性の中には、「男の娘は2次元でしか認めない」という人もいます。それは現実の女装が性的なものを含んでいて嫌悪感があるんでしょうね。
 逆に女装が好きな人たちが、「変態」と言われないために「男の娘」という言葉を使うこともあります。一方で、性同一性障害の人たちからすると、「男の娘」と言われると傷つくのではないかと思います。
 ――「男の娘」のブームに変化は見られますか。
 当初ほどの勢いはないですが、成熟している感じです。「イロモノ」から、普通に存在するものと扱われるようになった。
 それから、女装の世界のレベルが上がりました。より女性の世界に近づけるように、化粧の仕方とかノウハウが確立されつつある。単なる女装じゃなくて「かわいい」世界を目指すからでしょうね。女性が助言をしたり、一緒に服を買いに行ったりということも多くなり、技術の底上げが進んでいます。
 ――現実世界の「男の娘」ブームによって、漫画などの2次元世界への影響はありましたか。
 漫画のストーリー展開として、当たり前に女装が入るようになりました。昔は女装って登場人物の人生観が変わるくらいの一大事でしたけど、今は「彼女が自分の服を試しに彼氏に着させた」とか、さらっと女装を描いても成立します。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308020436.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308020436

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第7回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月2日(金)
『朝日新聞』朝刊の教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第7回。
今回のキーワードは、見出しになっている「私の中の男のコに会いたい」。
私も21年前、「私の中の『もう一人の(女性としての)私』」という言い方をしていた。
20年以上の時を隔てて、年齢的には44歳もはなれている者同士が同じようなことを言っているということは、こうしたある種の二重人格的なイメージが、異性装をする人にとって、普遍性がある感覚だということ。
しかし、そうした二重性別的な感覚は、1998~2008年の異性装者にとっての「失われた10年」=性同一性障害概念の大流行期には表明しにくかった。
性同一性障害の場合、MtF(Male to Female)なら自分が女性であること、FtM(Female to Male)なら男性であることを確信していなければならない。
実際には、MtFでも男3:女7とか、FtMで女2:男8とかいう感じの人はいたと思う。
でも、それを正直に言えない。
言えば性同一性障害者としては「失格」で、「変態」あつかいされる息苦しさがあった。
今、ようやくそうした呪縛が解けてきたのだと思うと、感慨深い。
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(いま子どもたちは)男装/女装:7 
私の中の男のコに会いたい

「男の子ファッション」の分野で10代女子に人気の女性モデルAKIRAさん=東京都渋谷区    
 No.565
 「私の中の男のコに会いたいッ!」。10代向けファッション誌「KERA」の2011年6月号に、そんな巻頭特集が載った。
 記事は、以前掲載した男装特集が大好評だったと紹介し、こう続く。「男のコになりたい女のコが増えたわけではないのかもしれません。そんな女のコはきっとずっと前から、静かに確実に存在していたのかも」。そして「あなたの中の男のコ」に出会おうと、呼びかける。
 茨城県日立市在住の中学3年生で、時々男装をしている瀬谷優莉香(ゆりか)さん(14)は、気がつくと自分のことを「俺」と言っている日があるという。「俺」が多いときは大抵、男装する。男装した「俺」には、「有圭(ゆうか)」という別の名前をつけている。
 20世紀の心理学者ユングは、男の心には女性性が、女の心には男性性が潜むという「心理的両性具有」を唱えた。男装や女装は、その表現なのかもしれない。
 韓国男性アイドルをまねて男装する横浜市のマエダさん(18)は「女のときは性格が悪かったのに、男装のときはいいんですよ」と話す。女の服装だと、「イライラして、人の話を聞かない」。でも、男装すると、相手が待ち合わせに遅れても許せるし、人の話も聞く。男性の気分なので、女性にやさしくしようと思えるのだという。「こんな自分が発見できて、楽しい」とマエダさん。
 「でも、男になりたいわけじゃないんです」。見た目が男性のような「男の子ファッション」の世界で、10代に絶大な人気を誇る女性モデルAKIRAさんは、首をかしげる。
 「カッコいい」という世界を目指しているだけ。そのために着る服が男服だろうと、女服だろうと、あまり関係はない。
 「生まれ変わっても、絶対女がいい! だって女子同士でつるむことも、男子の中に入って遊ぶことも、両方できるじゃん。男じゃできないよね?」
 女は、女服と男服を楽しげに着替える。では、男はどうなのだろうか――。(原田朱美)
〈+d〉デジタル版に雑誌「KERA」編集長インタビュー
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201308010485.html
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(以下、デジタル版のみの掲載)
男装女子は何を目指す? 雑誌「KERA」編集長に聞く

 雑誌「KERA」編集部が出した男装女子向けの別冊「KERABOKU」の第3号
 男装女子向けのハウツー本を出したり、誌面で男装特集をしたりしてきた10代向けファッション誌「KERA」(ジャック・メディア)。田島裕介編集長に、男装の流行について聞いた。
男装女子・女装男子の記事はこちら
 ――男装女子向けの別冊「KERABOKU」を出した経緯を聞かせてください。
 2010年8月号で「男の子になりたい症候群」という4ページの特集をしたら、目立たない記事だったのに、読者アンケートで1位になったんです。で、何かあるのかもと思い、11年6月号で巻頭特集「私の中の男のコに会いたいッ!」を載せたら、過去最高の部数を記録しました。それで男装女子向けの別冊を出そうということになったんです。
 一般に、発行部数の6割が売れればいい方なんですが、「KERABOKU」の第1号は8万部を刷ったうち9割が売れました。きゃりーぱみゅぱみゅさんは「KERA」出身で、彼女のブームについて取材を受ける機会は多いですが、「KERABOKU」についての取材はさらに多いです。
 ――男装女子が顕在化したのはいつごろでしょうか。
 「KERA」では、街で見かけた素人さんのスナップ写真を載せていますが、3~4年前から、男の子のファッションをしている子が目につくようになりました。
 そのころ、男装をテーマにしたTVドラマがはやっていました。あと、アニメの「テニスの王子様」など、コスプレで男装する人がたくさんいたことや、カッコいい女性が主人公の漫画「NANA」とかも影響していると思います。2次元の「美しいもの」を自分が着る服でも表現したいんだと思います。
 ――男装女子は、一体何を目指しているのでしょうか。
 「きれいなもの」でしょう。男でも女でも、どっちでもいいんです。眺めていたくなるような、きれいなもの。KERAの読者は17~18歳の女の子がメーン。少数派ではありますが、耽美(たんび)主義というか、美しいものが好きな人たちです。
 でも、彼女たちはいつも男でいたいわけじゃない。女の日もあるし、男物のアイテムを採り入れただけのスタイルもある。ファッションが多様化した中に、男の子スタイルがある。どこからが男装なのかっていうのがはっきり言えなくなってきていると思います。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308010251.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308010251

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第6回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月1日(木)
『朝日新聞』朝刊の教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第6回。
今日のポイントは、赤園クンが言っている「もしかしたら『赤園虎次郎』が理想なのかも。自分の中で『こういう男性がいい』っていうのがあるから、できるのかもしれない」ということ。
多くの女装者にとって「自分好みの女性」が「自分がなりたい女性」である。
そういう意味では、女装という行為はナルシシズムに裏打ちされている。
男装でも、それと同じ構図があることが、赤園クンの語りからうかがえる。
男装者にとっても「自分好みの男性」が「なりたい男性」のようだ。
ただ、女装者と男装者で異なるのは、「自分好み」に「なる」技術的な困難度だ。
女装者の場合、「自分好みの女性」になるのはかなり難しい。
たいていは幻滅・挫折する。
「自分好みの女性」になれた(近づけた)女装者は幸せ者だ。
それ比べれば、男装者は「自分好みの男性」に近づくのは技術的なかなり壁が低いように思のだが・・・。

それにしても、なかなか「女装男子」の話に移行しないなぁ。
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(いま子どもたちは)男装/女装:6 
かわいい弟キャラ、究めます

「風男塾」メンバーの(左から)雪村涼真さん、赤園虎次郎さん、緑川狂平さん=東京都渋谷区

No.564
10代女子を中心に人気を集める男装アイドルユニット「風男塾(ふだんじゅく)」。メンバーたちはファンの視線をどう受け止めているのか。3人に話を聞いた。

赤園虎次郎さん(24)は、2008年のデビュー時からのメンバーの一人。「最近、『男装した女性』というより、男の子として見てくれるファンが増えましたね。『彼氏になってください』とか『結婚してください』って、めっちゃ言われるんですよ」と話す。

そう言われたとき、「『いいよ!』って答えます」と赤園さんは笑う。「男装のこのキャラって、現実にいるんだけど、いない。架空だからこそ、大胆に言えるのかもしれない。ファンも俺も」

唯一の10代メンバー、雪村涼真さん(19)は大阪府出身。11年12月に加入した。「入る前から風男塾が好きだったんですよ。ホンマに男性アイドルとしてカッコいいって思てました」。地元の元同級生も、よくライブに来てくれるという。

緑川狂平さん(27)は「『風男塾に入りたい』と言ってくれるファンが増えた。男装が自然な存在になったんだなと感じます」と言う。

メンバーはそれぞれのキャラに沿った「男らしさ」を目指している。「ドSキャラ」の赤園さんは「女子をキャーと言わせる」のが快感だという。虎南(こなん)有香という名で女性芸能人としても活動しているが、「『キャー』の色って、自分が男の時と女の時で全然違う」。

物静かな緑川さんは「自分に求められているのは、癒やしとか優しい言葉だと思う」と分析する。「大丈夫だよ」と、ファンに声をかけることが多い。

「かわいい弟キャラ」の雪村さんは、ファンとの写真撮影会で「私のひざに乗って」「体を持ち上げたい」とお願いされるという。赤園さんと緑川さんは「それ、すごいね!」と爆笑。雪村さんは「女子を守ってあげるキャラを目指してたけど、どう頑張っても弟に見られる。もう弟を究めます」と苦笑した。(原田朱美)

〈+d〉デジタル版にインタビュー詳細
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307310643.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201307310643
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(以下、デジタル版のみの掲載)
「妄想の王子様、自分たちに近い」 風男塾インタビュー

男装アイドルユニット「風男塾」メンバーの(左から)雪村涼真さん、赤園虎次郎さん、緑川狂平さん

雪村涼真さん

緑川狂平さん

赤園虎次郎さん

男装アイドルユニット「風男塾」メンバーの赤園虎次郎さん、緑川狂平さん、雪村涼真さんの3人に、男装に対する考えや、ファンへの思いを聞いた。

 ――元々は女性アイドルグループ「中野風女シスターズ」で活動していて、2008年に「風男塾」としてもデビューしました。コントではなく、本気で男装するとなったとき、戸惑いはありませんでしたか。

赤園 ありましたね。そもそも「できるの?」っていうのと、「受け入れてもらえるの?」っていうのが心配でした。

緑川 当初は、今よりもかなり詳細にガチガチにキャラ設定をして、その通りに演じるという感じでした。でもボロが出てもよくないから、今は自然な感じになっています。

 ――男装について、周囲はどんな反応をしましたか。

赤園 すごいこと始めたねって驚かれました。ただ家族は「頑張ってるね」くらいであまり気にしていません。たまに実家に帰ったとき、父が男装の衣装を不思議そうに眺めてますけど(笑い)。

緑川 うちの母は「息子ができるのね~。うれしい~」って喜びましたよ。勝手に俺の衣装を着て、ドヤ顔で「どう?」とか言ってくる。「いやいや、返して」って(笑い)。

雪村 俺の母もそうで、最近は「男の方がええわ。息子がほしかったから、そのままでおって」って。

 ――当初、参考にした男装はありましたか。

赤園 ないですね。デビューしたときは、男装コスプレの人たちはいましたが、それで芸能活動をしている人はいなくて。自分たちでつくってきたという自負はあります。

 ――女性芸能人としてグラビアアイドルをしているメンバーもいますが、男らしさを目指す男装とは対極の、女らしさを強調した仕事に見えます。両者の違いは?

緑川 グラビアで撮られるときは、カメラの向こうにパートナーの男性がいると思っています。だから写真になったときは、男の人から見たように写ると思う。男装のときは逆で、向こうに女性がいると思ってます。

赤園 女性として雑誌やブログに写真を出すときは、写りを結構気にします。「この表情違うな」とか。でも、男装のときは細かいことを気にしません。変な顔をしてても目をつぶってても、「載せていいですよ」って言う。ある意味、男らしくなってるというか。

雪村 確かに。グラビアで水着を着るときは全然気持ちが違います。スタイルをよく見せようと頑張るけど、風男塾のときはアホなことばっかりしてて、気にしない。

 ――本物の男性と男装の美少年で「カッコよさ」は違うのでしょうか。

赤園 ファンによく「好きだよ」とか言うんですけど、リアルな男性じゃ言えないですよね。歌詞でもかなり甘いセリフがありますが、本当の男性が歌ったらナルシストに聞こえたり、引かれちゃったりすると思う。でも風男塾が言うと、するっと通る。

緑川 女の子が頭の中で妄想する王子様とか憧れの人って、本当の男性より自分たちに近いと思う。

 ――それぞれ、女性としてはどんな男性が好きなタイプですか。

赤園 もしかしたら「赤園虎次郎」が理想なのかも。自分の中で「こういう男性がいい」っていうのがあるから、できるのかもしれない。

緑川 口数が多い人は苦手。ちゃんと見ててくれる人がいいです。緑川狂平のキャラと少しかぶりますね。

雪村 なんでも許してくれる、包容力がある人がいいです。雪村涼真のキャラと違いますね(笑い)。

 ――男装女子が増えているようですが、男装について助言はありますか。

緑川 今の女の子の言葉遣いって、男の子とそんなに違わないから、そう難しくないと思う。女の子だからって「~わよ」とは言わないし。

赤園 あまりガチガチに作り込まなくてもいいと思う。自然な感じでいいんじゃないかな。

緑川 周りで男装がはやってて、こないだモデルの友だちとショートのヅラ(かつら)をかぶって男装して遊びに行きました。プライベートでやるのはちょっと恥ずかしかったけど。

 ――10代女子にとって、どんな存在を目指していますか。

赤園 みんなで「ミッキーになろう」って言っています。自分たちは「目の前にいるんだけど、いないと言われればいない」という存在。ディズニーランドで会うミッキーと同じ。

雪村 だから、夢を見させてあげようって言ってます。

赤園 ファンの女の子たちって、学校とかいろいろ大変だと思う。風男塾を見て楽しんでくれたらいいな。彼氏にふられても「風男塾を見てドキドキした」って言ってくれたら。女の子には、いつも恋してる人でいてほしいです。それが女の子らしさだと思うし、女の子らしさを忘れてほしくない。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307310319.html

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第5回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

7月31日(水)
『朝日新聞』朝刊の教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第5回。
今回のテーマは、「男装女子」に対する親の理解。
無理解な親もいれば、違和感のない親もいる。
では、女装に対する理解は?
デジタル版の私の解説につながります。
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(いま子どもたちは)男装/女装:5 
お母さん、ほんと、ひどい

風男塾のライブで握手会に参加した山元果夏さん(右)=13日、福岡市
No.563

「うちのお母さん、ひどいんです」
埼玉県の高校1年の渡(わたり)亜弥美さん(15)は、そう言って嘆く。男装アイドルユニット「風男塾(ふだんじゅく)」の熱狂的なファンだが、母には男装が奇異に見えるらしく、ちっとも理解されない。
「『は? 女でしょ? どこがカッコいいの?』なんて言うんですよ。ほんと、ひどい」
風男塾の公演チケットを買うにも母の許可が必要で、「ねー、いいでしょー?」とすがっても、いつも母は冷淡だ。
攻め方を考えた。母は若いころから「甲斐バンド」の大ファン。「ママが10代のとき、甲斐バンドのライブはダメって言われたら泣いたでしょ? それと同じだよ!」と詰め寄ってみた。すると母は「たしかに」とつぶやき、許可してくれた。
10代女子の間で、風男塾をはじめ「男装の美少年」のファンは増えている。でも、好意的ではない人だっている。親に限らず、同級生から「女なのになんで女が好きなの?」と笑われた経験のある子もいる。

13日、福岡市。風男塾のライブ会場には、親子連れもいた。
鹿児島県志布志市の山元弓枝さん(39)は、中学2年の長女果夏(かなつ)さん(14)と一緒だった。果夏さんが風男塾の歌を毎日歌うので、「家族みんなが覚えつつあります」と笑う。
男装については全く気にならないという。「いろんなアイドルがいるから、演出の一つかな、と」。果夏さんがここまで有名人に憧れ、はまったのは初めて。「少し成長したということなのかなと思っています」
会場の近くに住むタミコさん(49)は、娘3人と来ていた。
「男装が気持ち悪いとか、考えたこともなかった!」
最初に風男塾を見たときは、男の子だと思ったという。「うまく胸を隠してるなあとか、むしろ感心してしまった」
女装ならどうなのか――。タミコさんは「きれいな人ならいいけど、男の部分が残ってたら引くかも……」と、言葉を濁した。男装と女装は、別物らしい。
 (原田朱美)
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201307300509.html
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(以下、デジタル版のみの掲載)
「華やか」男装、「日陰者」の女装 寛容度に差、なぜ
教育面の定番連載「いま子どもたちは」の今シリーズは「男装/女装」。男装する女子、女装する男子の様子を紹介しています。

男装は、古くは「男装の麗人」から、現代の男装アイドルの登場や男装女子の増加まで、比較的前向きに受け止められる率が高いようです。これに対し、女装は、なかなか社会で受け入れられず、いまだに「日陰者」の暗さがつきまとってしまいます。その源流を明治大学非常勤講師で性社会史が専門の三橋順子さんに聞いてみました――。

明治時代まで、庶民は、男装にも女装にも比較的寛容だった。差別はあったかもしれないが、現代のように極端に排除することはなかったと推測される。
江戸時代までは、武家は男女をきっぱりわけていたが、庶民は違った。明治になって「男は男らしく、女は女らしく」という武家の規範が庶民にまで広がった。さらに男装と女装の間で評価に極端な差がついたのは、昭和以降ではないか。
1930年代、欧米で男装ブームが起きた。女性がパンツルックをした程度だが、当時は映画の人気でブームが広がり、日本もその影響を受けた。日本で「男装の麗人」という言葉が出てきたのは、このころだ。
戦前の日本で「男装の麗人」の2大スターは、松竹少女歌劇団の水の江滝子と、「東洋のマタハリ」と言われた川島芳子。この2人の人気で男装のイメージが上がった。
特に川島が典型だが、女性より男性の方が社会的に地位が高い当時にあって、女が「男勝り」の働きをし、しかも国の役に立つということで「男装は役に立つ」と思われた。
もちろん川島を嫌う人々もいたが、男性にとっては「(本来は役に立たない)女なのにそこまでして国の役に立とうとする」と好印象をもたれ、女性からは「男社会の中で活躍をするという、自分たちが果たせないことを実現している」と期待された。
一方で、女装する男性については、役にたたないどころか、女性よりも価値がある男性として生まれながら、男性の役割を放棄する存在と、おとしめられた。
第2次世界大戦後、男性に対する「男らしくあれ」という締め付けはいったんゆるんだが、まだ男装と同じ程度に価値が上がるところまではいっていないのが現状だ(談)。
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307300194.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201307300194

『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第4回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

7月27日(土)
『朝日新聞』朝刊の教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第4回。
この記事のポイントは「私もああなりたい!」。
男装・女装という行為の基本には、「私もああいう人になりたい」という自己実現・自己表現の願望がある。
言い方を換えれば、「なりたい私」「ありたい自分」のための方法が男装・女装だということ。

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(いま子どもたちは)男装/女装:4 
手本は韓流アイドル、日々研究

「ナムジャ・オルチャン」を目指す男装女子のマエダさん=東京都渋谷区

No.562

「ナムジャ・オルチャン」。韓国語で「美男子」という意味だ。韓国では、芸能人から街中の男の子まで幅広くほめ言葉として使われる。その隣国の美男子に憧れ、「私もナムジャ・オルチャンになりたい」と、男装してしまう日本人女子もいる。

横浜市在住のマエダさん(18)は1年ほど前、韓国人男性アイドルの日本公演を見た際、そのアイドルそっくりのコスプレ集団が客席にいるのを見つけた。服や髪をまね、男装した女子たちだ。公演の合間には、他の女性客の人だかりができ、有名人のような人気ぶり。

「私もああなりたい!」。マエダさんは腰まであった髪を、ばっさり切り、男装を始めた。

今の髪形や服装は、彼女が好きな韓国の男性グループ「JYJ」のジェジュンにそっくり。ふだんはこの男装スタイルで生活している。女の子っぽい格好をしたいときだけ、長髪のウィッグをかぶるという。

男装した自分の写真を撮っては、ツイッターに投稿している。ネット上では、本名でなく、自分で考えた名前「イ・ヘンミ」を名乗る。

「ヘンミの写真、本当に神秘的で好きだよ」「惚(ほ)れたぜ」。ファンになった女性から次々にコメントが届く。すでにフォロワーは約3千人。実際にファンに会うと、紙袋いっぱいのプレゼントをもらうことも。まさに1年前に憧れた立場になった。

フォロワーには、韓国人の女性もいる。日本の、しかも男装の「ナムジャ・オルチャン」を韓国の女性が支持するという不思議な構図だ。

ヘアメークの勉強のために通うバンタンデザイン研究所(東京都渋谷区)では、「かわいい女になる化粧」を習っている。

マエダさんは「その逆をやれば、男に見えるんだな」と、日々研究を怠らない。自分をパッと見た人が、男と間違ってしまうくらい「男装を究める」のが目標という。

「男装はやめられないですね。女の子にチヤホヤされるのは楽しいです」

(原田朱美)
http://digital.asahi.com/articles/TKY201307260527.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201307260527
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