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戦後世界最初の性別移行手術は日本の可能性大 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

1月14日(土)

男性から女性への性別移行手術は、1930~31年にデンマーク人画家Einar Mogens Wegener(女性名:Lili Elbe)に対して、ドイツで行われた手術(手術後ほどなく死亡し、実質的には失敗)を除けば、最初の事例は、1950~51年にイギリス空軍中尉Robert Marshall Cowell(女性名:Roberta Elizabeth Marshall Cowell)と考えられていた。

(参照)三橋順子「性転換の社会史(1) -日本における「性転換」概念の形成とその実態、1950~60年代を中心に-」
(矢島正見編『戦後日本女装・同性愛研究』 中央大学出版部 2006年)

今回、改めて調べ直したところ、Cowellの造膣手術が1951年5月15日であることが判明した。

これに対し、日本初の事例である永井明(女性名:永井明子)は、日本医科大学病院で1951年4月頃に造膣手術を完了している(執刀:石川正臣日本医科大学教授)。

残念ながら永井の手術の正確な日付はわからないが、「4月」以降で「春」である。

これによって、永井の造膣手術はCowelの手術よりやや早いか、ほぼ同時で、戦後世界初(成功したものとしては世界初)であった可能性が強くなった。
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(0)Einar Mogens Wegener(女性名:Lili Elbe)
デンマーク人、画家、1882~1931年
Lili Elbe2.jpg
1930年、ベルリンで睾丸摘出手術、次いでドレスデン市立産婦人科診療所でクルト・ヴァルネクロス医師の執刀で陰茎の除去と卵巣の移植手術を受ける。その際に未発達な卵巣様のものが検出されているので、インターセックス体質だった可能性がある。
(移植卵巣は拒絶反応のため手術で摘出)
1931年、子宮移植手術。
手術から程なく死亡(48歳)。
性転換手術としては失敗だった。

(1)永井明(女性名:永井明子)
日本人、病院雑役夫、1924年~?
永井明子(『日本週報』1954年11月5日号).jpg
↑ 永井明子(『日本週報』1954年11月5日号)

T大病院(東京大学病院?)の精神科を訪れて「精神病者」という診断書(精神科では治療不能という証明か?)を取得。
1950年8月、上野の竹内外科病院(竹内篁一郎院長)で精巣と陰茎の除去手術を受ける。
女性ホルモンを投与しながら、髪形や服装を女性に改め、進駐軍関係者のハウスメイド(家政婦)に転じる。
1951年春(4月以降)、日本医科大学付属病院で造膣手術を受ける(執刀は、石川正臣教授)。
その後、戸籍の名前を明から明子へ、続柄を三男から次女に変更。
永井明子2.jpg
↑ 変更された戸籍

(2)Robert Marshall Cowell(女性名:Roberta Elizabeth Marshall Cowell)
イギリス人、イギリス空軍中尉(戦闘機パイロット)、1918~2011年
Roberta Cowell2.jpg
1949年、マイケル・ディロン医師のもとで性転換治療を開始。
女性ホルモンの大量投与を受ける。
1950年、睾丸摘出手術。
1951年5月15日、サー・ハロルド・ギリーズ医師と米国外科医のラルフ・ミラード医師(アメリカの外科医)の執刀で造膣手術。
2011年、死去(93歳)

(3)George William Jorgensen, Jr.(女性名:Christine Jorgensen)
アメリカ人、アメリカ陸軍兵士、1926~1989年
Christine Jorgensen1-3.jpg
1950年8月、デンマーク(コペンハーゲン)のスタテンス分泌液研究所のホルモン部長クリスチャン・ハンブルガー博士の診断を受けて性別移行のための治療プログラムを開始。
10カ月間の女性ホルモン投与を受ける。
1952年2月に形成外科医ダール・イヴェルゼン教授の執刀で性器の女性化手術。
1989年、肺癌で死去(62歳)

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