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梅毒感染、42年ぶり4千人超 [現代の性(HIV・性病)]

1月13日(金)

この『朝日新聞』の記事の見出し、ちょっとミスリード。
20代女性の梅毒感染が急増しているのは確かだけど、実際に感染者数を押し上げているのは、30~40代の男性。
そもそも、20代の女性が勝手に梅毒に感染するはずはなく、20代の女性にうつしている男性がいるはず。

それはともかく、梅毒の感染爆発の傾向が出てきているのは間違いなく、「なんで今頃?」とか言ってられない状況。

この記事、例によって人数を並べるだけ。
これでは、人口が多い大都市部が多くなるのは当たり前。
「割り算」をして、人口当たりの感染率で比べないと意味がない。
で、例によって電卓をたたいて、人口1万人あたりの感染数を算出。

東京都  1661人 1364万人  1.22人(1)
大阪府   583人  884万人  0.66人(2)
神奈川県  284人  914万人  0.31人(5)
愛知県   255人  754万人  0.34人(3)
埼玉県   190人  729万人  0.26人(7)
兵庫県   181人  552万人  0.33人(4)
千葉県   139人  624万人  0.22人(9)
北海道   117人  535万人  0.29人(6)
福岡県   107人  511万人  0.24人(8)

東京都と大阪府が他の大都市圏を含む道県より感染率が格段に高いことがわかる。
大阪府は他の道県の約2倍で、さらに東京都は大阪府の倍で、かなりショッキングな数値。

原因はなんなのだろう?
ヘテロセクシュアルの男女の感染率がそんなに違うだろうか?
近年の梅毒感染の経路として男性の同性間接触の比率がかなり大きくなっていることを考えると、東京都と大阪府の感染率の高さは、男性同性愛者の人口比が高いことが作用しているのではないだろうか?
ちゃんと計算した上ではなく、推測だが・・・。

【追記(14日)】専門の先生にご教示をいただいた(感謝)。
・ 2016年の報告数は4077例で、男性2848、女性1229人(国立感染症研究所の発表、2016年11月27日までの暫定値)。
・ 感染経路判明している男性2198例中、異性間接触1480例(67%)、同性間接触718例(33%)。
2013年までは同性間が多かったが、その後、逆転し現在では異性間が同性間を上回っている。
・ 都道府県別で、前年の報告数との比較では、東京1.6倍、大阪2.0倍、神奈川1.9倍、愛知2.3倍、埼玉1.8倍、千葉1.8倍、 北海道2.0倍の増加。

異性間の感染が増えているのは間違いないが、同性間の感染も相変わらず多いのも確か。
感染経路が異性間67%:同性間33%ということで、異性愛者と同性愛者の比率を97:3くらいに見積もれば、同性愛者の感染率は約10倍高いことになる。
そこらへんの認識、ゲイ男性にどれだけあるのか?ちょっと不安になる。

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梅毒感染、42年ぶり4千人超 20代女性で急増

梅毒の感染者の推移.jpg
梅毒の感染者の推移

国立感染症研究所は13日、昨年1年間の国内の梅毒感染者数が4518人(速報値)に上ったと発表した。4千人を超えたのは1974年以来、42年ぶり。大西真・細菌第一部長は「不特定多数との性行為などリスクの高い行動を取った人は、検査を受けてほしい」と呼びかけている。

梅毒は主に性行為で広がる細菌性の感染症で、性器や唇にしこり、ただれが起き、進行すると全身に赤い発疹ができる。感染者は戦後まもない時期は年10万人を超えていたが、治療薬の普及などで減少。2012年までの20年間は1千人未満と落ち着いていたが、13年以降、急増している。

昨年の患者を都道府県別でみると、東京1661人、大阪583人、神奈川284人、愛知255人、埼玉190人、兵庫181人、千葉139人、北海道117人、福岡107人などと都市部で多い。

全体の約7割を占める男性は各年齢層から偏り少なく報告されているが、女性は20代が女性全体の5割超を占め、感染増加が目立つ。男性の同性間の性的接触による感染だけでなく、近年は異性間での感染も広がり、患者増加に拍車がかかっているとみられるが、原因ははっきりしない。妊婦が感染していると死産・流産のほか、胎盤を通して赤ちゃんが感染し障害や病気を持つ危険がある。(川村剛志)

『朝日新聞』2017年1月13日11時39分
http://www.asahi.com/articles/ASK1D42WBK1DULBJ004.html

HIV感染者・発症者の「高止まり」 [現代の性(HIV・性病)]

12月5日(月)
HIV感染者・AIDS発症者(2015).jpg
確かに2015年は、新規の感染者も発症者も少し減っている。
でも、2007年以来。毎年14000~16000人もの人が感染し、400人以上の患者が出ている状況に変化はない。

憂慮すべき状態が一向に改善されずに「高止まり」していると見るべきだ。

前から言っていることだが、従来の予防啓発運動の手法の限界が現れていると思う。
もっと性行動の現場から変えていかないと、「高止まり」状態から脱出するのは難しいだろう。

梅毒の復活 [現代の性(HIV・性病)]

10月4日(火)

一時は過去の病になりかかった梅毒が復活して再流行というのは、データ的に確かなようだ。
梅毒年別患者報告数の推移(国立感染症研究所).jpg
↑ 梅毒年別患者報告数の推移(国立感染症研究所)

メディアでは、とりわけ「若い女性に激増中」と報じられている。

しかし、梅毒は性病であり、対人接触感染が主な感染ルートなので、うつされた人がいるのなら、必ずうつした人がいる。
世の中の95%くらいは異性愛なので、梅毒を若い女性にうつした男性がいるはず。

男女・年齢別の梅毒感染者(今村顕史医師作成).jpg
↑ 男女・年齢別の梅毒感染者(今村顕史医師作成)

このグラフを見ると30~40代の男性が20代の女性とセックスして梅毒をうつしているように見える。
おそらく、40代以下の男性は、梅毒・淋病など古典的(とされる)性病について、知識・認識が希薄なのだと思う。

二世代上の私たちの年代(60代以上)だと、梅毒=「怖い性病」という認識はそれなりに残っていると思うが・・・。

そうした性病への認識のギャップは、セクシュアル・マイノリティでも同様で、とくに性交渉が活発な若いゲイの人たちの間での梅毒の流行が危ぶまれる。


全国、そして旭川市で梅毒感染が急増中 [現代の性(HIV・性病)]

4月15日(金)

梅毒の感染が、全国的に増加中というニュースは少し前にあった。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030200012/041400007/
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(以下、要約)
国立感染症研究所のまとめによると、感染症法で5類(全数報告)に指定されている梅毒は、2011年以降、患者の増加が続き。15年は2698人となり、この10年間で最多となった。

16年に入っても流行の勢いは衰えず、1月に288人、2月に254人、3月(~4月3日)は341人と月単位ではこの10年で最多を記録。
1~3月期では883人と昨年同期の440人から倍増していて、流行拡大が加速している。
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これ自体、かなり憂慮すべき事態だが、北海道の旭川市(人口34.5万人)で急増中とは、かなり意外。
いったい何が起こっているのだろう?

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旭川市で梅毒感染急増、今年既に6件 保健所「病院受診か相談を」

旭川市内で性感染症の一つである梅毒の感染者が急増している。年間確認件数は例年0~1件程度にすぎなかったものの、2015年に6件に急増。今年は13日現在で既に昨年と同数に達している。今後さらに増える可能性もあり、市保健所は「異常な増え方だ。今後の状況を注視したい」(健康推進課)と警戒している。

市内の医療機関での感染確認は、近年では比較的多かった12年でも3件で、13、14年は1件。11年以前はおおむね0~1件で推移していたのが実態だった。

だが、昨年から状況が一転。今年は早くも1~3月に5件、今月5日にも1件が確認された。内訳は男性5人、女性1人で年齢層は20代から50代までと幅広い。

市保健所によると、梅毒は基本的に性交渉で感染し、発疹や発熱、性器にしこりができるなどの症状が特徴。ただ、症状が現れずに放置されるケースも多い。症状の有無にかかわらず、長期間の放置により心臓などに菌が回って重篤化すれば、死亡に至る場合もあるという。抗菌薬で完治するため、早期の治療が重要とされる。

梅毒感染者は全国的にも増加傾向で、要因について同保健所は「増加する海外からの旅行者が持ち込んでいることも理由の一つだろう。性産業の多様化も影響しているのでは」と指摘する。その上で避妊具の正しい使用による予防のほか、「気になることがあればすぐに病院を受診するか、保健所に相談を」と呼びかけている。相談は市保健所の「エイズ専用相談電話」(電)0166・26・8120で受け付けている。(松井伊勢生)

『北海道新聞』2016年04月14日 16:56、04/14 16:58 更新
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/area/dohoku/1-0259296.html

HIV感染、2003~06年の大阪で何が起こった? [現代の性(HIV・性病)]

12月2日(水)

11月30日の「日本エイズ学会」での報告報告を紹介した記事。
この記事にある「03~06年、大阪府での大規模な(HIV)感染拡大」という話、うかつにも私は知らなかった。
(まだ自分のことに精一杯で、余裕がなかった頃)
いったい何があったのだろう?
df41511.jpg
大阪におけるHIV感染者、AIDS発病者のグラフを見ても、2003年あたりから増加傾向が強まるが、それは06年以降も同じで、03~06年だけに特異な状況は見られない。

Facebookの方で「詳しい方、ご教示いただけたら幸いです」とお願いしたら、この報告があったセッションに参加していた、某先生が解説してくださった。

① HIVに感染してから、時間が経つほど、感染が判明する可能性が増える(最終的にはエイズ発症し病院で判明)。
② 何年経つとどのくらいの人たちの感染が判明するか、という数式モデルがあり、その傾向が毎年変わらないという前提で、日本の発生動向に当てはめると、毎年どのくらいの人たちがHIVに感染したか、という推測が可能になる
③ そのモデルによって、毎年の推定感染数をグラフにすると、大阪の場合、2003~06年に急激な感染数の上昇がみられた。
④ 裏付けとして、大阪では2003~06年に、献血でHIVが判明した人たちの割合がピークを示していて、大阪人口全体として感染が増えたことと一致する。

なるほど、そうした数式モデル(推論)があったのか。
だから、表面的なグラフだけ見ててもわからなかったか。
納得、記事に載っていたグラフの意味が理解できた(ご教示、感謝)。

その推論が正しいとして、いったいその期間の大阪で何が起こったのか、ますます興味をひかれる。
相手を感染させる力が強いキャリアの人(スーパースプレッダー)が「ハッテン場」でやりまくっていたとか・・・。
でも、HIVの場合、そういうことがあのかな? スーパースプレッダーは、HIV領域でも存在します。

【追記(3日21時)】
上に記した疑問について、某先生が教えてくださった(感謝)。
⑤ HIVの初期感染状態(HIVに感染して数週以内)は、ウィルス量が極めて多く感染力も強いことが知られている。
⑥ 今回のエイズ学会(11/30)でも、国立感染症研究所の研究発表で、2002-2012年の調査でMSM(男性間で性行為をする人)集団の感染の30%近くは、初期感染状態の相手から感染したとのこと。
⑦ 以下は推測だが、2003~06年の大阪で、初期感染の状態で極めて感染力の強いごく少数のゲイが、感染ネットワークのトリガーになった可能性は十分あり得る。

なるほど・・・、私がイメージしたこと、必ずしも外れていなかった。
ごく少数の感染力の強いゲイが起点になって、乱交的な性行動を通じて、一気に感染が広まる可能性があるわけだ。

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HIV国内感染者約2万8千人 うち3割が未診断 大阪の大規模感染はピーク超える 日本エイズ学会

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年間の日本人HIV感染者数

国内でこれまでにエイズウイルス(HIV)に感染した日本人は約2万8千人で、そのうち3割の約8千人が自分の感染を知らないとする推定を、慶応大の加藤真吾専任講師(微生物学)が30日、東京都内で開かれている日本エイズ学会で発表した。

早期発見と治療につなげるため、検査の推進があらためて求められる。

加藤講師は今回、HIVの潜伏期間を示す欧州のデータと、日本のエイズ動向委員会が「患者」として公表する、発症によって感染が分かった人の数を使い、年に新規の感染者がどれくらい出ていたかを推定した。

その結果、実際に判明した感染者や患者は2014(平成26)年までの累計で2万490人だが、このほかに8120人の未診断の感染者が出ていた可能性があると分かった。

年次推移を見ると、新規感染者は03~06年、大阪府での大規模な感染拡大の影響で約1600人とピークを迎え、その後は1300人前後で横ばいが続いているとみられるという。

加藤講師は「休日や夜間に検査が受けられる体制を整えたり、郵送検査を活用したりするなど、検査が受けやすい環境をさらにつくっていくべきだ」と話している。

国連合同エイズ計画(UNAIDS)は昨年、流行収束に向け、20年までに「感染者の90%が自分の感染を知り、その90%が治療を受け、さらにその90%が適切な治療でウイルスを抑える」との目標を掲げた。

『産経WEST』2015.11.30 17:01
http://www.sankei.com/west/news/151130/wst1511300057-n1.html

同性間HIV感染、1万人超=84年以降累計で [現代の性(HIV・性病)]

11月24日(火)

男性間の性的接触が1万145人で、全体の57.7%を占めている。
しかも、一向に減少する傾向が見られない。

こう指摘すると「ゲイは検査率が高いから比率が高くなる」という反論が必ず帰ってくる。

たしかに比率ではそういうこともあるだろう。
しかし、1万145人の感染者がいるのは紛れもない実数だ。

やはり、ゲイの人たちの性行動のスタイルと意識に問題があるのではないか。
長年にわたって指摘されていることなのに、なぜ、改善が見られないのだろうか?
もっと個々の人が真剣に考えるべき問題だと思う。

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同性間HIV感染、1万人超=84年以降累計で-厚労省

厚生労働省は24日、同性間の性的接触によるエイズウイルス(HIV)感染者が、統計を取り始めた1984年以降、累計で1万人を超えたと発表した。

厚労省によると、今年9月27日時点の累計感染者数は1万7582人。感染経路別では、同性間の性的接触が1万150人、異性間は4744人だった。同性間のうち女性は5人で、ほとんどを男性が占めている。このほか注射器による薬物乱用が71人、母子感染が40人だった。

7~9月に各地の保健所が行ったHIV検査の件数は2万2043件だった。前年同時期と比べて4232件の減少で、同省エイズ動向委員会の岩本愛吉委員長は「検査や相談を積極的に受けてほしい」と呼び掛けている。 

「時事通信」2015/11/24-20:04
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201511/2015112400832

増加傾向の梅毒、感染経路の50%は男性同性間接触 [現代の性(HIV・性病)]

6月6日(金)
梅毒がまた勢いを取り戻し、若年層の男性に感染が広がってきていること、そして患者の多くは男性同性間接触が経路になっているについては、2か月前にもこのブログで取り上げた。
(参照)2014年4月6日「梅毒が若年層に増加 昨年1000人超、患者の多くは男性間の性的接触」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-04-07

その時には、男性同性間接触の比率がどの程度なのか解らなかったが、根拠になる国立感染症研究所(IASR)感染症疫学センターのレポートを見つけたので紹介しておく。
 
「増加しつつある梅毒 ―感染症発生動向調査からみた梅毒の動向―」(IASR Vol. 35 p. 79-80: 2014年3月号)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/syphilis-m/syphilis-iasrd/4497-pr4095.html
(摘要)
2013年の梅毒総報告数1,226例(前年2012年の875例に対して1.4倍の増加)
人口10万当たり発生率は1.0(2012年は0.7)
性別は男性が989例(80.7%)、女性は237例(19.3%)
男性の人口10万当たり発生率は1.6(女性は0.4)。
年齢群別の発生率は、男性では25~29歳が3.9で最高、次いで35~39歳の3.4。
女性では20~24歳が1.3で最高く、次いで25~29歳の0.9。

感染経路は、男性では861例(87.1%)が性的接触。
その内、同性間性的接触が432例(50.2%)、異性/同性間性的接触11例(1.3%)、異性間性的接触309例(35.9%)。
女性は160例(67.5%)が性的接触、異性間性的接触が141例(88.1%)。

男性同性間接触が50.2%と半数を占めている。
その昔、梅毒は淋病と並んで「花柳病」の双璧で、買売春(女色)が主な感染源だった。
それが今は男性同性愛が主な感染源になりつつある。
この事実、男性同性愛者はもっと深刻に考えた方がいいと思うのだが・・・。
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梅毒、都市部の男性中心に拡大 昨年、21年ぶり千人超
梅毒の患者が増えている。国立感染症研究所の調べによると、昨年の患者数は1226人で、21年ぶりに1千人を超えた。今年も5月25日までで548人と、昨年を上回るペースで増え続けている。性行為で感染するため、疑いがあれば速やかに医療機関を受診し、感染を広げないよう呼びかけている。

都道府県別では、東京が172人と最も多く、大阪71人、愛知56人、神奈川36人、千葉20人と都市部で広がっている。患者の約8割が男性で、特に20~40代を中心に増えている。男性同士の性的接触による感染が多いが、最近は女性にも広がりつつあるという。

国内の患者数は戦後間もないころは10万人を超えていた。その後、治療薬の普及で減り、2001~05年は500人台で推移していたが、11年から3年連続で増えている。

梅毒は感染して2、3週間後に陰部などに潰瘍(かいよう)ができ、2、3カ月後に全身に発疹が出る。その後、数年から数十年して大動脈瘤(りゅう)ができたり、認知症や歩行障害を起こしたりすることがある。妊婦が感染すると、赤ちゃんの手や足の骨が発達しなかったり、目や耳に障害が出たりする。

治療にはペニシリンが有効。早期なら2週間ほど薬をのみ続ければ治る。感染研感染症疫学センターの山岸拓也主任研究官は「パートナーとともにできるだけ早く病院を受診してほしい」と話す。(土肥修一)
『朝日新聞』2014年6月6日11時18分

2013年のHIV感染過去2位、AIDS発症者は過去最高、男性の同性間接触による発症も最高 [現代の性(HIV・性病)]

5月24日(土)
2013年のHIV感染&AIDS発症者のデータが発表された。
新聞の記述は簡潔な上に、肝心なこと(感染経路)が書かれていないので、報道の原資料である厚生労働省エイズ動向委員会「平成 25 (2013)年エイズ発生動向」を私なりに要約しておく。
http://api-net.jfap.or.jp/status/2013/13nenpo/h25gaiyo.pdf

HIV感染者は過去2位、 AIDS発症者は過去最高。
相変わらず男性の同性間接触による感染の比率が70%を占め、男性の同性間接触によるAIDS発症者は11.3%以上も増加し、過去最高を記録した(この部分、記事では隠蔽)。
こういう状況になっても、まだ危機感がそれほど高まらないということ、私には理解ができない。

(1) HIV感染者
【件数】
2013年(平成25)は1106件で、前年(1102件)より 4件増加。
2008年(1126件)をピークとして、 2007 年以降、 1000件以上の年が続いている。
2013年は過去2位の報告数 。
累積報告件数は15812件。
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↑ (表1)2013年までの累計報告数
累計グラフだから右肩上がりになるのは当然だが、こんなきれいな増加曲線は珍しいと思う。
SCN_0042 (4).jpg
↑ (表2)新規HIV感染者とAIDS患者数の年次推移
何度も言うが、このグラフを見て、なぜ危機感を抱かないのだろう?

【国籍・性別】
日本国籍の人が996件(前年920件)で、性別の内訳は、男性が963件(前年889件)、女性は33件(前年331件)で、男性が96.7%を占める。
外国籍の人は110件(前年82件)で、うち男性が97件、女性が13件。
男性の占める率は88.2%で、日本国籍の人よりやや低い(女性の比率がやや多い)
HIV感染者の大半を占める日本国籍男性の報告数は 2007年以降、横ばいが続いている 。
SCN_0043 (3).jpg
↑ (表3)新規HIV感染者数の国籍別、性別年次推移
外国籍女性の感染者が十分に把握されていないこともあるが、国内においてはほとんど日本国籍男性の問題であることがわかる。

【感染経路】
異性間の性的接触 194件(17.5 %)
同性間の性的接触 780件(70.5%)
性的接触によるものは合わせて974件(88.1%)
他に母子感染が1件(0.1%)報告され、 静注(静脈注射)薬物使用による感染の報告はなかった。
不明9.6%、その他1.2%。
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↑ (表5)2013年に報告された新規HIV感染者の感染経路内訳
同性愛男性の受診率が高いことは確かだが、それでも言い訳きかないほど男性同性間接触による感染が多い。

日本国籍の人では、男性同性間の性的接触が726件(前年683件)
異性間の性的接触が男性が142件(前年128件)、女性が26件(前年26件)。
男性に関しては同性愛(+6.3%)、異性間(+10.9)ともに増加。
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↑ (表6)2013年に報告された日本国籍男性の新規HIV感染者の感染経路別年次推移
近年のHIV感染拡大に、どの感染経路が寄与しているか一目瞭然。

これまでの累計で、日本国籍男性の感染経路はいずれの年齢層でも、同性間の性的接触の割合が高い。
しかし、年齢が上るにつれて異性間的接触の割合が高くなる傾向がある。
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↑ (表8)2013年に報告された日本国籍HIV感染者の年齢別、性別、感染経路別内訳

(2) AIDS発症者(患者)
【件数】
2013年(平成25)は484件で、前年(447件)より 37件も増加。
これまで最多だった一昨年(2011年)より11件多く過去最多。
累積報告件数は7203件。

【国籍・性別】
日本国籍の人が449 件(前年405件)で、性別の内訳は、男性が438件(前年387件)、女性は11件(前年18件)で、男性が97.6%を占める。
外国籍の人は35件(前年42件)で、うち男性が28件、女性が7件。
男性の占める率は80.0%で、感染者と同様日本国籍の人よりやや低い(女性の比率がやや多い)
AIDS発症者の大半を占める日本国籍男性の報告数は 増加傾向が続いており過去最多となった 。
SCN_0043 (4).jpg
↑ (表4)新規AIDS患者数の国籍別、性別年次推移

【感染経路】
異性間の性的接触 116件(24.0 %)
同性間の性的接触 273件(56.4%)
性的接触によるものは合わせて389件(80.4%)
静注(静脈注射)薬物使用0.6%、母子感染0%、不明16.1%、その他2.9%。
HIV感染者に比べると、同性間の性的接触の比率が下がり、異性間の性的接触の比率が上がる。
感染後のコントロール(発症しないように対処すること)が同性間の性的接触の方がなされていることがうかがえる。

日本国籍の人では、男性同性間の性的接触が263件(前年232件)。
異性間の性的接触が103件(前年83件)。
男性同性間の性的接触による発症は31件も増加(+11.3%)し、過去最高を記録

(3) 推定感染地域
感染者の推定地域は、84.9 %(939件)が国内感染で、日本籍の人では89.7% (893 件)を国内感染が占める。
男性のHIV感染者で2001年以 降継続して国内感染が国外感染を上回っている。
新規のHIV感染者+AIDS発症者を都道府県別にみると、東京都が人口10万人当たり2.729人で突出して多く、次いで大阪府の1.944人が多い。
以下、沖縄(1.060人)、神奈川、香川、福岡、愛知、佐賀、岡山、広島(0.739人)と続く。
大都市圏と沖縄以外では、なぜか瀬戸内海沿岸と九州北部が目立つ。

(4) 年代
HIV感染者は20代、30代に集中し、30代が最多で370人。
AIDS発症者は20 歳以上に幅広く分布し、30 代、 40代に多い。
60歳以上のHIV感染者(70件)、 AIDS発症者(79件)はともに過去最多。
高齢者への拡大が進んでいる。
HIV感染後の無症状期(潜伏期間)5~10年なので、2013年の発症者の増加は2000年代半ば(2003~2008年頃)のHIV感染者急増期に対応している可能性が大。

まとめ
男性同性愛者と中高年の男性の無軌道・無防備な性行動がHIV感染拡大の主因である。
反発されるのを承知で言えば、男性同性愛の人たちには、もう少し状況を冷静に把握し、快楽を最優先するのではなく、感染の危険性を自覚して、セーフティな性行動をとるようにしてほしいと思う。

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昨年のエイズ感染・患者、過去最多 感染最多は30代

厚生労働省のエイズ動向委員会は23日、昨年新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者の合計は1590人と過去最多だったと発表した。感染者は過去2番目に多い1106人、症状が出て初めてわかった患者は最多の484人だった。

岩本愛吉委員長は「感染から発症まで8年ぐらいかかる。2000~08年ごろに感染者は増えたとみられ、それが反映された可能性がある」としている。

感染経路は同性間の性的接触が7割近くを占めた。年齢別では、感染者は30代が最多で370人、患者は50代以上が最多で157人。感染者と患者の合計人数は07年以降、毎年1500人前後で推移。累計数は2万3015人に上った。

一方、保健所などでの検査件数は13万6400件と前年よりも約5千件増加。相談件数は14万5401件で、08年の約23万件から大幅に減った。早期に感染を見つけて適切な治療を受ければ、発症を抑えることができる。だが、例年症状が出て初めて感染に気付く人が3割ほどいるという。
『朝日新聞』2014年5月24日09時22分

梅毒が若年層に増加 昨年1000人超、患者の多くは男性間の性的接触 [現代の性(HIV・性病)]

4月6日(月)
若年層に梅毒が広がっているらしい。
いったいいつの時代の話だ!と言いたくなる。
感染症、とりわけ性病というものは、「薬で治るようになったからもう問題なし」ということにはならない。
感染研の部長の「増加の原因は不明だが、患者の多くは男性同士の性的接触の経験を持っている。こうしたコミュニティーに梅毒が入り込んでいる可能性がある」という指摘は重大だ。
いっこうに減らない同性間接触によるHIV感染と同じ土壌をもつ問題だと思う。

なぜ、ゲイ(男性同性愛者)のコミュニティには、明治~大正風に言えば「衛生」、平成風に言えば「セーファー・セックス」の概念がなぜ浸透しないのだろうか?
私にとって、長年の疑問だ。
そこになにか「男らしさ」の病みたいなもの(具体的に言えば、「衛生」や「安全」に気を遣うことを「男らしくない」と否定するような感性)が関係しているような気がする。
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梅毒が若年層に増加 昨年1000人超、「過去の病気」ではない!

主に性行為で感染する感染症「梅毒」の昨年の患者数が、現行の統計法になった平成12年以降、初めて1千人を上回ったことが5日、分かった。過去には大流行も引き起こした病も、現在は抗生物質で治療可能。そのため「過去の病気」と思われがちだが、ここへ来て若年層を中心に感染者がじわじわ増加中だ。専門家は「早めに治療を受け、感染拡大を防いでほしい」と話している。
国立感染症研究所(東京)によると、25年に梅毒と診断された人は前年比351人増(1・4倍)の1226人(速報値)。22年の621人から3年連続で増加している。男性が989人と8割を占め、特に25~39歳と若年層での感染が目立つ。感染研細菌第1部の大西真部長は「増加の原因は不明だが、患者の多くは男性同士の性的接触の経験を持っている。こうしたコミュニティーに梅毒が入り込んでいる可能性がある」と指摘する。
梅毒は梅毒トレポネーマ菌が性行為などによって皮膚や粘膜の傷口などから侵入することで感染する。皮膚が赤くなったり、リンパ節が腫れたりすることから始まり、現代ではまれだが進行すると脳や神経が侵され死亡することもある。
感染初期の発疹などの皮膚病変から移りやすく、治ったように見えても再び皮膚に異常が出ることもある。大西部長は「早期に治療することが感染拡大の予防となる。ためらわずに病院で検査を受けてほしい」と呼びかけている。
「msn産経ニュース」2014.4.6 21:34 [病気・医療]
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140406/bdy14040621360000-n1.htm

HIV感染者の「無防備な性交渉」、犯罪化したスウェーデンで議論再燃 [現代の性(HIV・性病)]

11月30日(土)
北欧スウェーデンで、HIV感染者が事前通知なしに性交渉を行うことを犯罪化していることを報じるAFPの記事。
スウェーデンが、ここまでやっているとは知らなかった。
HIVの感染拡大防止策としてはそれなりに有効だった(←過去形)と思うが、感染者の人権を考えた場合、犯罪化・刑罰化はかなり疑問で、HIVウィルスを抑え込む治療が可能になった現在、時代遅れの感は否めず、議論が再燃するのは当然だと思う。

しかし、一方で、自分がHIVに感染しているのを知りながら、他者に感染させることを承知で(さらにはそれを目的として)性交渉を繰り返す感染者もいるわけで、そうした不届き者には傷害罪・殺人未遂罪を適用して、厳しく罰すべきだと思う。
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HIV感染者の「無防備な性交渉」、犯罪化したスウェーデンで議論再燃
【11月29日 AFP】リナ・アバンデルさん(35)がHIV陽性と診断されたとき、それは処方薬と、そして通知義務を意味した──スウェーデンでは法律上、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)陽性の人は性交渉を行う前にそのことを通知しなければならない。
「私の作戦は、その状況に頻繁に身を置かないようにすること。カジュアルなセックスはあまりしてない」と、アバンデルさんは語った。「相手のことを信用できるようになるまで待つ。相手がこのことに対応できる人だということがわかるまで」
HIV感染はそれ自体ですでにつらい経験だが、スウェーデンでHIV陽性になるということは、法的義務に従わない場合に刑事訴追される危険性を伴うことを意味する。
通知の義務化はHIVの拡大を防止する目的で導入された。だが、12月1日の世界エイズデー(World AIDS Day)を前に、HIV感染の犯罪化をめぐる議論が大きな注目を集めている。

■HIV関連の有罪率、世界トップのスウェーデン
スウェーデンのHIV感染者は約6500人、そのうち90%が効果的な抗レトロウイルス治療を受けている。
スウェーデンでは、HIV感染者が通知義務に従わず、無防備な性交渉を行った場合、たとえ相手が結果的にHIVに感染しなかったとしても、加重暴行未遂罪に問われ、実刑判決を受ける可能性がある。
暴行を承諾することは通常ないため、つまりは、スウェーデンでは、HIV感染者はいかなる状況下であっても、法律上、無防備な性交渉を行うことできない──たとえHIV陽性であることをパートナーに明かし、パートナーが承諾したとしても。
HIV感染者支援団体GNP+(Global Network of People Living with HIV)が、HIVと刑事訴追との関連性を調べた報告書「2010 Global Criminalisation Scan Report)」によると、スウェーデンは、HIVに関連した有罪率が世界で最も高く、HIV感染者1000人に付き6.12件の有罪判決が言い渡されていた。これはフランスの60倍、米国の24倍に上る割合だ。

■性交渉による感染、効果的な治療受けていれば実質ゼロに
だが10月、状況が変わり始めた。
スウェーデン感染症対策研究所(Swedish Institute for Communicable Disease Control、SMI)が、効果的な治療を受けている場合、性交渉を通じたHIV感染の危険性は極めて低いことから、刑事訴追は間違いであると主張する報告書を発表。
この報告書を基に、スウェーデンの控訴裁判所が、4人の女性と無防備な性交渉を行ったHIV陽性の男性に禁錮1年の有罪判決を下した下級審の判決を覆し、無罪を言い渡したのだ。4人の女性は全員、HIVに感染していなかった。
同報告書の執筆者の1人、カロリンスカ研究所(Karolinska Institutet)の感染症対策部門のジャン・アルベルト(Jan Albert)教授は「効果的な抗レトロウイルス治療を受けている患者は、性交渉を通じての感染能力を実質的に持っていない」と述べている。

■「HIV感染者は性交渉するな」、国民の40%
男女の平等をめぐる政策では国際会議の場で称賛されることの多いスウェーデンだが、HIVをめぐっては「HIV陽性を公表しないこと及びHIV感染を犯罪化してはならない」との国連合同エイズ計画(UNAIDS)の推奨にスウェーデンは応じていない。
だが、HIV感染者の法的立場はスウェーデン国民の間に広がっている一般通念を反映したものかもしれない。
SMIの最新の報告書によると、「HIV陽性の人は性交渉を完全に止めるべき」と考えている人は、2011年にスウェーデン国民の40%に上っていた。また、スウェーデンの2大政党も、この問題についての明確な立場をまだとることができないでいる。
国内の人権団体などは、10月の無罪判決を画期的な出来事と評価している。だが11月末、検察当局は最高裁へ上告することを決めた──スウェーデン文化の中に、HIV陽性の通知に関する法律が深く根ざしていることの証拠なのかもしれない。(c)AFP
「AFP」2013年11月29日 23:21 発信地:ストックホルム/スウェーデン
http://www.afpbb.com/articles/-/3004200
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