SSブログ

2013年のHIV感染過去2位、AIDS発症者は過去最高、男性の同性間接触による発症も最高 [現代の性(HIV・性病)]

5月24日(土)
2013年のHIV感染&AIDS発症者のデータが発表された。
新聞の記述は簡潔な上に、肝心なこと(感染経路)が書かれていないので、報道の原資料である厚生労働省エイズ動向委員会「平成 25 (2013)年エイズ発生動向」を私なりに要約しておく。
http://api-net.jfap.or.jp/status/2013/13nenpo/h25gaiyo.pdf

HIV感染者は過去2位、 AIDS発症者は過去最高。
相変わらず男性の同性間接触による感染の比率が70%を占め、男性の同性間接触によるAIDS発症者は11.3%以上も増加し、過去最高を記録した(この部分、記事では隠蔽)。
こういう状況になっても、まだ危機感がそれほど高まらないということ、私には理解ができない。

(1) HIV感染者
【件数】
2013年(平成25)は1106件で、前年(1102件)より 4件増加。
2008年(1126件)をピークとして、 2007 年以降、 1000件以上の年が続いている。
2013年は過去2位の報告数 。
累積報告件数は15812件。
SCN_0042 (3).jpg
↑ (表1)2013年までの累計報告数
累計グラフだから右肩上がりになるのは当然だが、こんなきれいな増加曲線は珍しいと思う。
SCN_0042 (4).jpg
↑ (表2)新規HIV感染者とAIDS患者数の年次推移
何度も言うが、このグラフを見て、なぜ危機感を抱かないのだろう?

【国籍・性別】
日本国籍の人が996件(前年920件)で、性別の内訳は、男性が963件(前年889件)、女性は33件(前年331件)で、男性が96.7%を占める。
外国籍の人は110件(前年82件)で、うち男性が97件、女性が13件。
男性の占める率は88.2%で、日本国籍の人よりやや低い(女性の比率がやや多い)
HIV感染者の大半を占める日本国籍男性の報告数は 2007年以降、横ばいが続いている 。
SCN_0043 (3).jpg
↑ (表3)新規HIV感染者数の国籍別、性別年次推移
外国籍女性の感染者が十分に把握されていないこともあるが、国内においてはほとんど日本国籍男性の問題であることがわかる。

【感染経路】
異性間の性的接触 194件(17.5 %)
同性間の性的接触 780件(70.5%)
性的接触によるものは合わせて974件(88.1%)
他に母子感染が1件(0.1%)報告され、 静注(静脈注射)薬物使用による感染の報告はなかった。
不明9.6%、その他1.2%。
SCN_0043 (6).jpg
↑ (表5)2013年に報告された新規HIV感染者の感染経路内訳
同性愛男性の受診率が高いことは確かだが、それでも言い訳きかないほど男性同性間接触による感染が多い。

日本国籍の人では、男性同性間の性的接触が726件(前年683件)
異性間の性的接触が男性が142件(前年128件)、女性が26件(前年26件)。
男性に関しては同性愛(+6.3%)、異性間(+10.9)ともに増加。
SCN_0043 (7).jpg
↑ (表6)2013年に報告された日本国籍男性の新規HIV感染者の感染経路別年次推移
近年のHIV感染拡大に、どの感染経路が寄与しているか一目瞭然。

これまでの累計で、日本国籍男性の感染経路はいずれの年齢層でも、同性間の性的接触の割合が高い。
しかし、年齢が上るにつれて異性間的接触の割合が高くなる傾向がある。
SCN_0043 (8).jpg
↑ (表8)2013年に報告された日本国籍HIV感染者の年齢別、性別、感染経路別内訳

(2) AIDS発症者(患者)
【件数】
2013年(平成25)は484件で、前年(447件)より 37件も増加。
これまで最多だった一昨年(2011年)より11件多く過去最多。
累積報告件数は7203件。

【国籍・性別】
日本国籍の人が449 件(前年405件)で、性別の内訳は、男性が438件(前年387件)、女性は11件(前年18件)で、男性が97.6%を占める。
外国籍の人は35件(前年42件)で、うち男性が28件、女性が7件。
男性の占める率は80.0%で、感染者と同様日本国籍の人よりやや低い(女性の比率がやや多い)
AIDS発症者の大半を占める日本国籍男性の報告数は 増加傾向が続いており過去最多となった 。
SCN_0043 (4).jpg
↑ (表4)新規AIDS患者数の国籍別、性別年次推移

【感染経路】
異性間の性的接触 116件(24.0 %)
同性間の性的接触 273件(56.4%)
性的接触によるものは合わせて389件(80.4%)
静注(静脈注射)薬物使用0.6%、母子感染0%、不明16.1%、その他2.9%。
HIV感染者に比べると、同性間の性的接触の比率が下がり、異性間の性的接触の比率が上がる。
感染後のコントロール(発症しないように対処すること)が同性間の性的接触の方がなされていることがうかがえる。

日本国籍の人では、男性同性間の性的接触が263件(前年232件)。
異性間の性的接触が103件(前年83件)。
男性同性間の性的接触による発症は31件も増加(+11.3%)し、過去最高を記録

(3) 推定感染地域
感染者の推定地域は、84.9 %(939件)が国内感染で、日本籍の人では89.7% (893 件)を国内感染が占める。
男性のHIV感染者で2001年以 降継続して国内感染が国外感染を上回っている。
新規のHIV感染者+AIDS発症者を都道府県別にみると、東京都が人口10万人当たり2.729人で突出して多く、次いで大阪府の1.944人が多い。
以下、沖縄(1.060人)、神奈川、香川、福岡、愛知、佐賀、岡山、広島(0.739人)と続く。
大都市圏と沖縄以外では、なぜか瀬戸内海沿岸と九州北部が目立つ。

(4) 年代
HIV感染者は20代、30代に集中し、30代が最多で370人。
AIDS発症者は20 歳以上に幅広く分布し、30 代、 40代に多い。
60歳以上のHIV感染者(70件)、 AIDS発症者(79件)はともに過去最多。
高齢者への拡大が進んでいる。
HIV感染後の無症状期(潜伏期間)5~10年なので、2013年の発症者の増加は2000年代半ば(2003~2008年頃)のHIV感染者急増期に対応している可能性が大。

まとめ
男性同性愛者と中高年の男性の無軌道・無防備な性行動がHIV感染拡大の主因である。
反発されるのを承知で言えば、男性同性愛の人たちには、もう少し状況を冷静に把握し、快楽を最優先するのではなく、感染の危険性を自覚して、セーフティな性行動をとるようにしてほしいと思う。

-----------------------------------------------------------------------
昨年のエイズ感染・患者、過去最多 感染最多は30代

厚生労働省のエイズ動向委員会は23日、昨年新たに報告されたエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者の合計は1590人と過去最多だったと発表した。感染者は過去2番目に多い1106人、症状が出て初めてわかった患者は最多の484人だった。

岩本愛吉委員長は「感染から発症まで8年ぐらいかかる。2000~08年ごろに感染者は増えたとみられ、それが反映された可能性がある」としている。

感染経路は同性間の性的接触が7割近くを占めた。年齢別では、感染者は30代が最多で370人、患者は50代以上が最多で157人。感染者と患者の合計人数は07年以降、毎年1500人前後で推移。累計数は2万3015人に上った。

一方、保健所などでの検査件数は13万6400件と前年よりも約5千件増加。相談件数は14万5401件で、08年の約23万件から大幅に減った。早期に感染を見つけて適切な治療を受ければ、発症を抑えることができる。だが、例年症状が出て初めて感染に気付く人が3割ほどいるという。
『朝日新聞』2014年5月24日09時22分

nice!(0)  コメント(7)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 7

ばたふらい

本当に、いつになったら、感染数が下火になるのでしょうか…という思いです。
きっと、多くの人(ゲイ男性)にとっては、今も“他人事”なのでしょう。

それが、気持ち緩みにつながり、ちょっとぐらい…になり、
数か月後、或いは数年後に感染発覚!となっているのでしょうね。

軽く考えてた割には、陽性と分かると、絶望して自殺が頭をよぎる人が、まだまだ多い。
どうすれば予防できるか、大半の人には分かっているはずなのに…。
by ばたふらい (2014-05-24 16:15) 

ran

以前、フォーラムで性同一性障害(特にMTF)の人は、ハイリスク群か?という話が話題に出たことがあります。
確かにSRS前の人は肛門SEXをする可能性があるのですが、私が知っている限りでは、性別違和の方が強すぎて、そもそもSEXまでたどり着かないか、それ以前に相手もいないという人が多いように思います。
このあたり女装系の人とは異なっているという印象なのですが、三橋さんはどのようにお考えでしょうか?
by ran (2014-05-25 18:09) 

三橋順子

バタフライさん、いらっしゃいま~せ。
>本当に、いつになったら、感染数が下火になるのでしょうか
まったくです。
このままだと、さらなる感染爆発につながりかねない状況だと思います。
ただ、今回の報道を見ていると、『朝日新聞』ですら社会面最下段のベタ記事で、しかも感染ルートについての言及はなしで、これでは状況が正しく伝わるはずがありません。
世間の無関心、マスメディアにも広がっているのかなと思います。

それと、いわゆるLGBT系の「人権意識が高い」人の中で、男性同性愛者が無軌道・無防備な性行動に走るのは、社会の同性愛に対する無理解が原因という意見が広まっています。
社会的無理解→ホモフォビアの内面化→自尊感情の欠落→危険な性行動という図式が間違っているとは言いませんが、同時に「まず自分たちができること(セーフティ・セックス)をすべきではないのか」と、私は言いたいのです。

by 三橋順子 (2014-05-25 19:21) 

三橋順子

ranさん、いらっしゃいま~せ。
女装系の人もいろいろで、「エリザベス会館」のような室内中心の女装者のアナル・セックス経験率は、かなり低いと思います。
おそらく10%以下ではないでしょうか。
新宿のような夜の酒場系の女装者では、もっと高いと思いますが、それでも50%以下ではないでしょう。
MtFのGIDについては、私もranさんと同様の印象で、身体違和が強く、そもそもSexをしようとしない、相手を求めない、したがってHIV感染のリスクは低いと思っていました。
ところが、沖縄のGID学会の際に、針間先生に「MtF受診者のアナル・セックス経験率は必ずしも低くない(ただしHIV感染率は0%)」という話をうかがいました。
そうなると、GIDのHIV感染のリスクは低い(ハイリスク群ではない)と必ずしも言えなくなります。
詳しい数値は、(私が言って間違っていると困るので)針間先生にうかがってください。
by 三橋順子 (2014-05-25 20:47) 

ran

返信をありがとうございました。
針間先生からは、別の機会にも同じような話を聞いたことがあります。
GIDの人に対しては、今までそうした啓発は全く行っていなかったし、必要無いと思っていたのですが、やったほうがいいんですかね?
まぁ、とは言ってもセーファーで無いアナルセックスが危険であるのは、みなさん充分に承知しているはずで、自己責任なのでは?という気がしないでもありません。
by ran (2014-05-25 23:18) 

Gen

先日あるサイトでMTFさんの悩みを読みました。
彼女は手術費用を稼ぐためにすごく嫌だけどヘルスに勤め始めて半年ぐらいだそうです。
HIVに感染したのではないかという症状に悩まされて店を休んでいるし、もう出たくない、とか。
お客さんにはゴムを使ってもらうようにしているが、一度した後、外れてそのまま中に出されたとのこと。
検査に行くしか本当のところは分からないからぜひ行きなさい、とみんな言ってました。
カミングアウトは済ませ、親には受け入れてもらえたのですが、だから迷惑かけないように手術費用位は自分で稼がなきゃ、と思ったようです。
本人は無理してすごく嫌なのにエイズになってしまったら何のためにここまで頑張ってきたのか分からない、生きる希望がなくなりそう、とかなり悲観していました。
回答者の一人が当事者で、その人も似たような経験をしてきた、手術して戸籍を認められるまでに体を壊すMTFは少なくない、この構造に問題がある、と言ってました。
私はMTFさんの気持ちはよく分からないですが、どうしてそこまでして手術しなければいけないのか、と思ってしまうんです。
そこまでするほどに女性の体になることは価値があることなのか、たとえ死んでもその方がいいのか、と疑問に思いました。
最近はよほど末期で発見されたのでないとHIVでは死なないらしいですが、陽性になれば病院側から断られるなどでSRSが受けにくくなるかも。
もし、こういうMTFさんが多いなら、ほんと、自己責任、としか言えませんよね・・・。
それに手術したって現実に適応できるほどタフでないなら女としてやっていけないではないですか。
別の性になることはかなり訓練要りますしね・・・。
私自身は生物学上の男と全く同じように性行為できる状態になれないなら手術の意味はないので、想像の方がマシ、と思うことにしています。
現実に適応できないと生きていけませんしね・・・。
事例としてご報告いたします。
ご参考までに。

by Gen (2014-06-13 02:15) 

三橋順子

女性として生活するためには、手術(SRS)して戸籍の性別を女性に変更しなければならない、と思い込まされているわけで、そのためにセックスワークに従事して、それでHIVに感染してしまったら、ほんとうにかわいそうだと思います。
なぜ、そう思い込まされてしまうのか、情報による洗脳はほんとうに恐ろしいです。
ちゃんと学校を出て、それなりの仕事に就けば(まあ、今はそれもなかなか難しいのですが)、MtFのSRS費用なんて1~3年で貯金できると思います。
それから、SRSして性別変更しても、少しも遅くないと思うのですが。
「一刻も早く」と思う気持ち、わからないわけではないですが、もう少しリスクの少ない長期計画的な物事の考え方が、なぜできないのだろう?と思ってしまいます。

おっしゃる通りで、現実に適応して、世間の荒波を漕ぎ渡って行くくらいの才覚と根性がなければ、(社会的条件が男性に比べて劣悪な)女性になったところで、やっていけなくなる可能性はますます高くなるだけなのですが。

by 三橋順子 (2014-06-13 17:31) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0