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『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」(第9回) [現代の性(いま子どもたちは 男装/女装)]

8月7日(水)
『朝日新聞』教育欄「いま子どもたちは 男装/女装」の第9回。
『朝日新聞』朝刊の教育面連載「いま子どもたちは」では、7月24日から「男装/女装」を扱っています。
第7回までは「男装女子」に注目していましたが、8月3日掲載の第8回から「女装男子(男の娘)」に対象が移っています。
第9回は「乙女心がきゅんきゅんする時に」。
デジタル版は「今どき女装は『かわいい』が鍵」で、湯島「若衆Bar化粧男子」の井上魅夜ママの登場です。
それに関連して私のコメントが掲載されました。
(「娘分」との共演が実現して、うれしい!)
今どきの女装の価値観と、その問題点について語っています。

私の解説は、このシリーズ3度目になりますが、たぶんもう1回、最終回に登場する予定です。
7月24日 第1回(紙面)「この世代ならではの文化」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-07-24-2
7月31日 第5回(デジタル版)「『華やか』男装、『日陰者』の女装 寛容度に差、なぜ」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01-2
8月7日 第9回(デジタル版)「今どき女装は「かわいい」が鍵」
合わせて、お読みいただけたら、幸いです。
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(いま子どもたちは)男装/女装:9 
乙女心がきゅんきゅんする時に

ワンピースを着たハヤトさん。ヒールのあるブーツは、妹のものを拝借してきた

No.567

女装したハヤトさん(19)に会ったのは、九州北部のカラオケボックスの一室だった。
「3カ月に1回くらい、乙女心がきゅんきゅんするときがあって。そういうときに女装したら、すごく楽しいんですよねー」
お気に入りの黒いワンピースを着たハヤトさんは、淡々とゆっくり話す。昨春高校を卒業し、今は飲食店で働いている。

生体リズムのせいなのかどうか分からないが、自分の中に「男モード」と「女モード」があるのだという。
男モードのときは、女の子を見ると、「付き合いたい」「かわいい」「守りたい」。それが女モードになると、「守られたい」に変わり、繁華街を歩くと、女性ファッションや小物雑貨に目がいくようになる。
男装する女子が、自分の中の「男の子」を表現しようと男装するように、ハヤトさんも、自分の中の「乙女」に服を着せている。ただ、男装とは違い、他人に無邪気に姿を見せることはない。

女装を始めたのは去年の冬。周囲の人には、女装のことは語っていない。「まあ、話すことでもないかなって。得することでもないし」。自宅でこっそり「変身」し、かわいく女装できたときは、その姿をインターネットに投稿することもある。

時々、写真を見た男性から「会いませんか」と、性的な関係を求めるメッセージが届く。だいたいそれは、30~40代の男性だ。「それはちょっと引きます。僕は女の子になった自分を見て満足してるだけで、正直、性欲目的じゃないですもん」

「女装」という言葉を使いにくいという。「性的なものを連想させるから。『コスプレ』だと言いやすい」

「女装」という言葉を嫌う女装男子は少なくない。女装が常に、変態、異常者、気持ちが悪いというマイナスイメージと共に語られてきた証しでもある。
「別に、この姿で目立ちたいってわけでもない。普通に生活できると幸せなんだけどなあ」。ぽつりとそう漏らした。(原田朱美)
 〈+d〉デジタル版に「今どき女装は『かわいい』が鍵」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308060557.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308060557
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(以下、デジタル版のみ掲載)
今どき女装は『かわいい』が鍵

「若衆Bar化粧男子」を経営する井上魅夜さん。ニコニコ動画で放送している「男の娘☆ちゃんねる」にも参加している

【原田朱美】女装する男子を取材していて、必ず出てくるのが「かわいい」という言葉だ。数年前からブームになった「男の娘(こ)」も、「女の子のようなかわいい男子」という表現をよく使う。でも、容姿は人それぞれ。どうしてもかわいくなれないこともありそうだが――。

東京・湯島で「若衆Bar化粧男子」を経営する井上魅夜さんは、「男の娘」のリーダー的存在の一人。
その井上さんがきっぱりと言った。
「かわいくなかったら価値がないっていう場所です」

「場所」とは、毎月最終土曜日の夜に東京・新宿で開催される女装イベント「プロパガンダ」のこと。毎回300人以上の人々が集まる「おそらく日本最大級の女装イベント」(井上さん)だ。未成年は入場不可。ここで女装男子たちは、互いのかわいさを競い合う。
「かわいくなれない人」は、こうしたイベントで美しい女装男子を見る側に回るという。井上さんによれば、「自分はかわいくなれないけど、せめてかわいい人にお酒をおごりたい」という心理なのだとか。

従来の女装コミュニティーは、男性が、女装者を美しくするためのスポンサーとなる代わりに、女装者が男性に従属し、性的関係をもつのが一般的だった。しかし今は、かわいい女装男子であるほど、男性より立場は上。貢がれることも珍しくない。

著書「女装と日本人」などがある明治大学非常勤講師の三橋順子さん(性社会史)は、「昔の女装世界より、今は価値が単一化している」と指摘する。
以前は、女装者をほめる言葉はいろいろあった。「女っぽい」「気立てが良い」「料理がうまい」……。見た目が必ずしも美しくなくても、スポンサーとなる男性に認めてもらえたという。でも今、価値があるのは「かわいい」だけ。

三橋さんは「それは女性の価値観だ」という。クールジャパンとして海外にも輸出される「かわいい」。この女性的な視点が女装の世界にも浸透している。
「男性視点だったら、セクシーとかキレイとかいう表現になる。女性的な視点だから『かわいい』なんです」と三橋さん。そして、「かわいい」の反対語は「キモい」。そうなると、今度は排除される。三橋さんは「この残酷さも、女性的です」と言う。

ただ、「そうでもない」という意見も。「男の娘」の専門誌「わぁい!」(一迅社)の土方敏良編集長代理は「同人誌とか小さなイベントで女装男子が集まったときは、お互いにいいところを見つけて『かわいい』ってほめ合ってますよ」。まるで女子中学生のような光景だという。お互いに劣等感をもつからこそ、ほめて励まし合っているらしい。

ただ、かわいくなれたからといって、必ずしも幸せではないようだ。冒頭に紹介した井上さんは言う。
「かわいいヤツに限って、かわいくなくなったら、死ぬんですよね」
自死を選ぶのだという。「3カ月に1回くらい、そういう話を聞く」と井上さん。

井上さんに言わせると、「20代前半の若いうちは、あまり金をかけなくてもかわいくなれる」。でも、人は老いる。その後もかわいさを維持しようとすると、多額の金が要るし、金をかけても若いころほどには容姿を保てない。そうした実情に精神的に耐えられなくなった人が、死を選ぶのだという(もちろん、本当のところは本人にしかわからないのだが)。

「ドーピングをしまくってフルマラソンに出続けるようなもんですよ。ある日、ばったり倒れてしまう」。井上さんの言葉は、心が痛くなる。「それってよくないでしょ? 『かわいい』だけしか価値基準がないから、そうなるんです。僕はそうじゃない場をつくろうと思ってる」

三橋さんは「かわいい」という価値基準が、女装の低年齢化とも関係していると指摘する。「『きれい』という価値観なら30代、40代にも使える。でも『かわいい』は30歳にはもうきつい。むしろ10代の方がいいという考えすらある」。「男の娘」たち自身も「僕はもう23歳で、年ですから」といった発言をするという。

三橋さんは言う。
「昔から、女装のプロであるニューハーフの世界では自殺の話をよく聞く。見た目でしか人に評価されず、それにすがると、失ったときに追い詰められてしまうから。だから、女装世界の先輩たちは『見た目以外に自分を肯定できる価値観を身につけないとダメだよ』と言ってきた。でも、10代や20代前半の人間的に未成熟な時期に、この言葉はなかなか通じない。それが今の難しさだ」
http://digital.asahi.com/articles/TKY201308060311.html?ref=comkiji_txt_end_s_kjid_TKY201308060311
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YUKO

生まれたてはともかく、物心ついてから可愛いと言われた事はありませんが・・・。自分で言うのも何だが、女としては上物だと思うのですけどねぇ。かわいくなくちゃいけませんかねぇ(笑)
きっと、女装の世界にも、そういう価値観が必要なんでしょうね。
by YUKO (2013-08-07 19:32) 

三橋順子

YUKOさん、いらっしゃいま~せ。
かわいく作れば、とてもかわいいと思うけど・・・。
まあ、私たちの世代(←一緒にする)は、「かわいい」と言われるより、「きれい」とか「色っぽい」とか「かっこいい」と言われた方がうれしいと思う。

by 三橋順子 (2013-08-07 23:36) 

マミー

髪型やメイクのし方でがらっと変わりますよね。かわいくぶりぶりにしたい時は目元を丸く見せるようにシャドーを入れたり、また、妖艶な感じにしたい時はアイライナーを切れ長にひくとか、まあ色々な方法があります。まあ、私の場合顔も大切ですが、心はもっと大事です。ブーなひとでもなんかとっても心引かれる人がいるのです。料理研究家のマロンちゃんなんか最近気になってます。彼の顔よりも仕草に惚れる。順子さんもいつか生で会ってみたい!料理も上手だし、綺麗だしヤッパリ一番かな。
by マミー (2013-08-08 11:55) 

三橋順子

マミーさん、いらっしゃいま~せ。
>順子さんもいつか生で会ってみたい!料理も上手だし、綺麗だしヤッパリ一番かな。
ありがとうございます。高齢になっても、そう言っていただけると、励みになります。
上のYUKOさんへのコメントの時にも思ったのですが、私たちの世代(40~50代)が認識している「可愛い」と、今の若い世代の「かわいい」とは、どうも中身がかなり違うのではないかと思っています。
どう違うかは、言葉でうまく説明できないのですが・・・。
by 三橋順子 (2013-08-09 01:41) 

Gen

可愛さがどう違うのかは説明しにくいけど、自分で納得できる「可愛さ」以外の取り柄は必要ですよね。

「女装」のお姉さま方はちゃんと努力されてて偉いと思います。
私なんか、ほんとの女だった(自覚なかった)時でもIkkoさんみたいな足だったことないし、メイクもごく若いころ以外は最低限しかしてこなかったです・・・・。
やっぱり心が女じゃないからそこまで頑張れなかったんだろうと今では納得です。
昔理想の女性がいるとおしゃれが上達するという記事を見ましたが、こうなりたいって女性が一人もいませんでした。みんな素敵だけど、こうなりたいとは思えず、なぜだか不思議でした。




by Gen (2013-09-19 00:24) 

三橋順子

Genさん、いらっしゃいま~せ。
>ちゃんと努力されてて偉いと思います
もとの身体が男性だと、それなにり気合を入れて化粧したりファッションの勉強しないと、女に見えませんからね。
女性はそこまでしなくても、十分に女らしい方はいくらもいます。

>こうなりたいって女性が一人もいませんでした
ロールモデルが必要だという意見もありますが、自分にそういう人がいたかというと、どうなのでしょうか?

一時期、「あの人みたいになりたい」と思った女性はいましたが、それは容姿というより(これは到底無理でした)、女性としての生き方のモデルでした。今でも彼女には感謝しています。

by 三橋順子 (2013-09-21 03:03) 

Gen

コメント有難うございます♪

女性はそこまでしなくても・・・・
←確かにそうですがあの情熱には感動します・・・・。
足首を細くするために毎日ラップを巻くくらいなら、毎日漢詩を読んで覚える、の方がいいです・・・・・。
足がきれいになったって賢くなれるわけじゃないし、しかも一生その「キレイ」が持続するわけじゃない。
「それなのに」継続して頑張ってるのがすごいなと思いました。

一時期「あの人みたいになりたい」と思った女性はいましたが・・・
←そうだったんですね。
私も行動面で尊敬できる人がいました。
若いころの出会いって大事ですね。
私も今でもありがたいと思っています。

今思うと自分が「女になること」を心の奥底で拒んでいながら、「女性の理想像」なんてできるはずないですよね。
「こういう風になりたいな」というのは一人残らず男性でした。



by Gen (2013-09-24 23:29) 

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