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2月17日(月)Peter Jackson博士講演 「A Brief History of the Thai Kathoey」-「WPATH 2014 Symposium in Bangkok」参加記(4日目の1) [現代の性(WPATH 2014)]

2月17日(月)  晴れ  バンコク  32.7度
5時10分、起床(Ramada Menam Riverside Hotel)。
今日は、9時から聞きたい講演があるので、頑張って早起き。
シャワーを浴びて髪と身体を洗う。
髪にあんこを入れて頭頂部で結わえて、黄色のシュシュを巻く。
化粧と身支度。
青・黒・白の不思議柄のロングチュニック(2分袖)を黒のレギンス(3分)と合わせてミニワンピース風に、黒のサンダル、黒のトートバッグ。
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7時30分、佐々木掌子さんとロビーで待ち合せて朝食へ。
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↑ チャパティとライス(インディカ種)にカレーや煮込み料理
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↑ 鶏団子入りセンミー(極細)のクィティアオ(タイの米粉麺)。
ほぼ毎日、同じパターンの朝食だが、まだ飽きない。
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今日もよいお天気。
バンコクは11月~2月が乾季なので、今の季節、ほとんど雨が降らない(2月の平均降雨日数は3日)。
最高気温は32度前後で毎日ほぼ一定。
湿度が低いので気温が高い割には汗をかかない。
ちなみにケッペンの気候区分ではAw(熱帯サバンナ気候)で、年間の平均最高気温32.7度、平均気温27.8度、平均最低気温24.1度、年間降水量1497mmである。
ちなみに、東京はCfa=温暖湿潤気候で、数値はそれぞれ20.0度、16.3度、13.0度、1529mm。
東京よりバンコクの方が年間降水量が少ないのはちょっと意外(東京がそれだけ雨が多い)。

8時30分、ホテルを出てタクシーで「WPATH2014 Symposium in Bangkok」の会場のAnantara Bangkok Riverside Resort & Spaに向かう。
タクシー代は、夜間すんなり行くと47B、少し混んでると57~59B、渋滞にかかると63Bという感じ。
日本円換算だと140~190円くらいだから安い。
なので、だいたい20B(60円)のチップを渡している。
8時45分、会場に到着。
9時からBallroom, Room A(メイン会場)で行われるPeter Jackson博士の講演 「A Brief History of the Thai Kathoey: Behind the Myths and Stereotypes.」に間に合った。
Peter Jackson博士はオーストラリア人の歴史学者で、Kathoey研究の第一人者だそうだ。
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Kathoey(カトゥーイ)は、文化人類学的には、タイとその周辺国(ラオス、カンボジア)のサード・ジェンダー(Male to Female)的な人々と理解されている。
Jackson博士の講演は、Kathoeyの用例を歴史的に詳細にたどったもので、文化人類学ではなく言語歴史学のような内容だった。
スライドは、ほぼすべて撮影してあるが、大量(約20枚)なので掲げない。
(学術的に関心がある方がいれば、提供します)
言語歴史学な研究によって、Kathoeyの歴史的実態が明らかになるのか、というと、どうもそうでもないようだった。
少なくとも20世紀になるまで、Kathoeyの起源や実態を示す絵画や写真は無いようだ。
ただ、興味深いのは、1890年代のタイ王室の子女の写真で王子と王女の区別がつけにくいと言っていること。
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また、一般の男性・女性のファッション(髪形・服装)も差異が少ないことを指摘している。
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一般的に、男女のファッション差が少ないと、性別の越境は容易になるとされる。
日本の数少ない異性装史研究者である武田佐知子先生(大阪大学教授)も、そう言っている。
(ただ、この点について私の見解は、ジェンダー記号を操作する余地という観点で少し異なるのだが)
前近代のタイもそうした男女のファッション差が(欧米に比べて)少ない社会であったことは留意すべきだろう。
次にJackson博士は、前近代のタイの演劇が男女別々だったこと、つまり男性だけの劇団、女性だけの劇団が存在し、そのため男性が女役を、女性が男役を演じる必要があったことを指摘する。
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この点は、2日目の午後に聞いたPrempreda Pamoj Na Ayutthayaさんの報告と同じ。
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-02-20-2
私は異性装をともなう演劇は、トランスジェンダーが生きていく社会環境として重要だが、トランスジェンダーの起源ではないと考える。
日本がそうであるように、トランスジェンダーは、異性装をともなう演劇の成立以前から存在したのだから。
近代化以降については、タイ女性の「美の基準」が急激に変化したことを指摘する。
この変化とは、女性ファッションの欧米標準化であり、同時に男女のファッション差が大きくなったということ。
その証拠として、近代化以前に欧米人から「醜い」と評されていたタイ女性が1965年にミス・ユニヴァースに輝いたことを紹介する。
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この点は日本も似たようなもので、19世紀後半(幕末~明治期)に欧米人から矮小で醜いと評価されていた日本女性は、1959年にミス・ユニヴァースに輝く。
ちなみに、ミス・ユニヴァースで優勝しているアジアの国は、日本(1959児玉明子、2007森理世)、タイ(1965、1988)、フィリピン(1969、1973)、インド(1994, 2000)。
そうしたタイ女性の「美の基準」の欧米標準化と、Kathoeyのセックスワーカーの街頭への出現がほぼ同時期(1960年代後半)であることが興味深い。
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ただし、この点については、ベトナム戦争の時に、タイがアメリカ兵の慰安場所になっていたことが大いに関係すると思う。
戦後の日本でもそうであったように、トランスジェンダーのセックスワーカーの供給が高まるのはアメリカ兵の需要に応じてだった可能性が高いと思う。
講演の最後にKathoeyの歌手が唄っている映像が流された。
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その最中に、聴衆がぞろぞろ外に出て行った。
お義理で聴いていた人がけっこう多かったらしい。
残念だったのは、現在のタイのKathoeyたちの状況がほとんど紹介されなかったこと。
つまり、私たちが2日目の夜に探訪したLadyBoyたちが置かれている状態については、Jackson博士も欧米人の聴衆もほとんど関心がないのだと思う。

これはWAPTH2014全体に感じられたことなのだが、Bangkokで開催した意味って、なんなのだろう?と思う。
たしかに、国連4機関の支援で連続シンポジウム)「Trans People in Asia and the Pacific」が開催されたことは、大きな成果だと思うが、アジア関係のシンポジウムに出席していた人は限られるし、必ずしも数は多くなかった。
それに、タイ、バンコクの地元の関係者の姿が少なかったのは気のせいだろうか。
地元のLGBTサポート団体のブースもなかった。
欧米からの多くの参加者にとって、南国のリゾートホテルが会場だったという以上の意味があったのだろうか?と思ってしまう。
参加者のほとんどは、まじめな研究者や熱心な活動家なのだが、これだけの規模の研究集会をしながら、現在のタイのトランスジェンダーの姿が、ほとんど浮かび上がってこないのはなぜなのだろう。
現地の実情への関心の希薄という点で、どうしてもColonialism(植民地主義)を感じてしまうのは、コロニアル様式の会場のせいではないと思う。

10時30分~12時30分のセッションは、 引き続きメイン会場で、「Abstract Presentations: DSM/ICD and SOC.」 を聞く。
(1)Greg Mak, PhD.「Biopsychosocial characteristics in Chinese transgender : a pilot clinic study in Hong Kong」.
(2)Amets Suess, MA.「Deconstructing Dynamics of Categorization and Discursive Exclusion: Research Reflexivity
and Ethics from a Trans* Depathologization Perspective.」
(3)Mauro Cabral.「New Diagnoses, Old Laws: The Clash of Titans?」
(4)Jaco Erasmus, Fintan Harte,Harjit Bagga, Danny Davies, Suzy Cowling.「An exploratory investigation into the quality of life of patients with Gender Dysphoria at various stages during their transition: An Australian perspective.」
(5)David Gerber, MBChB, MRCPsych, MBA, Kelly Muir.「Scotland’s Gender Reassignment Protocol.」
(6)Greta Bauer, PhD,Robb Travers, PhD, Misha Eliasziw, BSc, MSc, PhD, Rebecca Hammond, MSc, Ayden I. Scheim.「The Impact of Medical Transition on Mental Health: Trans PULSE Project.」
(7)Terry Reed, OBE, JP, BA(Hons), MCSP,SRP, GradDipPhys.「The impact of WPATH 2011 standards of care on the development of UK guidance on the treatment of gender dysphoria: the lessons learnt.」
う~ん、なんだかあまりパッとしない報告ばかりだったような気がするのは私の英語力不足のせいだろうか?

12時半、昼食。
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レタスなどの葉物野菜、日本のものに比べると少し苦味がある。
ああ、日本のレタスも昔はそうだったな、と思う。
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今まで手を出さなかったデザートも食べてみる。
う~ん、イマイチ。
日本のパティシエたちは世界最高レベルだから、比べたらかわいそうなのだが。
(続く)
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