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8月31日(土)ドキュメンタリー映像「GID/GD/トランスジェンダーの過去・現在」の取材を受ける [お仕事(出演・取材協力)]

8月31日(土)  曇り  東京  31.7度  湿度66%(15時)  

新宿三丁目「新宿ダイアログ」で、ドキュメンタリー映像「GID/GD/トランスジェンダーの過去・現在」の取材を受ける。

インタビューだけでなく、動画を撮るというので、それなりの格好(青紫の地に白の麻葉模様の綿絽の着物)をする。
でも、蒸し暑くて、体力消耗。

以下、事前の質問要旨に対する応答原稿。
実際には、これ以外のことも、いろいろ話した。
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① 自己紹介
三橋順子。Trans-womanです。仕事は大学講師、著述・講演業。
専門は、ジェンダー&セクシュアリティの歴史研究。
主なテーマは性別越境(トランスジェンダー現象)と買売春です。

② 活動したきっかけ(活動家ではないと言ってはいますが、三橋さんがしてきたことは大きいと思いますので敢えて活動と記入してます)
自分の基本スタンスは研究者であって、活動家ではありません。ただ、自分が研究者として、書いたり、話したりすることが、結果的に社会に対する働きかけになっているとは思います。
社会的に発言するようになったきっかけは、1990年代のクィア・ブームの時に、まずゲイの伏見憲明さんが発言し始め、レズビアンの掛札悠子が続き、次にトランスジェンダーでしゃべれる奴はいないか?という流れになって、私に出番がきたということです、心理学系の雑誌『imago』1996年2月号に載った伏見さんとの対談「ジェンダーをデザインする」がメジャー・デビューです。

③ GID特例法の前後の歴史 特例法成立前後、何をしていましたか?(推進・反対・傍観など) 「要件」について、何か思うところはありましたか?
戸籍の性別変更の重要性は1990年代から認識していました。それで、過去に性転換手術後に、戸籍法113条によって性別訂正をした事例があることを突き止めました。
私は、そうした過去の訂正事例をベースに、戸籍法113条の条文改訂、もしくは解釈の柔軟化(「錯誤」の意味の拡大解釈)によって、性別訂正の間口を広げることを目指す戸籍法(113条)の改訂路線でした。しかし、結果的に大島俊之先生が主導する「性転換法」の実現を目指す立法路線が主流になっていきました。それ自体は、私の力不足であり、仕方がないと思います。
問題は法案の内容で、病理を前提に、変更の対象を「性同一性障害者」に限定する枠組みは、病理を否定するトランスジェンダリズムとしては容認できません。また要件の最大の問題点は「子なし要件」です。子どもがいる当事者は子どもを殺さない限り対象にならないわけです。ある人の人権が、たとえ子どもであっても、他者によって制約されることはあってはいけない、というのは人権の基本です。そんな非道な要件を認めるわけにはいきません。駄目な法律を作っちゃうと、10年、20年と悪影響があるわけです。まさに今がその状態なわけです。
ですから、GID特例法には明確に反対の立場で論陣を張りました。お蔭で「全GIDの敵」という、ありがたい称号もいただきました。ただ、本気で法案を潰そうとはしませんでした。当時の私のコネクションなら、本気で潰す気だったらメディアに働き掛けて、議論を喚起することはできたと思いますが、それはしませんでした。なぜなら、特例法で性別を変更することを熱望していた友人が何人もいたからです。かわいい後輩に「姐さん、お願いだから、今度だけは反対しないでください」と目の前で泣かれたら、人情として徹底抗戦はできないです。最終段階で、推進派の影のリーダーと秘密会談して、反対はするが妨害はしないということで「手打ち」しました。だからその後の反対集会は、まあ「プロレス」ですね。そうした事情を知らない推進派の人には、今でもずいぶん恨まれているようですが、それはまあ、仕方ないです。

④ 今までの動き(TG/GID/GDの歴史)で気になったこと
やはり、性同一性障害の「流行」でしょうか。あの「大流行」がなかったら、日本のトランスジェンダーはどんな状況になっていただろう?と思うことがあります。もっと自然な形でコミュニティが成熟していったかな、と。その一方で、あの「流行」はある意味、必然だったのかなとも思います。
2003年に「性別を越えて生きることは「病」なのか?」という論考を書いて以来、一貫して、性別を越えて生きることを病理とする性同一性障害概念を批判してきました。時にはほとんど孤立無援の長く苦しい闘いでしたが、最終的に、性同一性障害の消滅、性別移行の脱精神疾患化との決定という勝利の日を迎えられたことは、やはり感慨深かったです。

⑤ 原動力について
少しでも自分が楽になりたいから。自分が暮らしやすい社会になるように。はっきり言って他人のことはあまり考えていません。こういうこと言うと、また批判されるでしょうが。

⑥ 展望・今後の課題
ICD-11の脱精神疾患化の方向を、骨抜きにせずどう具体化していくか。いちばんのポイントは、GID特例法に代わる、国際的な人権概念にそった新たな性別移行法の制定だと思います。

⑦ 社会全体に伝えたいこと
私たちはなにも特別扱い・優遇を求めているわけではないわけで、トランスジェンダーの能力を公平に評価してほしいということ。トランスジェンダーの能力を生かした方が、日本社会にとっても得だということです。

⑧ 若い人に伝えたいこと
それぞれの人が、それぞれの立場で、自分ができることをする。よりよく生きる。その総体が社会を変えていく力になります。私がトランスジェンダーとして生きてきた25年間で、日本の社会はトランスジェンダーにとって、ずいぶん大きく良い方向に変わりました。次の25年はもっと良い方向になるでしょう。それを信じて、頑張ってください。

⑨ 一言メッセージ
倦まず弛まず、一歩ずつでも前へ。たとえ斃れる時がきても前のめりに。

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