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日本近代における男色から男性同性愛への変遷過程ーニューヨーク市立大学の院生さんへのレクチャーー [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

7月21日(火)
16時、明治大学(駿河台)「リバティタワー」1階のホールで、ニューヨーク市立大学の大学院生(博士課程)のBrian R. Davis氏(社会心理学専攻)と待ち合わせ。

神保町すずらん通りの「ドトール」で、質問に応える。
主に日本近代における男色から男性同性愛への変遷過程について。

第一に、男色は「同性愛」ではないこと。
大人の男と若衆の関係において、お互い相手を「同性」(同じカテゴリーの人)とは思っていないと思われる(拙稿「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」『講座 日本の思想 第5巻 身と心』岩波書店、2013年9月 参照)。
さらに、前近代の日本では「同性」という言葉はほとんど使われない。
そもそも「性」という言葉にsexもしくはgenderという意味がない。
「性」は「さが、たち」であり「本質・属性」の意味。
したがって「同性」という言葉があったとしても、それは「同じような属性を持っている人」(たとえば仁義に篤い人とか)という意味にしかならない。

第二に、戦後占領期(Occupied Japan)におけるアメリカの同性愛文化の移入とその影響について。
昭和戦前期の「同性愛」概念は、主にドイツの精神医学(病理概念)の輸入であり、西欧の影響が圧倒的に強い。
それが、戦後占領期に一気にアメリカの影響が強まる。
(他の文化事象についても同じことが言える。文化規範のフランスからアメリカへという転換)。
ただし、アメリカの同性愛文化の移入の実像は、資料的に難しい部分が多く、まだ十分に明らかになっていない。
今後の研究課題の1つ。

第三に、伝統的な男色文化はいつまで残存したか?
かなり難しい質問だが、年齢階梯制を特色とする男色文化がいちばん残ったのは学生文化であり、とりわけ戦前の旧制高校だった。
(たとえば北杜夫『ドクトルマンボウ青春記』などに垣間見られる)
なので、その世代までは、アメリカ化される以前の男色文化の名残を知っているはず。
その人たち(現在90歳以上)がセクシュアリティの「現場」にいたのはだいたい1990年代まで。
ということで、もうそういう人に話を聞くのは無理だろう。

結局、いつも講義の後に、うどんを食べたりして、くつろぐ時間に、2時間も真面目な話をしてしまい、疲労困憊。
でも、考えをまとめる、良い機会だった。


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コメント 6

AJ

思い出すに、郷中教育の精神が残る学校の寮生活に、その残り香があった気も・・
by AJ (2015-07-22 11:59) 

ルクレツィアの娘

加賀乙彦の小説の雰囲気は、伝統的なそれなんでしょうか?
by ルクレツィアの娘 (2015-07-22 17:39) 

三橋順子

AJさん、いらっしゃいま~せ。
ああ、あそこは「本場」の男子校ですからね。
残香はあったでしょう。
でも、ちょっと一般化できないかも。
by 三橋順子 (2015-07-22 19:22) 

三橋順子

ルクレツィアの娘さん、いらっしゃいま~せ。
加賀乙彦氏は1929年生まれですから、ぎりぎりの世代ですね。
ちなみに辻邦生は1925年、北杜夫は1927年生です。
ここらへんの世代の旧制高校出身者はまちがいなく「お稚児さん文化」知っています。
加賀乙彦の『帰らざる夏』は、陸軍幼年学校の生徒が主人公ですが、あそこは、伝統的な男色文化が学校文化に流入した典型です。
by 三橋順子 (2015-07-22 19:31) 

スクルー

姐さんコンバンワ。
大学院生って忙しい姐サンの約束に断りもいれずスッポカした奴でしょう。会う事ないのに(苦笑)。
どうせ植民地の執政官気どりのゲス野郎じゃないですか?
日本の「HENTAI」を嘲笑混じりで適当なエッセイに仕上げて本国の文化雑誌に投稿して小銭を稼いで名前も売るとか、そんなところでしょう。
博士課程といったって、所詮はバーガミニのレベルですよよ。
最近は、以前にも増して白人優位や人種憎悪のムードが高まっている気がします。
おまけに、東アジアではナチスとユダヤ人の対立みたいな感じだし。
国会見ていても、明日アジアで全面核戦争が起こっても不思議じゃないですよ。
国家中枢の人たちの間にも、大きな不安と動揺が広がっているんです。国立競技場一つ取ってもあの始末ですからね。
旦那はマスゾエ氏をスパイだと罵っていましたが、どうも何か恐ろしい事が迫っている気がします。スイマセン関係無いレスで・・・
by スクルー (2015-07-22 20:04) 

三橋順子

スクルーさん、いらっしゃいま~せ。
慣れない日本で連絡がうまくいかなかったようなので、仕切り直しすることにしました。
それに、紹介者がいろいろ世話になっている方なので。
私としては、少しでも良い博士論文を書いてもらえば、それでいいです。
by 三橋順子 (2015-07-25 19:21) 

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