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19500トン級新型護衛艦、「長門」命名を見送り [軍事]

7月29日(日)
19500トン級ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)の艦名有力候補だった「長門」を政治的配慮などで避けたのは、祖父が「長門」に乗っていた私としては、なんとも残念。
長門は、太平洋戦争開戦時、真珠湾攻撃で山本五十六連合艦隊司令長官が座乗した連合艦隊の旗艦であるだけでなく、帝国海軍の戦艦12隻中、唯一、太平洋戦争を生き抜き、稼働可能な状態で終戦を迎えた縁起の良い艦である。

帝国海軍の艦艇命名法は、基本的に以下の通りだった。
戦艦=旧国名
重巡洋艦=山の名(高雄、鳥海、妙高など、)
軽巡洋艦=川の名(長良、利根、神通など)
一等駆逐艦=気象・天象に関する名(雪風、時雨、秋月など)
二等駆逐艦=植物名
航空母艦=空を飛ぶ物(飛龍、蒼龍、瑞鶴、翔鶴、大鳳、鷹、隼鷹など)

太平洋戦争(1941~45年)で、帝国海軍が所有した戦艦は12隻で、この内、8隻(厳密に言えば7隻)が旧国名を艦名にしていた。
山城(京都府南部)、扶桑(日本の異称)、伊勢(三重県)、日向(宮崎県)、長門(山口県西部)、陸奥(東北地方太平洋側)、大和(奈良県)、武蔵(埼玉県、東京都のほとんど、神奈川県の一部)
戦艦でも、金剛、比叡、榛名、霧島の4隻はもともと巡洋戦艦だったので、山の名がついている。
旧国名が付く艦艇としては、戦艦として計画されながら、航空母艦に改造されたものとしてし、加賀(石川県)、信濃(長野県)がある。
また、艦名は付いていたが、完成しなかった未成艦として土佐(高知県)、計画のみに終わった未起工艦として紀伊(和歌山県)、尾張(愛知県西部)がある。
さらに、太平洋戦争以前の戦艦として、薩摩(鹿児島県西部)、安芸(広島県西部)、河内(大阪府の半分くらい)、摂津(大阪府の西部、兵庫県の東端部)が、装甲巡洋艦として出雲(島根県東部)が、防護巡洋艦として対馬(長崎県の島嶼部)が、ロシアからの鹵獲艦に日本の名前を付けたものとして壱岐(長崎県の島嶼部)、丹後(京都府北部)、相模(神奈川県中西部)、周防(山口県東部)、肥前(佐賀県、長崎県の一部)、石見(島根県西部)がある。

19500トン級の「前級」のDDHは「ひゅうが」と「いせ」で、これは帝国海軍の航空戦艦「伊勢」、「日向」の艦名であり、海上自衛隊が帝国海軍の艦名を意識しているのは明らかだ。
海上自衛隊の大型護衛艦は、長らく山の名を艦名にしていた。
これも、大型護衛艦≒重巡洋艦という見立てなのは明らか。
そうした意味でも、DDTに「ひゅうが」という旧国名を付けたのは、海上自衛隊としては異例であり、帝国海軍の伝統を意識していることを艦名で表したという点では画期的なことだった。

もし、自衛隊が大型護衛艦の艦名に旧国名を付ける方針に変えたのなら、まだまだ使っていない国名がたくさんある。
出羽、越後、佐渡、越中、越前、能登、常陸、下野、上野、下総、上総、安房、甲斐、伊豆、駿河、遠江、志摩、伊賀、美濃、近江、丹波、播磨、美作、但馬、因幡、隠岐、備前、備中、備後、淡路、讃岐、阿波、伊予、筑前、筑後、豊前、豊後、肥後、大隅
国の格(律令制の大・上・中・下国)からしたら、常陸、下総、上総、上野、越前、美濃、近江、播磨などは大国だし、この内、常陸、上総、上野は親王任国で格式も高く、申し分ないと思う。
ちなみに、帝国海軍では、大和、信濃のように海がない国名でも艦艇名に採用しているが、海上自衛隊が「海」にこだわるのなら、常陸、上総、越前などなら問題はないだろう。

あるいは、19500トン級新型護衛艦は艦首から艦尾まで平らな甲板(全通甲板)を持つ「ヘリコプター空母」なので、いっそ旧国名ではなく航空母艦並に「空を飛ぶ物」の名を付ける手もある。
真珠湾攻撃で大戦果をあげ、ミッドウェー海戦でも最後まで奮戦した「飛龍」などはどうだろうか。
それとも「飛龍」は本格的な航空母艦の復活まで取っておいて、19500トン級新型護衛艦は2隻が建造中なので、ペアでネイミングして「瑞鶴」「翔鶴」はどうだろうか。
でも、未確認情報では、内定している艦名は旧国名で平仮名3文字(いずも)だとか…。

【追記(8月6日)】
6日、横浜市磯子区の「ジャパン マリンユナイテッド磯子工場」で進水式。
艦名はやはり「いずも」だった。
全長約250m、最大幅約38m、写真で見るとあらためて大きさを感じる。
20130806-981454-1-L.jpg
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護衛艦:「長門」命名を見送り 旧海軍の象徴
長門.jpg
戦時中の戦艦「長門」
DDH.jpg
新型ヘリコプター搭載護衛艦の完成図=海上自衛隊提供

命名・進水式を来月行う海上自衛隊史上最大の新型護衛艦に関し、旧海軍を象徴する戦艦「長門(ながと)」の名を受け継がせる案が浮上していたことが分かった。護衛艦には旧海軍の艦艇名が付けられるケースが多いが「時代錯誤では」と懸念する声もある。長門は真珠湾攻撃で重要な役割を果たした連合艦隊旗艦として著名で国内外で波紋を呼ぶ可能性があることから防衛省内でも異論があり67年ぶりの「復活」は見送られた。【鈴木泰広】

新型艦は艦首から艦尾まで平らな甲板を持つ「空母型」のヘリコプター搭載護衛艦。既存のヘリ搭載護衛艦「ひゅうが」より全長は51メートル長い248メートル、幅は5メートル長い38メートルで、基準排水量は1.4倍の1万9500トン。全長は世界最大・最強と称された戦艦「大和」の263メートルに迫りヘリ9機を同時運用できる。他艦への給油や医療の設備もあり離島奪還作戦などの中枢と目されるほか災害救援の拠点も担う。

海自の艦艇名は月や雨雪などの天象・気象や山岳河川地名などから命名しているがイージス艦「こんごう」のように旧海軍の艦艇名に使われたものも多い。既存のヘリ搭載型護衛艦「ひゅうが」と「いせ」は律令制に基づく旧国名にちなんだ航空戦艦の名を継いでいる。今回も部隊のアンケート結果や語感などを踏まえて選んだ案を防衛相が許可する形で命名するが大臣に提出する前の段階で「長門」が有力な数候補の中に残ったという。

長門は山口県西部の旧国名。連合艦隊旗艦を最も長く務め1941(昭和16)年の太平洋戦争開戦時は山本五十六(いそろく)司令長官が乗艦して真珠湾攻撃を指揮した。翌年、大和に旗艦を譲ったが、大和や姉妹艦「武蔵」の存在は極秘だったこともあり、国民にとって長門と陸奥が海軍のシンボル的存在だった。戦後も大和や武蔵は「永久欠番的な存在」として、艦艇名に使われてこなかった。

海自は命名の選考過程を明らかにしていないが、関係者によると、艦の規模などを踏まえ、海自内には最近まで長門を推す声も強かった。ただ、「長門」は、国内外から右傾化を警戒されている安倍晋三首相の地元でもある。政府が同盟強化を図る米国に加え、中国などを無用に刺激するのは避けたいとの判断も働き、最終的に見送りとなった。別の旧国名になる見込み。

『毎日新聞』2013年07月27日 15時20分(最終更新 07月27日 17時45分)
http://mainichi.jp/select/news/20130727k0000e040221000c.html
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真樹猫ちゃん

ニャニャ、お館様のお好きなる軍艦といえば「幕府御軍艦開陽」とか、謎の沈没事故の巡洋艦松島かと思っていみゃした。
by 真樹猫ちゃん (2013-08-03 13:47) 

三橋順子

真樹大姉様、いらっしゃいま~せ。
謎の沈没をした松島には、怪しい猫の姿があったという伝説、海軍には長く伝わっておりました。もしや、大姉様の手下猫・・・?

by 三橋順子 (2013-08-04 03:02) 

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