ヒトの精子の減少が加速、70年代から6割減 [現代の性(一般)]
11月29日(火)
「(1回の射精に含まれる)精子の総数は70年代に比べて62%減少」
「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです」
「このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなる」
かなり深刻な事態だと思うが、なぜかマス・メディアは関心がない。
確定的ではないが、原因はほぼ食品だと思う。
レイチェル・カーソン『沈黙の春』(1962年、邦訳は1964年)以来、指摘されてきた化学物質(主に農薬)が食品として体内に入り濃縮されて生殖細胞に悪影響を与えるという説をことさら軽視してきた結果。
------------------------------------
ヒトの精子の減少が加速、70年代から6割減、打つ手見えず
「このままではほとんどの男性が不妊状態に」と論文の著者は懸念
今から5年前、男性の精子の数が激減しているという研究結果が出され、人類滅亡の危機かと騒がれた。そして今回、新たに発表された研究によって、精子の数はさらに減り、しかもそのスピードが速まっていることが明らかになった。
5年前の研究は、2017年7月25日付けで学術誌「Human Reproduction Update」に発表された。それによると、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子を分析したところ、1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少していたという。その後、同じ研究者が率いるチームが2014年から2019年までに公開された精子サンプルの研究結果を分析し、これを以前のデータに付け加えた。新たなメタ分析は、世界的な傾向を知るため、中南米、アフリカ、アジアを含め1万4233人分のサンプルを使用した。
すると、精子の総数は70年代に比べて62%減少していたことが判明。そればかりか、1年ごとの減少率は2000年以降2倍になっていた。この結果は、11月15日付けで同じく「Human Reproduction Update」に掲載されている。
「数の減少速度は緩やかになるどころか、激しい落ち込み方です。減り方の程度としては全体的にほぼ同じと言えますが、近年に注目すれば加速していることがわかります」と、米ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学の生殖・環境疫学者で、論文の共著者でもあるシャナ・スワン氏はコメントする。
「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです。このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなるか、健康面で他の問題が現れてしまうのではないかと懸念しています」と、論文の筆頭著者でイスラエル、ヘブライ大学ハダッサー・ブラウン公衆衛生学部の医学疫学者であるハガイ・レビーン氏は話す。
増える不妊症、原因は男女で同じ割合
不妊症は主に女性の問題だと思われがちだが、米アイオワ大学先端生殖医療センターの生殖生理学者で体外受精・男性病学研究室長のエイミー・E・T・スパークス氏によると、男性が原因の不妊は女性が原因の不妊とほぼ同じ割合で存在するという。「女性の方が男性よりも先に不妊症の相談に行くことが多いため、誤解が生まれたのでしょう」と話す。医学界では、不妊症全体のうち男性不妊が3分の1、女性不妊が3分の1を占め、残りの3分の1は男性側の原因と女性側の原因が組み合わさったものであるというのが共通の認識だ。
しかし最近のデータは、「精子の数が減っている男性の割合が急増していることを示しています。そうなると、パートナーを妊娠させられなくなってしまうかもしれません」と、デンマーク、ロスキレ大学とコペンハーゲン大学病院の分子毒性学者のデビッド・M・クリステンセン氏は指摘する。「これは家族の中だけでなく、社会全体にとっての問題です。イタリアや日本など、多くの国では既に人口が縮小し始めています」。なお、クリステンセン氏は今回の研究には関わっていない。
「ナショナル ジオグラフィック日本版」2022年11月18日
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/111700532
「(1回の射精に含まれる)精子の総数は70年代に比べて62%減少」
「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです」
「このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなる」
かなり深刻な事態だと思うが、なぜかマス・メディアは関心がない。
確定的ではないが、原因はほぼ食品だと思う。
レイチェル・カーソン『沈黙の春』(1962年、邦訳は1964年)以来、指摘されてきた化学物質(主に農薬)が食品として体内に入り濃縮されて生殖細胞に悪影響を与えるという説をことさら軽視してきた結果。
------------------------------------
ヒトの精子の減少が加速、70年代から6割減、打つ手見えず
「このままではほとんどの男性が不妊状態に」と論文の著者は懸念
今から5年前、男性の精子の数が激減しているという研究結果が出され、人類滅亡の危機かと騒がれた。そして今回、新たに発表された研究によって、精子の数はさらに減り、しかもそのスピードが速まっていることが明らかになった。
5年前の研究は、2017年7月25日付けで学術誌「Human Reproduction Update」に発表された。それによると、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの男性の精子を分析したところ、1回の射精に含まれる精子の数が1973年から2011年までに50%以上減少していたという。その後、同じ研究者が率いるチームが2014年から2019年までに公開された精子サンプルの研究結果を分析し、これを以前のデータに付け加えた。新たなメタ分析は、世界的な傾向を知るため、中南米、アフリカ、アジアを含め1万4233人分のサンプルを使用した。
すると、精子の総数は70年代に比べて62%減少していたことが判明。そればかりか、1年ごとの減少率は2000年以降2倍になっていた。この結果は、11月15日付けで同じく「Human Reproduction Update」に掲載されている。
「数の減少速度は緩やかになるどころか、激しい落ち込み方です。減り方の程度としては全体的にほぼ同じと言えますが、近年に注目すれば加速していることがわかります」と、米ニューヨーク市にあるマウントサイナイ医科大学の生殖・環境疫学者で、論文の共著者でもあるシャナ・スワン氏はコメントする。
「ある時点で下げ止まるのではないかと期待していたのですが、その反対のことが起こっているようです。このままではほとんどの男性が不妊状態になるところまでいって後戻りできなくなるか、健康面で他の問題が現れてしまうのではないかと懸念しています」と、論文の筆頭著者でイスラエル、ヘブライ大学ハダッサー・ブラウン公衆衛生学部の医学疫学者であるハガイ・レビーン氏は話す。
増える不妊症、原因は男女で同じ割合
不妊症は主に女性の問題だと思われがちだが、米アイオワ大学先端生殖医療センターの生殖生理学者で体外受精・男性病学研究室長のエイミー・E・T・スパークス氏によると、男性が原因の不妊は女性が原因の不妊とほぼ同じ割合で存在するという。「女性の方が男性よりも先に不妊症の相談に行くことが多いため、誤解が生まれたのでしょう」と話す。医学界では、不妊症全体のうち男性不妊が3分の1、女性不妊が3分の1を占め、残りの3分の1は男性側の原因と女性側の原因が組み合わさったものであるというのが共通の認識だ。
しかし最近のデータは、「精子の数が減っている男性の割合が急増していることを示しています。そうなると、パートナーを妊娠させられなくなってしまうかもしれません」と、デンマーク、ロスキレ大学とコペンハーゲン大学病院の分子毒性学者のデビッド・M・クリステンセン氏は指摘する。「これは家族の中だけでなく、社会全体にとっての問題です。イタリアや日本など、多くの国では既に人口が縮小し始めています」。なお、クリステンセン氏は今回の研究には関わっていない。
「ナショナル ジオグラフィック日本版」2022年11月18日
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/22/111700532
子宮移植が現実化へ [現代の性(一般)]
11月25日(金)
いよいよ子宮移植が現実化か・・・。
『毎日新聞』2022/11/24 19:31
「子宮移植、慶応大が計画申請 承認されれば国内初の実施へ」
https://mainichi.jp/articles/20221122/k00/00m/040/086000c?fbclid=IwAR1YYmlaSO09Ik6jNiBA-92ztsxaUPdHrI_VvLuAU2-flTjFiLYl2Qp5Xmo
私は、第3者がドナーになる子宮移植には、倫理的に、はっきり反対の立場だが、今回は、親族の女性がドナーということで、倫理上の問題は回避されたということか?
それでも、いろいろ疑問が残る。
どうも思想的な背景に「子宮の有効利用」みたいな意図があるように思う。
それを進めていくと、必然的に「第3者からの提供の可」になっていくし、その脱法化の結果、「子宮の売買」に至る危険性が見える。
2018年の「第20回GID(性同一性障害)学会」で、菅沼信彦先生(京都大学医学部教授:当時)の子宮移植についての講演を聴いたときに、「(医療資源としての)子宮の有効利用」みたいな発想を感じた。
そもそも、なぜGID学会に子宮移植の話をしにくるのか?ということ。
もっと、はっきり言えば、何を欲しがっているのか?ということ。
それは、その後、岡山大学病院と協力して、FtMの摘出子宮の提供意思についてのアンケート調査が実施されたことから明らか。
「GID特例法」で、子宮摘出手術を性別変更の要件にしておきながら(法律による誘導)、その子宮を「医療資源」として利用しようとする発想は、私は医療倫理に乖(もと)ると考えるので、はっきり反対した。
医療技術的には可能なことでも、やはりやってはいけないことはあると思う。
私の医療倫理は、亡父から教えられたもので、時代遅れなのかもしれないが、そこらへんは頑固に言い続けようと思う。
いよいよ子宮移植が現実化か・・・。
『毎日新聞』2022/11/24 19:31
「子宮移植、慶応大が計画申請 承認されれば国内初の実施へ」
https://mainichi.jp/articles/20221122/k00/00m/040/086000c?fbclid=IwAR1YYmlaSO09Ik6jNiBA-92ztsxaUPdHrI_VvLuAU2-flTjFiLYl2Qp5Xmo
私は、第3者がドナーになる子宮移植には、倫理的に、はっきり反対の立場だが、今回は、親族の女性がドナーということで、倫理上の問題は回避されたということか?
それでも、いろいろ疑問が残る。
どうも思想的な背景に「子宮の有効利用」みたいな意図があるように思う。
それを進めていくと、必然的に「第3者からの提供の可」になっていくし、その脱法化の結果、「子宮の売買」に至る危険性が見える。
2018年の「第20回GID(性同一性障害)学会」で、菅沼信彦先生(京都大学医学部教授:当時)の子宮移植についての講演を聴いたときに、「(医療資源としての)子宮の有効利用」みたいな発想を感じた。
そもそも、なぜGID学会に子宮移植の話をしにくるのか?ということ。
もっと、はっきり言えば、何を欲しがっているのか?ということ。
それは、その後、岡山大学病院と協力して、FtMの摘出子宮の提供意思についてのアンケート調査が実施されたことから明らか。
「GID特例法」で、子宮摘出手術を性別変更の要件にしておきながら(法律による誘導)、その子宮を「医療資源」として利用しようとする発想は、私は医療倫理に乖(もと)ると考えるので、はっきり反対した。
医療技術的には可能なことでも、やはりやってはいけないことはあると思う。
私の医療倫理は、亡父から教えられたもので、時代遅れなのかもしれないが、そこらへんは頑固に言い続けようと思う。
買売春についての基本姿勢 [現代の性(一般)]
11月16日(水)
買売春についての基本姿勢。
① 人身売買をともなう強制売春・組織売春は、絶対に容認できないこと。
② その上で「売る売らないは私が決める」が原則であること。
③ さらにその上で、セックスワーカーのリスク(暴力・性病・望まない妊娠)の軽減が現実的な最重要課題であること。
④ それらの基本認識の上で、可能な限り、セックスワーク当事者の立場に寄り添って発言する。
買売春についての基本姿勢。
① 人身売買をともなう強制売春・組織売春は、絶対に容認できないこと。
② その上で「売る売らないは私が決める」が原則であること。
③ さらにその上で、セックスワーカーのリスク(暴力・性病・望まない妊娠)の軽減が現実的な最重要課題であること。
④ それらの基本認識の上で、可能な限り、セックスワーク当事者の立場に寄り添って発言する。
「LGBTI」が「LGBT」になったのか? [現代の性(一般)]
10月13日(木)
そもそもの話、欧米では「LGBTI」が標準だった言葉が、2010年代に日本に入ってきたとき、どういう事情で「I」が落ちて「LGBT」になったのか?
誰も関心を持たないし、「活動家」の中には「LGBTI」が標準だったことを知らない人もけっこういる。
ここにも日本の「LGBT」運動の特異性というか、「闇」がある。
1990年代後半~2000年代のセクシュアルマイノリティの活動では、「I」の活動家とは連帯していたのに。
2010年代以降の「LGBT」運動の成果として、同性愛やトランスジェンダーへの社会認識は大きく改善された一方で、そこから外れた「I」(性分化疾患)への社会認識は停滞し続けている。
それはやはりまずいと思う。
「I」が外れた事情の1つに、「おかま(GやTw)のような変態といっしょにするな!」という、(一部の)「I」当事者の強い主張があったことは、事実である。
しかし、そうした事情を知っている世代としては、また罵声を浴びるのを承知の上で、もう少し連帯できないものか、と思う。
誤解がないように付け加えると、日本で「I」が外れた主な事情には「LGBT」側の無関心・無理解、DSDの知識の決定的な欠落(医学的なものへの忌避観)、そして人権より経済の商業主義があったと思う。
【補記】あるNPO代表の方から、00年代に「I」を付けていたら、「I」の団体から「LGBTと同列にしないで欲しい」と言われたとのこと。
また自治体の人権指針の「性的マイノリティ」に「I」が入っていたが、「I」の団体が外すよう意見書を出が出され「I」を削ったという経緯を教えていただいた。
私が「I」の団体代表を名乗る人から、大学の講義で「I」に言及しないよう、強い調子の(かなり恫喝的な)メールをもらったのは、明治大学で講義を始めた後なので、2012~13年頃だと思う。
おそらく同じ団体だったのではないだろうか?
そもそもの話、欧米では「LGBTI」が標準だった言葉が、2010年代に日本に入ってきたとき、どういう事情で「I」が落ちて「LGBT」になったのか?
誰も関心を持たないし、「活動家」の中には「LGBTI」が標準だったことを知らない人もけっこういる。
ここにも日本の「LGBT」運動の特異性というか、「闇」がある。
1990年代後半~2000年代のセクシュアルマイノリティの活動では、「I」の活動家とは連帯していたのに。
2010年代以降の「LGBT」運動の成果として、同性愛やトランスジェンダーへの社会認識は大きく改善された一方で、そこから外れた「I」(性分化疾患)への社会認識は停滞し続けている。
それはやはりまずいと思う。
「I」が外れた事情の1つに、「おかま(GやTw)のような変態といっしょにするな!」という、(一部の)「I」当事者の強い主張があったことは、事実である。
しかし、そうした事情を知っている世代としては、また罵声を浴びるのを承知の上で、もう少し連帯できないものか、と思う。
誤解がないように付け加えると、日本で「I」が外れた主な事情には「LGBT」側の無関心・無理解、DSDの知識の決定的な欠落(医学的なものへの忌避観)、そして人権より経済の商業主義があったと思う。
【補記】あるNPO代表の方から、00年代に「I」を付けていたら、「I」の団体から「LGBTと同列にしないで欲しい」と言われたとのこと。
また自治体の人権指針の「性的マイノリティ」に「I」が入っていたが、「I」の団体が外すよう意見書を出が出され「I」を削ったという経緯を教えていただいた。
私が「I」の団体代表を名乗る人から、大学の講義で「I」に言及しないよう、強い調子の(かなり恫喝的な)メールをもらったのは、明治大学で講義を始めた後なので、2012~13年頃だと思う。
おそらく同じ団体だったのではないだろうか?
性分化疾患(DSD)の知識を更新 [現代の性(一般)]
10月12日(水)
慶應義塾大学「からだセミナー」でご一緒した長谷川奉延(とものぶ)先生(慶應義塾大学病院副院長・性分化疾患センター長、医学部教授」小児科)のレクチャー、とても勉強になった。
まず、2019年に慶應義塾大学病院(信濃町)に「性分化疾患センター」が開設されたこと。
日本唯一で、これによって性分化疾患(DSD)の症例が全国から集まり、情報が集約されて研究が進展するだろう。
次に、Inter-sex(半陰陽・間性) → Disorders of Sex Development(性分化疾患) → Differences of Sex Development という用語の変遷。
私の知識は、 Disorders of Sex Developmentのところで止まっていたので、更新。
ただ、 Differences of Sex Development はどう日本語に置き換えるのだろう?
DSDの比率については、信頼できる統計的データはない、とされた上で、「数100人に1人」という数字を示唆された。
私は今まで講義で「2000人に1人くらい」と言っていたが、もっと多い可能性が高い。
これも知識を更新しないといけない。
紹介された症例で、「46,XX/46,XY (25:5)」という記述が出てきた。
性染色体が46,XXと46,XYのモザイクという症例だが 「(25:5)」ってなんだろう?
性染色体の検査の時、30個の核細胞を調べるとのこと。
その内25個が46,XXで、5個が46,XYという意。
そういう書き方をするのか・・・、知らなかった。
それにしても、XX:XYが5:1でも、精巣が形成されるのも驚き。
もう1つの症例は、卵精巣性性分化疾患。
大昔は「真性半陰陽」と言ったタイプ。
片側が精巣で、片側は卵巣。
子宮、卵管はあり、性染色体はXX。
こうした症例をうかがうと、あらためて性分化の不思議と複雑さを思う。
だから、身体的な性もまた多様ということ。
慶應義塾大学「からだセミナー」でご一緒した長谷川奉延(とものぶ)先生(慶應義塾大学病院副院長・性分化疾患センター長、医学部教授」小児科)のレクチャー、とても勉強になった。
まず、2019年に慶應義塾大学病院(信濃町)に「性分化疾患センター」が開設されたこと。
日本唯一で、これによって性分化疾患(DSD)の症例が全国から集まり、情報が集約されて研究が進展するだろう。
次に、Inter-sex(半陰陽・間性) → Disorders of Sex Development(性分化疾患) → Differences of Sex Development という用語の変遷。
私の知識は、 Disorders of Sex Developmentのところで止まっていたので、更新。
ただ、 Differences of Sex Development はどう日本語に置き換えるのだろう?
DSDの比率については、信頼できる統計的データはない、とされた上で、「数100人に1人」という数字を示唆された。
私は今まで講義で「2000人に1人くらい」と言っていたが、もっと多い可能性が高い。
これも知識を更新しないといけない。
紹介された症例で、「46,XX/46,XY (25:5)」という記述が出てきた。
性染色体が46,XXと46,XYのモザイクという症例だが 「(25:5)」ってなんだろう?
性染色体の検査の時、30個の核細胞を調べるとのこと。
その内25個が46,XXで、5個が46,XYという意。
そういう書き方をするのか・・・、知らなかった。
それにしても、XX:XYが5:1でも、精巣が形成されるのも驚き。
もう1つの症例は、卵精巣性性分化疾患。
大昔は「真性半陰陽」と言ったタイプ。
片側が精巣で、片側は卵巣。
子宮、卵管はあり、性染色体はXX。
こうした症例をうかがうと、あらためて性分化の不思議と複雑さを思う。
だから、身体的な性もまた多様ということ。
岩川ありさ『物語とトラウマ クィア・フェミニズム批評の可能性』 [現代の性(一般)]
新しい言葉2つ [現代の性(一般)]
8月31日(水)
新しい言葉2つ。
ジェンダー・クリティカル・フェミニズム(GCF)
今現れつつある世界的な政治的反動の潮流に合致して、勢いを得ている。
アカデミアにおけるジェンダー研究へのバックラッシュ。
市民社会におけるトランスの人々への攻撃の高まりと密接に関連。
反ジェンダー運動(Anti-gender movement)
統一教会や右派政治のが主張するミソジニー運動。トランス差別の「フェミニズム」とも連携。
新しい言葉2つ。
ジェンダー・クリティカル・フェミニズム(GCF)
今現れつつある世界的な政治的反動の潮流に合致して、勢いを得ている。
アカデミアにおけるジェンダー研究へのバックラッシュ。
市民社会におけるトランスの人々への攻撃の高まりと密接に関連。
反ジェンダー運動(Anti-gender movement)
統一教会や右派政治のが主張するミソジニー運動。トランス差別の「フェミニズム」とも連携。
「チー牛」立て看ってなに? [現代の性(一般)]
7月30日(土)
Twitterで話題になっている東大(駒場キャンパス)の立て看(通称:「チー牛」立て看)ってこれか・・・。
そもそも「チー牛」って何?と思ったら、「チーズ牛丼を注文していそうな人」ということらしい。
それでも、まだ「チーズ牛丼を注文していそうな人」が「弱者男性」なのか、ピンとこない。
(チーズ牛丼って、見たことも食べたこともない)
講義では「すべての人に子孫を残す権利(生殖権)がある」「結婚したい人が結婚できる社会が望ましい」と言っている。
同時に20世紀に達成された「国民男子皆婚社会」が、21世紀になって完全に崩壊した現実もグラフを使って説明している。
さらに、「国民男子皆婚社会」(国民男子の98%程度が生涯に1度は結婚できる社会)というのは、日本の歴史で、20世紀にだけ出現した、極めて特異な社会状況であることも解説している。
当然のことながら前近代は男子皆婚社会ではない。
Twitterで話題になっている東大(駒場キャンパス)の立て看(通称:「チー牛」立て看)ってこれか・・・。
そもそも「チー牛」って何?と思ったら、「チーズ牛丼を注文していそうな人」ということらしい。
それでも、まだ「チーズ牛丼を注文していそうな人」が「弱者男性」なのか、ピンとこない。
(チーズ牛丼って、見たことも食べたこともない)
講義では「すべての人に子孫を残す権利(生殖権)がある」「結婚したい人が結婚できる社会が望ましい」と言っている。
同時に20世紀に達成された「国民男子皆婚社会」が、21世紀になって完全に崩壊した現実もグラフを使って説明している。
さらに、「国民男子皆婚社会」(国民男子の98%程度が生涯に1度は結婚できる社会)というのは、日本の歴史で、20世紀にだけ出現した、極めて特異な社会状況であることも解説している。
当然のことながら前近代は男子皆婚社会ではない。
職業に貴賤はないはず [現代の性(一般)]
6月30日(木)
法律に基づかず、あやふやな「性的道義観念」に依拠した論外の不当判決。
職業に貴賤はないはず。
--------------------------------------
性風俗事業者はコロナ給付金の対象外 東京地裁「合理的な区別」
性風俗事業者が新型コロナ対策の持続化給付金などで支給対象外とされたのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反するとして、関西地方のデリバリーヘルス(無店舗の派遣型風俗店)運営会社が、国などに未払いの給付金など計約450万円を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。岡田幸人裁判長は「合理的な区別で違憲とは言えない」と述べ、請求を退けた。
性風俗業の除外の是非を問う訴訟の判決は初めてとみられる。原告は判決を不服として即日控訴した。
判決は、まず風俗営業法が飲食店やパチンコ店は許可制、性風俗業は届け出制にしている違いについて検討。性風俗業は「大多数の国民が共有する性的道義観念に反し、国が許可という形で公的に認知するのは相当ではない」という考えに基づく区別で、「合理的な理由がある」と指摘した。
その上でコロナ給付金について「限られた財源の国庫からの支出で、性風俗業の事業継続を下支えすることは相当ではない」と判断。他の公的支援との整合性や、納税者である国民の理解を得られるかなども考慮し、性風俗業の除外は「国の裁量の範囲を超えない」と結論づけた。
「事業の特徴に着目して対象外」
原告は「反社会的勢力との関係はなく、適法に事業を営んで税金も払ってきた」と訴えていた。しかし判決は、そうした場合も「事業の特徴に着目して対象外にすることはあり得る」と判断した。
一方で判決は「性風俗事業者や従業員が個人として尊重され、平等な取り扱いを受けるべきことは当然で、職業に基づく差別が許容されるわけではない」とも言及した。
国が除外したのは、自治体などの公共法人、政治団体、宗教団体と、風営法上の「性風俗関連特殊営業」。デリヘル、ソープランド、ラブホテルなどが該当する。(田中恭太)
『朝日新聞』2022年6月30日 19時39分
https://www.asahi.com/articles/ASQ6Y748XQ6TUTIL002.html
法律に基づかず、あやふやな「性的道義観念」に依拠した論外の不当判決。
職業に貴賤はないはず。
--------------------------------------
性風俗事業者はコロナ給付金の対象外 東京地裁「合理的な区別」
性風俗事業者が新型コロナ対策の持続化給付金などで支給対象外とされたのは、憲法が保障する「法の下の平等」に反するとして、関西地方のデリバリーヘルス(無店舗の派遣型風俗店)運営会社が、国などに未払いの給付金など計約450万円を求めた訴訟の判決が30日、東京地裁であった。岡田幸人裁判長は「合理的な区別で違憲とは言えない」と述べ、請求を退けた。
性風俗業の除外の是非を問う訴訟の判決は初めてとみられる。原告は判決を不服として即日控訴した。
判決は、まず風俗営業法が飲食店やパチンコ店は許可制、性風俗業は届け出制にしている違いについて検討。性風俗業は「大多数の国民が共有する性的道義観念に反し、国が許可という形で公的に認知するのは相当ではない」という考えに基づく区別で、「合理的な理由がある」と指摘した。
その上でコロナ給付金について「限られた財源の国庫からの支出で、性風俗業の事業継続を下支えすることは相当ではない」と判断。他の公的支援との整合性や、納税者である国民の理解を得られるかなども考慮し、性風俗業の除外は「国の裁量の範囲を超えない」と結論づけた。
「事業の特徴に着目して対象外」
原告は「反社会的勢力との関係はなく、適法に事業を営んで税金も払ってきた」と訴えていた。しかし判決は、そうした場合も「事業の特徴に着目して対象外にすることはあり得る」と判断した。
一方で判決は「性風俗事業者や従業員が個人として尊重され、平等な取り扱いを受けるべきことは当然で、職業に基づく差別が許容されるわけではない」とも言及した。
国が除外したのは、自治体などの公共法人、政治団体、宗教団体と、風営法上の「性風俗関連特殊営業」。デリヘル、ソープランド、ラブホテルなどが該当する。(田中恭太)
『朝日新聞』2022年6月30日 19時39分
https://www.asahi.com/articles/ASQ6Y748XQ6TUTIL002.html
米連邦最高裁、人工中絶権の合憲性を覆す [現代の性(一般)]
6月25日(土)
予想通り、アメリカ連邦最高裁が人工中絶権の合憲性を覆す決定。
49年、時代が逆行。
とはいえ、アメリカはピューリタンが作った国、そもそも、アメリカ(の半分)は、人権的に駄目な国なのだ
次は・・・、ということ。
>賛成意見を書いたトーマス判事は、中絶権の見直しに加えて今後は、避妊具の使用や同性愛行為、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直すべきだと書き添えた。
---------------------------------------
米連邦最高裁、人工中絶権の合憲性認めず 重要判決を半世紀ぶりに覆す
米連邦最高裁は24日、アメリカで長年、女性の人工妊娠中絶権は合憲だとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示した。この判決を受けて、アメリカでは女性の中絶権が合衆国憲法で保障されなくなる。
最高裁(判事9人)は、妊娠15週以降の中絶を禁止するミシシッピー州法は、「ロー対ウェイド」判決などに照らして違憲だとする同州のクリニックの訴えについて、6対3で違憲ではないと判断した。下級審では、違憲との判決が出ていた。
「我々は、憲法が中絶する権利を付与しないと考える(中略)そして、中絶規制する権限は国民と、国民が選んだ代表に戻さなくてはならない」と、判決文には書かれている。
今回の判決は、約半世紀前に連邦最高裁が定めた判例を、同じ最高裁が自ら覆したことになり、きわめて異例。今後、アメリカ国内で激しい論争と政治対立を引き起こすとみられている。
今回の判決は、保守派判事6人とリベラル派判事3人の思想的な違いがそのまま反映されたものとなった。判事9人のうち、保守派のサミュエル・アリート、クラレンス・トーマス、ニース・ゴーサッチ、ブレット・キャヴァノー、エイミー・コーニー・バレット各判事は、明確に「ロー対ウェイド」判決を覆す判断に賛成した。このうち、ゴーサッチ、キャヴァノー、コーニー・バレット各氏は、ドナルド・トランプ前大統領に指名され就任した保守派。
穏健派とされるジョン・ロバーツ最高裁長官は、別の意見を書き、ミシシッピー州の中絶禁止は支持するものの、それよりさらに踏み込んだ判断には反対したと述べた。
対して、反対意見を書いたリベラル派は、スティーヴン・ブライヤー、ソニア・ソトマヨール、エレーナ・ケイガン各判事。3人は、「この法廷のために悲しみ、さらにそれ以上に、憲法による基本的な保護を本日失った何百万人ものアメリカの女性のために悲しむ」と書いた。
他方、賛成意見を書いたトーマス判事は、中絶権の見直しに加えて今後は、避妊や同性愛行為の自由、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直すべきだと書き添えた。
今回の判決をめぐっては、米政治ニュースサイト「ポリティコが今年5月に保守派判事の意見書草稿を入手して報じていた。その中で、筆者のアリート判事は「ロー対ウェイド」判決について、「はなはだしく間違っている」と書いていた。報道を受けて、ジョン・ロバーツ最高裁長官は文書が本物だと認めていた。
アメリカでは、1973年の「ロー対ウェイド」事件に対する最高裁判決が、女性の人工中絶権を認める歴史的な判例として約半世紀にわたり維持されてきた。そのため、中絶に反対する勢力と、女性の選択権を堅持しようとする勢力が長年、この判決をめぐり争ってきた。
「ロー対ウェイド」事件について当時の最高裁は、賛成7、反対2で、胎児が子宮外でも生きられるようになるまでは女性に中絶の権利があると認めた。これは通常、妊娠22~24週目に相当する。これを受けてアメリカでは約半世紀にわたり、妊娠初期の3カ月間は中絶の権利が全面的に認められてきた。妊娠中期の中絶には一定の制限がかけられ、妊娠後期の中絶は禁止されてきた。
しかし、最近では一部の州が独自に、中絶を制限もしくは禁止する州法を成立させていた。
基本的権利を最高裁が=大統領
ジョー・バイデン米大統領はこの日の最高裁判決を受けて、「最高裁にとって、そしてこの国にとって悲しい日だ」と述べ、最高裁は「多くの国民にとってあまりに基本的な憲法上の権利」を「制限するのではなく、あっさり奪い取った」と批判した。また、判決は「極端な思想」が具体化したものだとも述べた。
「呆然としてしまう」とバイデン氏はホワイトハウスで報道陣に述べ、「近親相姦によってできた子供を、女性がずっとおなかで育てなくてはならないと想像してみるといい。これは残酷なことだ」と批判した。
バイデン大統領は報道陣を前に、中絶が制限されている州の女性が、中絶を認める他の州へ移動する「その基本的な権利を、私の政権は守る」と述べ、女性が移動する権利に州政府が介入することは認めないと話した。
大統領はさらに、中絶権をめぐる闘いは「終わっていない」として、「有権者は意見を表明する必要がある」と述べた。今年11月には議会中間選挙や各州政府の選挙があるのを念頭に、「今年の秋、ローが投票の対象になる。個人の自由が投票の対象になる。プライバシーの権利、自由と平等の権利、これがどれも、投票の対象になる」と、大統領は強調した。
判決の影響は
「ロー対ウェイド」判例が認めた憲法上の保障を最高裁自らが否定したことで、アメリカの各州はそれぞれ独自の州法で中絶を禁止できるようになる。半数以上の州が新しく、規制を強化したり、禁止することになるとみられている。
13の州ではすでに、連邦最高裁が「ロー対ウェイド」判決を覆せば自動的に中絶を禁止する、いわゆるトリガー法が成立していた。このうち、ケンタッキー、ルイジアナ、アーカンソー、サウスダコタ、ミズーリ、オクラホマ、アラバマの各州では、最高裁判決を受けて中絶禁止法が施行された。ほかの多くの州でもこうした法律が成立するとみられる。
これを受けて、アーカンソー州やルイジアナ州などで中絶手術を提供していた、いわゆる「中絶クリニック」が診療を中止し始めた。
アメリカで女性に中絶手術を提供してきた医療団体「プランド・ペアレントフッド」の調査によると、妊娠可能年齢の女性約3600万人が、今回の最高裁判決によって、中絶手術を受けられなくなるという。
中絶に関する世論が割れている、ペンシルヴェニア、ミシガン、ウィスコンシンなどの州では、中絶の合法性が選挙ごとに争われる可能性が出ている。他の州では、中絶を認める州に個人が移動して中絶手術を受けたり、郵便で中絶薬を取り寄せたりすることの合法性などが、個別に争われる可能性がある。
民主党知事は中絶権を州法に
中絶をただちに禁止しようとする各州とは逆に、カリフォルニア、ニューメキシコ、ミシガン各州などでは与党・民主党所属の州知事が、「ロー対ウェイド」判決が覆された場合に備えて、人工中絶権を州の憲法で保障する方針を発表している。
ロイター通信によると、バイデン政権(民主党)のカマラ・ハリス副大統領は23日、民主党が州政府を握る7つの州の州司法長官と協議し、中絶権を守る方法について話し合っている。
歓迎と悲嘆と
主張が最高裁に認められた形になったミシシッピー州のテイト・リーヴス知事は、判決をただちに歓迎し、同州が「この国の歴史における最大の不正義のひとつを克服するため、国の先頭に立った」と声明を発表した。
「この決定は直接、より多くの心臓が脈を打ち、より多くのベビーカーが押され、より多くの成績表が手渡され、より多くのリトルリーグの試合が開かれ、より多くの良い人生が送られることになる。喜ばしい日だ!」と知事は書いた。
長年にわたり「ロー対ウェイド」判決を批判してきた保守派のマイク・ペンス前副大統領は、判決が「アメリカの人たちに新しい始まりを与えた」と歓迎した。
「生きるための2度目のチャンスを与えられた今、生命の神聖性がアメリカの全ての州の法律に復帰するまで、我々は安穏としてはならないし、手を緩めてはならない」と、副大統領はツイッターで書いた。
これに対して、女性の選択権を支持してきたリベラル派で民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、「共和党が支配する最高裁」が、共和党の「暗く、極端な目標」を実現したと批判。
ペロシ氏は、「アメリカの女性たちは今日、自分の母親よりも自由が制限されている」、「この残酷な判決はとんでもないもので、あまりにつらすぎる」などとツイート。
アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」は、「これがいかにひどい瞬間か、否定しない」とツイート。「裁判所が何と言おうと、誰も自分の意志に反して妊娠を継続させられるべきではない(中略)中絶は私たちの権利だ。そのための闘いは決してやめない」と書いた。
「BBCニュース」2022年6月25日 00:52
(英語記事 Roe v Wade: US Supreme Court strikes down abortion rights)
https://www.bbc.com/japanese/61929747?fbclid=IwAR0BH16aypZjFEmzHkk4RlaTGgfd8eVn905m_tpcPsY_QD62yCHWhuxpr28
予想通り、アメリカ連邦最高裁が人工中絶権の合憲性を覆す決定。
49年、時代が逆行。
とはいえ、アメリカはピューリタンが作った国、そもそも、アメリカ(の半分)は、人権的に駄目な国なのだ
次は・・・、ということ。
>賛成意見を書いたトーマス判事は、中絶権の見直しに加えて今後は、避妊具の使用や同性愛行為、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直すべきだと書き添えた。
---------------------------------------
米連邦最高裁、人工中絶権の合憲性認めず 重要判決を半世紀ぶりに覆す
米連邦最高裁は24日、アメリカで長年、女性の人工妊娠中絶権は合憲だとしてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決を覆す判断を示した。この判決を受けて、アメリカでは女性の中絶権が合衆国憲法で保障されなくなる。
最高裁(判事9人)は、妊娠15週以降の中絶を禁止するミシシッピー州法は、「ロー対ウェイド」判決などに照らして違憲だとする同州のクリニックの訴えについて、6対3で違憲ではないと判断した。下級審では、違憲との判決が出ていた。
「我々は、憲法が中絶する権利を付与しないと考える(中略)そして、中絶規制する権限は国民と、国民が選んだ代表に戻さなくてはならない」と、判決文には書かれている。
今回の判決は、約半世紀前に連邦最高裁が定めた判例を、同じ最高裁が自ら覆したことになり、きわめて異例。今後、アメリカ国内で激しい論争と政治対立を引き起こすとみられている。
今回の判決は、保守派判事6人とリベラル派判事3人の思想的な違いがそのまま反映されたものとなった。判事9人のうち、保守派のサミュエル・アリート、クラレンス・トーマス、ニース・ゴーサッチ、ブレット・キャヴァノー、エイミー・コーニー・バレット各判事は、明確に「ロー対ウェイド」判決を覆す判断に賛成した。このうち、ゴーサッチ、キャヴァノー、コーニー・バレット各氏は、ドナルド・トランプ前大統領に指名され就任した保守派。
穏健派とされるジョン・ロバーツ最高裁長官は、別の意見を書き、ミシシッピー州の中絶禁止は支持するものの、それよりさらに踏み込んだ判断には反対したと述べた。
対して、反対意見を書いたリベラル派は、スティーヴン・ブライヤー、ソニア・ソトマヨール、エレーナ・ケイガン各判事。3人は、「この法廷のために悲しみ、さらにそれ以上に、憲法による基本的な保護を本日失った何百万人ものアメリカの女性のために悲しむ」と書いた。
他方、賛成意見を書いたトーマス判事は、中絶権の見直しに加えて今後は、避妊や同性愛行為の自由、同性婚などの合法性を認めた過去の判例を見直すべきだと書き添えた。
今回の判決をめぐっては、米政治ニュースサイト「ポリティコが今年5月に保守派判事の意見書草稿を入手して報じていた。その中で、筆者のアリート判事は「ロー対ウェイド」判決について、「はなはだしく間違っている」と書いていた。報道を受けて、ジョン・ロバーツ最高裁長官は文書が本物だと認めていた。
アメリカでは、1973年の「ロー対ウェイド」事件に対する最高裁判決が、女性の人工中絶権を認める歴史的な判例として約半世紀にわたり維持されてきた。そのため、中絶に反対する勢力と、女性の選択権を堅持しようとする勢力が長年、この判決をめぐり争ってきた。
「ロー対ウェイド」事件について当時の最高裁は、賛成7、反対2で、胎児が子宮外でも生きられるようになるまでは女性に中絶の権利があると認めた。これは通常、妊娠22~24週目に相当する。これを受けてアメリカでは約半世紀にわたり、妊娠初期の3カ月間は中絶の権利が全面的に認められてきた。妊娠中期の中絶には一定の制限がかけられ、妊娠後期の中絶は禁止されてきた。
しかし、最近では一部の州が独自に、中絶を制限もしくは禁止する州法を成立させていた。
基本的権利を最高裁が=大統領
ジョー・バイデン米大統領はこの日の最高裁判決を受けて、「最高裁にとって、そしてこの国にとって悲しい日だ」と述べ、最高裁は「多くの国民にとってあまりに基本的な憲法上の権利」を「制限するのではなく、あっさり奪い取った」と批判した。また、判決は「極端な思想」が具体化したものだとも述べた。
「呆然としてしまう」とバイデン氏はホワイトハウスで報道陣に述べ、「近親相姦によってできた子供を、女性がずっとおなかで育てなくてはならないと想像してみるといい。これは残酷なことだ」と批判した。
バイデン大統領は報道陣を前に、中絶が制限されている州の女性が、中絶を認める他の州へ移動する「その基本的な権利を、私の政権は守る」と述べ、女性が移動する権利に州政府が介入することは認めないと話した。
大統領はさらに、中絶権をめぐる闘いは「終わっていない」として、「有権者は意見を表明する必要がある」と述べた。今年11月には議会中間選挙や各州政府の選挙があるのを念頭に、「今年の秋、ローが投票の対象になる。個人の自由が投票の対象になる。プライバシーの権利、自由と平等の権利、これがどれも、投票の対象になる」と、大統領は強調した。
判決の影響は
「ロー対ウェイド」判例が認めた憲法上の保障を最高裁自らが否定したことで、アメリカの各州はそれぞれ独自の州法で中絶を禁止できるようになる。半数以上の州が新しく、規制を強化したり、禁止することになるとみられている。
13の州ではすでに、連邦最高裁が「ロー対ウェイド」判決を覆せば自動的に中絶を禁止する、いわゆるトリガー法が成立していた。このうち、ケンタッキー、ルイジアナ、アーカンソー、サウスダコタ、ミズーリ、オクラホマ、アラバマの各州では、最高裁判決を受けて中絶禁止法が施行された。ほかの多くの州でもこうした法律が成立するとみられる。
これを受けて、アーカンソー州やルイジアナ州などで中絶手術を提供していた、いわゆる「中絶クリニック」が診療を中止し始めた。
アメリカで女性に中絶手術を提供してきた医療団体「プランド・ペアレントフッド」の調査によると、妊娠可能年齢の女性約3600万人が、今回の最高裁判決によって、中絶手術を受けられなくなるという。
中絶に関する世論が割れている、ペンシルヴェニア、ミシガン、ウィスコンシンなどの州では、中絶の合法性が選挙ごとに争われる可能性が出ている。他の州では、中絶を認める州に個人が移動して中絶手術を受けたり、郵便で中絶薬を取り寄せたりすることの合法性などが、個別に争われる可能性がある。
民主党知事は中絶権を州法に
中絶をただちに禁止しようとする各州とは逆に、カリフォルニア、ニューメキシコ、ミシガン各州などでは与党・民主党所属の州知事が、「ロー対ウェイド」判決が覆された場合に備えて、人工中絶権を州の憲法で保障する方針を発表している。
ロイター通信によると、バイデン政権(民主党)のカマラ・ハリス副大統領は23日、民主党が州政府を握る7つの州の州司法長官と協議し、中絶権を守る方法について話し合っている。
歓迎と悲嘆と
主張が最高裁に認められた形になったミシシッピー州のテイト・リーヴス知事は、判決をただちに歓迎し、同州が「この国の歴史における最大の不正義のひとつを克服するため、国の先頭に立った」と声明を発表した。
「この決定は直接、より多くの心臓が脈を打ち、より多くのベビーカーが押され、より多くの成績表が手渡され、より多くのリトルリーグの試合が開かれ、より多くの良い人生が送られることになる。喜ばしい日だ!」と知事は書いた。
長年にわたり「ロー対ウェイド」判決を批判してきた保守派のマイク・ペンス前副大統領は、判決が「アメリカの人たちに新しい始まりを与えた」と歓迎した。
「生きるための2度目のチャンスを与えられた今、生命の神聖性がアメリカの全ての州の法律に復帰するまで、我々は安穏としてはならないし、手を緩めてはならない」と、副大統領はツイッターで書いた。
これに対して、女性の選択権を支持してきたリベラル派で民主党幹部のナンシー・ペロシ下院議長は、「共和党が支配する最高裁」が、共和党の「暗く、極端な目標」を実現したと批判。
ペロシ氏は、「アメリカの女性たちは今日、自分の母親よりも自由が制限されている」、「この残酷な判決はとんでもないもので、あまりにつらすぎる」などとツイート。
アメリカの権利団体「アメリカ自由人権協会(ACLU)」は、「これがいかにひどい瞬間か、否定しない」とツイート。「裁判所が何と言おうと、誰も自分の意志に反して妊娠を継続させられるべきではない(中略)中絶は私たちの権利だ。そのための闘いは決してやめない」と書いた。
「BBCニュース」2022年6月25日 00:52
(英語記事 Roe v Wade: US Supreme Court strikes down abortion rights)
https://www.bbc.com/japanese/61929747?fbclid=IwAR0BH16aypZjFEmzHkk4RlaTGgfd8eVn905m_tpcPsY_QD62yCHWhuxpr28