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「闇の男」を「ストリート・ボーイ」と読ませる記事ー昭和11年(1936)の男色恐喝事件ー [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

2月15日(木)

「闇の男」に「ストリート・ボーイ」と仮名を振った興味深い記事を発見。
「闇の女」が街娼(ストリート・ガール)を意味することは知っていたが、「闇の男」を「ストリート・ボーイ」と読ませている記事は初めて。
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『読売新聞』昭和11年(1936)8月14日

不覚なり闇の男(ストリート・ボーイ)
銀座でひく刑事の袖
毒花のトリオ三人組

大都会のかげに咲く妖しの“闇の男・・・”不覚にも刑事の袖をひいて暴露した世紀末的なグロ場面――去る九日の宵 銀座尾張町三越裏を赤坂表町署の安部刑事が密行してゐると明石の単衣に錦紗総絞りの兵児帯、白足袋といふ女とも見まがふ美青年が近づいて“ねーあなた!散歩しませうよ”と嬌態を見せた。刑事はしばし呆然にとられたがやがて職業意識を取り戻し本署に連行調べると、四谷区谷町一八元陸軍省勤務岩野芳春(二九)といひ美貌を資本に変態男をあさつてゐた闇の一人と判つた。彼の自白で小石川区新諏訪町一七佐野富男(二九)を検挙、住所不明木田新次(三〇)―仮名―を捜査してゐるが、この三人は数年前からこの社会に出没、岩野は去る六月二日夜四谷見付の小公園ベンチから京橋区銀座五ノ一一洋品店商和田元男(四六)―仮名―を自宅に連れ込み、これを仲間の木田がさりげなく訪れた風をして現場を見届けさせ一週間後に岩野が和田の家を訪れ百円を無心、和田が拒むと岩野は店先で「都合しなければこの間のことを一切奥さんに報らせる」と大声で恐喝、マンマと百円をせしめた。
この手で三人代わるがわる和田から計二百五十円を恐喝したほか銀座、日本橋、?谷の大商店主ばかり卅余人を恐喝したことを自白した。

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日本が日中戦争に突入する前の年に、帝都東京で発覚した男色者グループによるかなり大規模な恐喝事件。
犯行の手口は「美人局(つつもたせ)」の男色版だが、主犯の岩野がいくら美貌にしても、ずいぶん多くの商店主がひっかかったことに驚く。
ちなみに当時の物価は、もりそば12銭、天丼40銭、銀行員の初任給70円で、現在の貨幣価値に直すにはだいたい3000倍。100円は30万円相当になる。

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