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生殖機能を残した状態で性別変更が認められたケース [現代の性(性別越境・性別移行)]

10月18日(水)

『朝日新聞』二階堂友紀記者の記事。

男性ホルモンを投与すると、重い副作用がある特異体質?で、男性ホルモンの継続投与が困難な事例。
子宮と片側卵巣の摘出、つまり片側の卵巣を残した状態で、女性から男性への戸籍変更を申請し、家裁が「合理的な事由」があるとして、例外的に性別変更が認められた。

例外的だが、「GID特例法」の第4要件(生殖機能喪失要件)がクリアされたケース。
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生殖機能残した性別変更認める 健康上の理由配慮 家裁が異例の判断

健康上のやむを得ない事情を抱えるトランスジェンダーについて、家庭裁判所が、もとの性別の生殖機能を残したまま、戸籍上の性別変更を認めたケースがあることがわかった。性同一性障害特例法は性別変更の要件として生殖機能の喪失を求めており、担当した医師は「同様の事例は聞いたことがない」と話している。

男性ホルモンの投与が困難
今回のケースは、今年3月のGID(性同一性障害)学会の発表のなかで言及された。発表した医師によると、当事者は40代で、女性から男性に性別移行したトランス男性。男性ホルモンの投与を行うたび、命に関わりかねない身体症状が起こり、ホルモンの継続投与が困難な状態だった。

特例法では、女性から男性への性別変更を申し立てる際、原則として卵巣を切除し、女性としての生殖能力を失う必要がある。しかし、このケースの場合、男性ホルモンを投与できないため、卵巣を完全に切除して女性ホルモンが分泌されなくなると、性ホルモンが一切なくなってしまう。

性ホルモンが欠乏すると、骨密度の低下や精神的な不調など様々な症状が出る懸念がある。このため子宮を摘出したうえで、二つの卵巣のうち一つを残した状態で、性別変更を申し立てた。

医師によると、これに対して家裁は「合理的な事由があるとして、例外的に性別変更を認めた」という。裁判所が、特例法の要件を満たさない当事者の性別変更を認めるのは極めて異例だ。

「手術の正当性、問いかけている」
卵巣や精巣の切除を含む性別適合手術は、身体への負担が大きいため、健康上の理由で受けられない当事者もいる。今回明らかになったケースでは、家裁が例外的に申し立てを認めたが、多くの場合は性別変更を断念しているとみられる。

女性トイレの使用制限は不当だとして国を訴え、今年7月の最高裁判決で勝訴が確定した経済産業省職員のトランス女性も、健康上の理由で手術を受けておらず、性別を変更できていない。

特例法に詳しい京都産業大の渡辺泰彦教授(家族法)は「生殖不能要件はそもそも人権侵害性の高い規定だが、健康上の理由で手術が受けられない人にまで、不妊化を求めるのは明らかに行き過ぎだ。特例法の厳格な定めよりも、当事者の健康を優先した妥当な決定だ」と評価。「性別変更にあたり、負担の大きな手術を課すことに正当性があるのか、改めて問いかけている」と話す。

特例法は性別変更の要件の一つとして、「生殖腺(卵巣や精巣)がないか、その機能を永続的に欠く」と定める。すでに閉経し、生殖機能がないと判断されたトランス男性について、手術を経ずに、性別変更が認められた事例があることもわかっている。
(二階堂友紀)

『朝日新聞』2023年10月18日 17時35分


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