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性別移行の脱精神疾患をめぐって [現代の性(性別越境・性別移行)]

4月3日(金)
「性別移行が脱精神疾患したら、何科が見てくれるのだろう」と心配している人がけっこういるようだ。
性別移行が脱精神疾患したからといって、精神科医が診てくれないということはない。
精神的な不安が有れば精神科に行けばいいし、それなりの処方はしてくれるはず。
たぶん近い将来的に「性別違和クリニック」とか「性別違和外来」みたいなものができると思う。

ICD-11では、「性別不一致 Gender Inconguence」は睡眠障害などと同じ位置づけになる可能性が高いので、睡眠障害の専門クリニックがあるのと同様に「性別不一致」の専門クリニックができると思う。
需要があれば、それに応じたクリニックは成り立つ。
たとえば、現状、性別違和の受診者が圧倒的に多い、針間先生のクリニックとか、そんな感じになるのではないだろうか(勝手な憶測)。

性別移行の脱精神疾患化の方向について、国内の少数の人間が画策(悪巧み)しているように誤解している人がいるらしい。
でも、現実はWHO(世界保健機構)の疾病マニュアルであるICDの改訂に伴う変化であって、国内から起こった問題ではない。
今まで日本のGID学会や当事者団体が、ICD改訂委員会の動向を軽視し関与しようとせず、自分たちの意見(性別移行の精神疾患維持)をほとんど具申をしなかっただけの話。

脱精神疾患化が唐突な変更のように思ってしまうのは、国際的な潮流に鈍感だったからで、それなりに耳を立てていれば、すでに3年ほど前のDSM-5の改訂の頃から脱精神疾患化に向かうのは明らかだった。
さらに言えば、日本の極端な病理化推進の方向性が、国際的に特異であり、関係の専門家たちから奇異に思われていたことは、英語がまったく苦手な私でも2003年頃には気づいていた。
その点については、私も国内向けにそれなりの発信はしてきたが、まったく無視するか、嘲笑ってきたのは日本の当事者たち。

もちろん、WHOの方針やICDの改訂を一切無視して、日本独自の形で性同一性障害=精神疾患という形態を維持する(使い続ける)という選択肢はある。
実際、スラム圏やアフリカ諸国の中には、同性愛を非病理化したICD-10(1990年採択、1993年発効)をいまだに無視している国もあるのだから。
その場合、WHOから加盟国としてICDを遵守することを強く求められるし、さらに性別移行をいつまでも精神疾患とみなす人権意識の遅れた国として、国連の人権委員会などからの批判が今以上に強まるのは確実だ。
それを承知で、日本の医学界がWHOに楯突く根性があるだろうか?
私はかなり疑問に思う。

日本の当事者団体が、性別移行の脱精神疾患化の流れを止めて精神疾患であることを維持したいのなら、メンバーが関係の国際学会・会議に参加して、ICDの改訂委員会の委員に陳情するなり国際的なロビー活動をすべきだった。
脱精神疾患化を目指す欧米・アジアのトランスジェンダーは長年、そうしたロビー活動を熱心にやってきた。
一方、精神疾患維持派の日本の当事者がそうした国際学会・会議に参加してロビー活動をしたという話は、少なくとも私は知らない。

実は、ICDの改訂委員会のこの部門の専門委員も、脱精神疾患化の方向で一致している訳ではない。
ただ、ロビー活動している当事者は脱精神疾患化を望む人が圧倒的多数だから、専門委員も当事者の意向は無視できないのだと思う。
逆に言えば、精神疾患維持派の日本の当事者が国際会議に大勢参加してロビー活動を展開していれば、脱精神疾患化の潮流を少しは押しとどめた可能性はゼロではなかったと思う。

しかし、もうほぼ方向性が決まりつつある段階で、時期的に巻き返しは手遅れだし、今、いきなり出て行っても、脱精神疾患化を目指して長年積み上げてきた欧米・アジアのトランスジェンダーの活動実績を覆すのは難しいだろう。

ただ、こういうことは一種の「政治」なので、妥協点として性別移行の完全な脱精神疾患化ではなく、メインカテゴリーとしては「性別不一致」を精神疾患から外すが、サブカテゴリーとして何らかの形で精神疾患に残すことになるかもしれない。
私としては、変な政治的妥協はせずに、すっきり精神疾患から外してほしいのだが。

昨日は、そんなことを新聞記者さんに話した。

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コメント 1

花見月

普通は男なのに何故ペニスを取りたいか理解できないから異常と考えたでしょうし、ペニスを取るには何らかの医学的根拠が必要なので、精神疾患のカテゴリーに入れたのは自然な流れだったと思います。その後、脳が自分を女と考えているなら、ペニスがあるのが嫌なのは自然な考えだと医者の中でも発想の転換があり、理解可能とされるようになったのではないでしょうか。ここ十数年ほどで、身体的治療のため、一応精神疾患に分類されても、統合失調症に代表される精神病ととらえている医師はまずいなくなったと思います(希望)。半分近くの人は一生のうち1つ以上の精神疾患を経験するといわれる昨今、脱精神疾患化はもうとっくに進んできたのでは無いでしょうか。
by 花見月 (2015-04-03 17:30) 

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