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同性愛の再病理化が現実の問題に? [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

9月27日(土)

隣村(同性愛の世界)の話だけど、これはちょっと見逃せない。

「LGBT当事者の声をもっと聞きたい」――国会議員へのLGBT施策インタビュー
明智カイト氏による自民党の牧島かれん衆院議員のインタビュー。
http://synodos.jp/politics/10850

後半の「今後の取り組みについてどのように考えていますか?」という明智氏の質問に対する牧島議員の答えの一部。

「同性愛はまだまだ「趣味の世界」だと思われていて偏見があります。同性愛に関して医学的な証明が必要です。これからも周囲の議員たちに理解をしてもらえるように働きかけを続けていきます。」
はっきり同性愛へ医学が介入する方向性を出している。

同性愛の再病理化については、今までもいろいろ話はあったが、そのほとんどは冗談的な文脈だった。
しかし、「自民党で最もLGBTに理解がある」議員さんが「同性愛に関して医学的な証明が必要です」と言い切った以上、もう冗談ではなく現実の問題と考えた方がいい。

同性愛の非病理化は、欧米のゲイ、レズビアンが命がけで戦った結果、やっと獲得した成果であること。
欧米を中心に人権を尊重するに先進国においては、同性愛が病理ではなく、その人の生き方であることは、もう常識であり、したがって再病理化=同性愛者への人権侵害と受け取られること。
いちばん非病理化が遅れているトランスジェンダーでさえも、脱精神疾患化は世界的な潮流であること。
こうしたことを、「自民党で最もLGBTに理解がある」議員さんは、認識していないのだろうか?

そして、こうした問題発言に対して、何も突っ込まないインタビュアーにも首を傾げざるを得ない。

「よかったですね、病気だって認めめられて」
「性同一性障害」概念の「大流行」以降、私のような病理化を拒否するトランスジェンダーがさんざん言われてきたことを、多くの同性愛者が言われる時代が来るかもしれない。
同性愛者の皆さん、ほんとうにそれでいいのですか?

【追記(27日22時)】
結局、医学的な根拠(疾患認定)を与えられ、その「お墨付き」を基に社会的な認知を得ることで、医療福祉の対象となり当事者のQOLの向上につなげ、さらに政治家を動かして「病理を前提にした戸籍の性別変更法(GID特例法)」を実現した「性同一性障害」を「成功例」と見るかどうかだと思う。
「成功例」と見るならば、それと同じ手法を取ろうとする同性愛の当事者や、そうした路線で同性愛者が抱える問題を解決しようとする政治家が出てくることは、当然、予想される。
たとえば、同性愛を再病理化して、医者に「同性愛である」という診断書を与えられた者だけが、同性婚を認められる、という形。
そうした路線を支持し推進するか、あるいは拒絶するかは、「隣村」(同性愛)の人たちが決めることだ。
ただ、病理化路線をとった場合、欧米の仲間たちの嘲笑をあびることは覚悟しないといけない。

【追記(29日13時)】
同性愛の病理化問題、元のインタビュー記事(シノドス)に訂正が入った。
「同性愛に関して医学的な証明が必要です」を消して、「『同性愛は病気ではない』という証明のための発言でしたが、誤解を招く表現でしたので訂正いたします」という編集部註が入った。
では、なぜ今さら「同性愛は病気ではない」という証明をしなければいけないのか?
同性愛が病気でないことはWHO(世界保健機構)が20年前に認めていること。
改めて証明する必要はないし、証明不能である可能性が高い。
やっぱり、この議員さんもインタビュアーも、問題の本質的な部分がわかっていない。
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コメント 4

YUKO

「病気」となれば「治すもの」という等記号ですね。
私で言えば「今時着物しか着ない」は「病気」ということになります。
治してもらいたくなんてありません。
自民党はもともと「女は生む機械」くらいにしか思ってない人たちの集まりだとおもってますので、レズやゲイは非国民の集まり扱いになるんだろうな。それが「病気」となれば・・・これで当事者が動かなければセクシャルマイノリティーはさらにアングラにもぐる事になるのでしょうね・・・

by YUKO (2014-09-27 20:04) 

Gen

ふざけた話ですね。
他に色々な要因はあったにせよ、要は異性愛者の数が圧倒的に多いから正常で、同性愛者は少ないから異常とみなされてきただけの話なのに、なんで今更同性愛が病気とされようとしているのか、意味が分かりません。
女性が男性を好きになり、男性が女性を好きになると繁殖にも生活にも都合はいいかもしれませんが、それだけの話ではないでしょうか?
仮に今結婚してる女性(男性)が「良かったね、男(女)を好きになるのが病気のせいだって認められて」と言われたらどんな気持ちになるか考えてみてほしいです。
他人が自分を認めるから男(女)を好きになって子供を生んだり一緒に住んだりしてるわけではないはずです。
なかにはそういう人もいるでしょうが、一般には幸せになりたくて、自分が惹かれた相手と一緒になるだけです。同性愛者が同じことをしたいと思ってなにがおかしいのでしょうか?日本で結婚は無理でも、そう望むことは自然なことのように私には感じられます。
おかしい人はおかしいって自分で認めるべきという風に聞こえます。
だから可哀想で、みんなで救ってあげなきゃ、という感じ。
美輪明宏さんが「盗んだわけでも殺したわけでもないのだから、人は誰でも幸福になる権利がある」と言っていましたが、まったく同感です。
誰を好きになろうが、誰と寝ようが、お上にどうこう言われる筋合いではありません。
多数派にいる人ってたまに「善意で」こういう勘違いをやらかしてくれますよね。なにがおかしいのか気付いてないところが残酷です。
日本って最近、人と同じ位置にいると大丈夫で、それとは違う位置にいる人にはすごく残酷な人たちになりつつあるなぁ、と感じることが多い今日この頃です。
私は見かけ上は異性愛者になってしまうので、同性愛者の皆さんには頑張ってほしいです・・・。
by Gen (2014-09-27 23:14) 

三橋順子

YUKOさん、いらっしゃいま~せ。
そうなんですよ、「病気」ということになると、必然的に次は「治療」ということになります。
同性愛の人たちは、果たして「治して欲しい」のでしょうか?
「治して欲しい」人が多いのなら、再病理化もひとつの選択肢ですが・・・。
そもそも同性愛の脱病理化は、性的自由のという理念の問題であると同時に、いくら「治そうとしても治らなかった」という現実的な側面もあるのです。
そういうこと、何も知らないで、再病理化に走られたら、「治して欲しくない」のに、「病気」ということにされて、やっぱりいくらやっても「治らなかった」という最低な話になるのですけどね。
by 三橋順子 (2014-09-29 01:04) 

三橋順子

Genさん、いらっしゃいま~せ。
>多数派にいる人ってたまに「善意で」こういう勘違いをやらかしてくれますよね。
>なにがおかしいのか気付いてないところが残酷です。

まったくおっしゃる通りです。
この議員さん、「自民党ではいちばんLGBTに理解がある議員」で、まさに「善意」なのだと思います。
私の指摘に対して、そういう反論(「理解ある議員なんだから」)をしてきた人もいましたが、善意だろうが好意だろうが、おかしな考え方には変わりはないわけです。
そこらへん、間違えると、とんでもない方向に行ってしまいますから。
by 三橋順子 (2014-09-29 02:34) 

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