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明治大学文学部「ジェンダー論」単位レポート採点結果 [お仕事(講義・講演)]

8月1日(木)
明治大学文学部「ジェンダー論」単位レポート採点結果

履修登録      282名(3年181、4年100、院生1)
出席数不足失格  49名(3年10、4年39)
成績評価対象   233名
レポート未提出   14名(3年8、4年6)
レポート提出    219名  

レポート提出率は、履修者登録比77.7%、成績評価対象比94.0%
私の講義としては、履修者登録比のレポート提出率が悪い。
出席数不足失格は、3年生では5.5%に過ぎないが、4年生は39.0%で4割近くが失格。
失格基準は出席を取った13回中6回出ていればセーフにしているのでかなり甘いのに。
数えてみると、1度も出席していない4年生が25人もいる。
そもそも出席する気がないのに、なぜ履修登録するのか理解できない。

A+評価は9名(提出者の4.1%)。
内訳は3年生女子7名、4年生女子1名、4年生男子1名で男女比は1:8。
履修登録者の男女比は、145:137=51:49で、ほぼ男女半々なのだから、男子はもっと頑張って欲しい。
全体的に、女子はジェンダー&セクシュアリティの問題を自分に引きつけてテーマ設定し分析できている学生がそれなりにいるのに対し、男子はどうもそこらへんが弱い。
はっきり言って、テーマ設定力、調査・考察力、文章表現力、どれをとっても見劣りする。
以前は、平常点では女子が優勢でも、レポートで盛り返す男子がそれなりにいたものだが・・・。
この数年、男子学生の全体的な劣化を感じる。
いったいどうなってしまったのだろう。

私としては、ジェンダー&セクシュアリティの問題は女性問題だけではなく、男性問題でもあるという基本姿勢で講義をしているのだが、なかなか男子学生に届かない。
講師としての力不足を痛感する。

【優秀レポート(A+評価)】9本
・「AKB48の衣装の傾向とジェンダー」(3年女子:英米文学)
AKB48の衣装が男性ファンのジェンダー&セクシュアリティの特性を巧みに利用しているという指摘。
まあ、そうだろうとは思うが、具体的に分析されていておもしろかった。

・「バイセクシュアルについて」(3年女子:演劇学)
バイセクシュアルとしての自己体験を分析し、バイセクシュアルへの社会的理解を求める。
女性と交際していた彼女が、男性と交際し始めたときに複数の友人から「治ってよかったね」と言われたという記述、読んでいてなんとも切なかった。

・「日本の女性アイドル文化―アイドルにみる日本のセクシュアリティ観―」(3年女子:アジア史)
日本の女性アイドルの特質と変遷をセクシュアリティの視点から分析。
理想の恋愛をかわいらしく唄うアイドルから、強い女性の生き方を唄うアイドルへという変化が、女性ファンが増加した要因。

・「留学体験で気づかせられた性の多様性」(3年女子:アジア史)
カナダ、バンクーバーへの留学し、性の多様性に気づいていく過程を叙述。同時に、アメリカや韓国の学生との会話を通じて、日本のジェンダー&セクシュアリティの特異性も認識していく。とても良い留学体験をしたと思う。

・「何故、同性愛は認められないのか」(3年女子:文芸メディア)
身近な同性愛者の存在から、同性愛が社会的に認められない理由を探る。身近から世界史まで広い視野ながらポイントは外していない。ゲイに比べてレズビアンがさらに忌避されるのは「レズビアンカップルが1組成立すると、(ある男性)の子供を産む可能性がある人が2人減るから」(ゲイの場合は減らない)という理由づけは、素朴ではあるが「なるほど」と思う。

・「ゲイブロガーとレズビアンの不可視化」(3年女子:文芸メディア)
ネット世界で人気を集めるゲイブロガーに対し、ネット世界でもレズビアンが不可視化されている状態を指摘。先行研究(杉浦郁子論文)の参照も適切で、レズビアンの不可視化の根本に女性差別があることをしっかり認識している。

・「女子割礼の風習について」(3年女子:現代社会学)
アフリカを中心に広く行われている少女の女性器切除・加工についての考察。
独自の見解は少ないが、考察すべき論点を外さず、よくまとまっている。
なにより、「何とかしなければ!」という熱意が伝わってきた。

・「腐女子の生態―彼女たちの性的嗜好―」(4年女子:演劇学)
「腐女子」としての自己分析からメディアの取り上げ方の問題点に及ぶ。
「腐女子」論、BL論が多かった中で、「二次元好き腐女子」に対する「三次元好き腐女子」という設定がおもしろかった。

・「『非モテ』概念に関する考察―『モテ』、『非モテ』と『恋愛できない』層の存在―」(4年男子:心理社会)
従来の「非モテ」概念は「恋愛をしない人」と「恋愛できない人」を分別していないという指摘。
たしかにその通りで、意識的に恋愛を避けている人と、恋愛したくてもできない人は大違いで、前者は個人の選択であり自由だが、後者にはなんらかの社会的フォローが必要なのではないだろうか。

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コメント 2

みれい

さすが明治大学。考察や文章表現が立派ですね。
では価値観や感覚はどうでしょう?。

蔦森樹さんの和光大学での性をテーマとした講義が始まったころと比べて、
今の学生さんは性別にとらわれない環境で育ってきたように思いますが。

東京経済大学を含めて、三橋先生の講義を受講する学生さんは比較的ジェンダーへの関心や問題意識が高いとすれば、
他の一般の学生さんのほうは、
‘相変わらず固定観念にまみれているとかむしろ保守的になってきている!?’、
との思いも否めません。
by みれい (2013-08-06 22:56) 

三橋順子

みれいさん、いらっしゃいま~せ。
>蔦森樹さんの和光大学での性をテーマとした講義が始まったころ
トランスジェンダーの大学教員としては蔦森さんと私が日本で最初だから、蔦森さんの講義が始まった頃(2000年)は、私が講義を始めたときでもあるのです。
その頃からすると、学生たちの身近にゲイ、レズビアン、バイ、トランスジェンダーor性同一性障害であることをカミングアウトしてる人が格段に増えたことがいちばん大きな違いです。
単に理解が進んだということだけではなく、身近な感覚としてとらえている学生が2008年頃から急に増えました。
私の講義は、明治大学では文学部全学生の4分の1、都留文科大学では3分の1くらいが受講します。
ですから、取り立てて問題意識が高いとは言えない、ごく一般的な学生もかなりの数、含まれています。
そういう学生の価値観や考え方を変えていくのは、やりがいがあります。
ただ、私はシラバスで、MtFのトランスジェンダーであること明記していますので、「おかまの先生になんか教わりたくない」と思う学生は受講しません。
そういう学生は、相変わらず固定観念にまみれたままだと思います。
by 三橋順子 (2013-08-07 01:07) 

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