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「yui ただひとつの家族を結ぶ」について [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

4月6日(水)

「yui ただひとつの家族を結ぶ」というサイトが一部で話題になっている。
CfSDFGQUYAAXP0x.jpg
「『子どもを諦めたくない』というセクシュアルマイノリティをつなぐマッチングサービス」とあり、新手のLGBT向け斡旋ビジネスと思われる。

いったい何を斡旋してくれるのだろう?
CfSDFKfVIAA4IYV.jpg
「共に夢を叶える相手をさがしませんか。」
「yuiは詳細なプロフィールから、未来の家族候補を探すことができるマッチングサービスです」
これだけ読むと、一般的な男女の婚活サービスかと思ってしまうが、あくまでLG(レズビアン、ゲイ)のための斡旋サービスなので、「結婚」ではなさそう。
ポイントはその下の記載。
「誰でもいいわけじゃない。親友や親戚のような関係を築きたい」
「顔の見えないドナーは不要」
とりわけ注目は「ドナー」。

「ドナー」とは「提供者」の意味で、骨髄や臓器移植の際に使われる言葉だが、いったい何を提供するのだろう?

ここまできて、「ああ、そうか」と気づく。
この「yui」という組織は、子供が欲しいレズビアンに精子を、子供が欲しいゲイに卵子(と子宮)を提供する人(ドナー)を斡旋するビジネスなのだ。

しかも、その斡旋料がすごい!
CfSDE8KUsAAX9Or.jpg
入会金が31万円。
月会費が3万5000円。
一番安い「3カ月に6人」を紹介するコースだと41万5000円。
高い「12カ月で25人に会う」コースだとなんと73万円。
富裕なL・Gには屁でもない金額だろうが、貧しいTには目が回るような金額。

不思議なのは、これだけ具体的かつ高額の価格を提示しているのに、事業主体の情報がまったくないこと。
これは怪しい・・・。

そこで「子どもを諦めたくない人へ」で検索すると、5つ目に「セクシュアルマイノリティのための家族会議 『子どもを諦めたくない人へ』」という会合(組織?)がヒットした。
http://koyuki-higashi.blog.jp/archives/56954580.html
CfQ1fOMUEAAvSCD.jpg
あれ、これは著名な「LGBT活動家」の東小雪さんのブログではないか。
「yui」と「家族会議」は、桜並木の下を散策する家族の絵がまったく同じで、同一基盤の事業であるのは間違いない。
CfQ1fOMUEAAvSCD (2).jpg
推測するに、3月26日に開催された「セクシュアルマイノリティのための家族会議」の発展形が「yui」なのではないだろうか。
「yui」に東小雪さんが関わっていることは、マーガレット小倉さんや永易至文さんも指摘しているので、まず間違いないところだろう。

東小雪さんといえば、年初にゲイカップルのために代理母出産を斡旋するビジネスセミナーを開催して、多方面から批判された方だ。
(参照)2016年1月21日「ゲイカップルのための代理母ビジネスをレズビアンカップルが推進することへの疑問」
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22-2

今回の精子(卵子)提供者斡旋ビジネスも、禁止する法律はなく違法ではない。
しかし、厚生科学審議会生殖補助医療部会「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療制度の整備に関する報告書」(2003年4月)では「精子・卵子・胚の提供に係る一切の金銭等の対価を供与すること及び受領することを禁止する」としている。
そして、この規定が「精子・卵子・胚の提供をめぐる商業主義的行為を防止するため」に設定されたことが明記されている。
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/04/s0428-5a.html
つまり、精子・卵子の提供を「斡旋」という形でビジネス化することは、違法ではなくても「脱法」行為の疑いが強い。

上記の「報告書」で「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療を受ける条件」として「子を欲しながら不妊症のために子を持つことができない法律上の夫婦に限る」としていて、同性愛カップルの存在はまったく想定されていない。
その点は、大いに問題ではあるが、だからといって、同性愛者のカップルが何をしてもいいというわけではない。

なぜ、こういう倫理的にデリケートで、法的にも微妙な事を安易にビジネス化しようとするのだろう?
ひとつ間違えば、と言うか、もうすでに怪しいブラック・ビジネスの臭いがかなり漂っている。
危ない橋を渡ってでも大金を稼ごうというのは、ご本人の勝手だ。
でも、そういうことを「LGBTアクティビスト」の名義でしてほしくないと思うのは、私だけではないだろう。

(追記)
ここで掲げた「yui」のサイトの内容、文字通り「一夜の内に」消えてしまった。
いったいなんだったのだ?
ますます怪しいではないか・・・。

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しのっちゃ

 この問題に関して私がいつも思うのは、家庭には子供がいなければいけない、親と子供がそろってこそ家族、と言う考えが未だに日本(諸外国の事は分からないので、あえて)では根強いんだな、と言う事です。
 私事で恐縮ですが、私は結婚して二十年近くになる女性ですが、私達夫婦には子供がいません。あえて作らなかったのではなく、自然に任せていても出来なかったのですが、周囲の子供がいない事への詮索や問いかけには本当に閉口しました。一番嫌だったのは「子供がいないなら結婚している意味なんてない」とある女性に言われた事。社会が進歩していくのにつれて、人生の選択肢も多様化して当然だと思うのですが、まだまだ結婚や家族に関しては旧弊な考えが支配しているのだな(私が知る限りですが)とがっかりする事しばしです。
 LBGTの人達の中にも確かに子供が欲しいという方もおられるとは思いますが、そうじゃない人もおられるのでしょうし、そんなにも所謂普通の家庭にこだわるのは正直なんだかなあ、と思うのですが(かくいう私も『現代思想』の東さんと信田さんの対談に頭を傾げた人間です)。
 三橋さんのブログ、いつも楽しく拝見させて頂いています。特に日本女装史の研究を興味深く読んでいますが、『演劇研究会』を立ち上げた滋賀雄二さんの事を詳しく知りたいと思っています。
 長々と読みにくい駄文を連ねて申し訳ありませんでした。

by しのっちゃ (2016-04-08 12:13) 

三橋順子

しのっちゃさん、いらっしゃいま~せ。
子供がいない(できなかった)夫婦なんて、現実にいくらでもいるわけで、跡を継がせる家名や財産があるのなら養子をとればいいし、なければそれまでなのです。
家名を重視する武家の棟梁である徳川将軍家にしても(側室制度を取りながら)7代の8代の間、13代と14代の間、さらに14代と15代の間で、親子関係は途絶えています。
両親と子供が揃って「家族」という考え方は、明らかに近代以降、明治時代になって強まる考え方です。
近年(安倍政権になってから)、やたらとそういう家族観が表に出てきて、嫌なものを感じます。
家族なんて、そもそも実態として多様だし、多様でいいものなのです。

ゲイ、レズビアンの方たち(の一部)が子供を持ちたいと考えるのは自由だと思います。
ただ、どういう形で子供を持つかという方法については、他者の人権を侵したり、そしてなにより子供の人権を抑圧しないよう、慎重に考えるべきだと思います。
ましてや、金儲けの手段にするのは、私は反対です。

話変わって、「演劇研究会」を立ち上げた滋賀雄二さんのことですが、いずれまとめなければと思いながら、まだ着手していません。
「富貴クラブ」の西塔哲会長については、すでに資料を整理し今年中に文章化しようと思っているのですが。
順番的には、滋賀さんの方を先にすべきなのですが、学究肌の地味な方なので、西塔さんに比べてエピソードに乏しいのです。
でも、滋賀さんについても必ずまとめますので、しばらくお時間をください。
by 三橋順子 (2016-04-10 02:09) 

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