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女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その9)―紫の壁の店の写真― [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

9月22日(火・祝)
1960~1980年代に活動したアマチュア女装の秘密結社「富貴クラブ」の写真コレクションを昨年(2013年)2月に関係者から入手し、整理作業をしている。
その内の主なものは、何度かこのブログで紹介してきた。
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(関連記事)
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その1)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-02-27-1
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その2)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-03-08-1
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その3)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-03-18
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その4)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06-1
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その5)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-04-06-3
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その6)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-04-28
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その7)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2013-10-18
裏打紙は語る?―女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクションの整理―
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-09-21
女装秘密結社「富貴クラブ」関係写真コレクション(その8)
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2014-09-21-2
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コレクションの中に特徴的な紫色の壁の店で撮影された写真(カラー)が何枚もある。
fu5-6折鶴 (2).jpg
↑ (fu5-6)紫の壁の店の写真に写っている人物はこの3人。
fu4-9(折鶴) (2).jpg
↑ (fu4-9)
fu2-24 (折鶴)(2).jpg
↑ (fu2-24)どうも、貫録(年齢)からして、白い着物の方がママのようだ。
fu2-4(折鶴) (2).jpg
↑ (fu2-4)スリーショットで後に写っている人の単独写真。
細身でスタイルが良い、当時としては現代的な雰囲気の人。
fu5-16 (折鶴)(2).jpg
↑ (fu5-16)この黄金色の服の人も、カウンターの中に入っているのでお店の人のようだ。
fu2-26 (折鶴)(2).jpg
↑ (fu2-26)同じ人の別の場所で撮った写真がある。
テレビがある和室。
店の2階のではなく居住スペースだろうか。
fu5-22(折鶴) (3).jpg
↑ (fu5-22)左端にカメラマンの男性が写っている。
雑誌かなにかの撮影を、サイドから写したものだろうか。
fu5-14 (折鶴)(2).jpg
↑ (fu5-14)壁の色からして同じ店。
この紫の服の人は、髪型は違うが、細い足が同じで、黄金色の服の人と同じ人ではないかと思う。

fu1-25 (折鶴)(2).jpg
↑ (fu1-25)青い服の人は、単独の写真がない。
お店の人ではなく、お客さんかもしれない。
あれ?この方、どこかで見た覚えが・・・。

そこで、この写真と(おそらく)同時代の新宿女装世界で活躍された松葉ゆかりさんのアルバム(コピー)を調べてみた。
松葉ゆかりさんは、元「富貴クラブ」会員で、1967年2月に新宿5番街に開店した東京最初のアマチュア女装バー「ふき」(1969年9月に「梢」と改称)のチーママになり、1980年頃まで新宿の女装世界で活躍された方。
そのライフヒストリーは、「戦後日本トランスジェンダー社会史研究会」がインタビューして、「松葉ゆかりのライフヒストリー」として『矢島正見編著『戦後日本女装・同性愛研究』 (中央大学出版部 2006年3月)に収録されている。

あった!
1974年2月、花園3番街「折鶴」2.jpg
間違いなく、同じときの写真。
松葉さんのメモによると、撮影時期は1974年2月。
さらに、こんな写真も。
1974年2月、花園3番街「折鶴」1.jpg
「ゴールデン街『折鶴』のママ、お兄さんのほう」というキャプションが付いている。
「折鶴」は新宿花園三番街の(花園神社側から入って)いちばん奥、左側にあった店。
1969年の地図にはすでにある。
http://goldengai.jp/_userdata/196900.PDF
1962年の地図にはない「山びこ」という店)ので、1960年代中ば~後半の開店と思われる。
私がこの界隈で遊び始めた頃(1994年頃)にはまだ看板が出ていた(行ったことはない)。
現在は「洗濯船」という店になっている。

松葉さんが言うように「姉妹」(兄弟)でやっていた。
「姉」(お兄さん)がママで、「妹」(弟さん)がホステスで。
ということは、松葉さんが「お兄さんのほう」という写真の方が、最初から2、3枚目(fu4-9、fu2-24)の白い着物の人と同一人物だろうか。
化粧の仕方は似ているように思う。

ということで、この紫の壁の店は、新宿花園三番街にあったゲイバー「折鶴」であることがわかった。

ちなみに、青い服の方は、松葉さんの友人で、やはり「梢」グループの洋子さんとのこと。

ここに至って、なぜ「富貴クラブ」の西塔哲会長と松葉ゆかりさんのアルバムに同じ写真があるのか?という疑問が出てくる。
なぜなら、松葉さんが属していた「梢」グループは、1968年2月頃に「富貴クラブ」を退会させられているからだ。
この件、さらに検討しないといけない。

【追記】
さらに、松葉さんにうかがったところによると、一連の写真の撮影者は、松葉さんの友人で「梢」のアシスタントである寿美子さんで、松葉さんは寿美子さんから写真をもらったとのこと。
おそらく、寿美子さんが「折鶴」にプリントを渡し、それがさらに西塔会長に渡ってのではないか、とのお話だった。

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コメント 4

月村朝子

「富貴クラブ」関係の記事、ドキドキしながら拝見しています。資料から、人物を通して時代や事実が浮かび上がってくる過程を見られるなんて、本当に貴重なBLOGです。
今回掲載された写真は1974年2月とのことですが、この方達のメイクアップに興味を引かれました。美容ライター・山本桂子さんの著書「お化粧しないは不良のはじまり」を読むと、60年代に一気に普及した蛍光灯対策のために(顔色がよく見える)ピンク系のファンデーションが定着し、(155頁)ポイントメイクはパール系やパステルカラーが主流だった(150頁)ということです。今回の記事の写真のメイクを見ると60年代の特徴が見られるので、こちらのお店は 当時でもちょっとレトロな雰囲気のインテリアやファッションを打ち出していたのでしょうか・・・。そんなことを色々想像しながら、楽しみに記事を拝見しています☆
by 月村朝子 (2014-09-23 20:33) 

三橋順子

月村朝子さん、いらっしゃいま~せ。
あまり注目されない記事なので、コメント、とてもうれしかったです。
ご指摘の通りで、70年代の化粧法は現代とかかなり違います。
現代の人から見て違和感があるとすると、女性と女装者の化粧の違いというより、時代の差の方が大きいと思います。
とくにファンデーションの質的な違いは大きいです。
この写真に典型に現れていますが、ストロボ撮影だと顔が白く写ってしまいます。
お店の雰囲気やインテリアですが、60年代後半に開店した飲み屋さんとしては、まずまずモダンな方だと思います。
by 三橋順子 (2014-09-28 17:52) 

マルーセル紗希

70年代のカルーセル麻紀さんや「さかさまショー」にショックを受け、以来この世界に魅かれています。先生の著書も読み感銘を受けました。この様な文化を発掘し時代を考察する事に大変な興味を覚えます。また、当時のファッション、メイクは何か味わいがあり昨今の美しいモデルばりの人達に無い独自の色気や不思議さを感じます。古い資料の収集、解析、頭の下がる思いです。これからも女装というアートな文化に書店をあて、空前絶後のあの時代を振り返る素敵な行為を応援します。
by マルーセル紗希 (2015-05-31 11:24) 

三橋順子

マルーセル紗希 さん、いらっしゃいま~せ。
古いエントリーに懇切なコメントありがとうございます。
とても励みになります。

1960~70年代のメイクとファッション、現代からすると、違和感と同時に不思議な魅力も感じますね(一部、復活していますし)。

マルーセル紗希というハンドルネーム、良く似た名前が梶山季之さんの小説に出てきたような気がします。


by 三橋順子 (2015-06-02 09:41) 

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