房総沖でスロー・スリップ発生、収束か?前兆か? [地震・火山・地質]
1月10日(金)
房総沖でスロー・スリップの発生が観測された。
1980 年以降この地域でスロー・スリップが確認されたのは、1983、1990、1996、2002、2007、2010年の6回。
今回のものは前回(2010年10月)から2年3カ月しか経ってなく最も間隔が短い。
1月2日の千葉県東方沖を震源とするM5.1の地震についての記事でまとめておいたが、昨年12月初めから千葉県東方沖でM5クラス(最大震度4~3)の地震が頻発している。
今回観測されたスロー・スリップは、これと関連しているようだ。
これで収まってくれれば問題はないのだが、逆にこれらの活動が、もっと規模の大きな地震の前兆である可能性もゼロではない。
伊豆半島から関東平野の南部、房総半島を経て千葉県東方沖に至る地域は、東日本が乗っているプレート(北アメリカプレートの一部、もしくはオホーツクプレート)の下にフィリピン海プレートが沈みこんでいる地域。
したがって、東日本が乗っているプレートと太平洋プレートの間で起きた東北地方太平洋沖大地震(2011年3月11日、M9.0)の地殻破壊は、犬吠埼からほぼ東に延びるライン(沈み込んでいるフィリピン海プレートの縁)で止まり、地殻に蓄積されている地震エネルギーは解放されていない。
関東地方に大きな被害を与える相模トラフ系の海溝型巨大地震は、歴史上、確実ものは2回しか確認されていない(他に不確かなもの2回)。
878年 相模・武蔵地震(元慶南関東大地震 M7.4
(415年)
1293年 鎌倉大地震(永仁南関東大地震) M 7.0
(410年)
1703年 元禄南関東大地震 M8.1
(220年)
1923年 大正南関東大地震(関東大震災) M7.9
不確実なものを含めて、周期は410~220年ということになる。
つまり、次の相模トラフ系の海溝型大地震の襲来は、早くても2143年ということになり、今世紀中は心配ないことになる。
しかし、こうした考え方と違う仮説も最近出されている。
相模トラフ系の海溝型大地震には、震源域が相模湾から房総半島の西側に及ぶ「大正型」(相模湾型:M7クラス)と、房総半島からその東方沖に及ぶ「外房型」(M7クラス)があり、「大正型」と「外房型」が連動したのが「元禄型」(M8クラス)であるという説である。
大正大地震と元禄大地震の震源域の違いを説明できる仮設でとても興味深い。
この仮説によれば、「大正型」とは別にM7クラスの「外房型」が起こる可能性は残ることになる。
ただ、この説の弱点は、歴史上「外房型」が単独で発生した記録が確認できないことである。
しかし、「外房型」が単独では起こらないとすると、連動タイプの「元禄型」の発生周期は2000年と推測されているので、なにか大地震によらない地殻ストレス解放の仕組みを想定しないと、説明ができなくなる(今回のようなスロー・スリップ現象の多発がストレス解放になっている可能性はある)。
ということで、私は「外房型」(M7クラス)の相模トラフ系海溝型大地震が、近い将来に起こる可能性は否定できないと思っている。
ただ、それが明日なのか、何10年後なのかはわからない。
可能性を頭の隅に置いて、注目していきたい。
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房総沖で「スロー地震」…収束へ?
防災科学技術研究所は10日、千葉県の房総半島沖で、地下のプレート(板状の岩盤)がゆっくりと滑る「スロー地震」を観測したと発表した。
この地域で観測したのは約2年2か月ぶり。同研究所は「房総半島周辺では、念のためしばらく地震に注意してほしい」と呼びかけている。
スロー地震は、プレート境界が約1週間かけて10センチほどずれる現象で、その間に、マグニチュード(M)4~5程度の地震が誘発される危険性が高まる。今回は1月2日頃から滑りはじめ、すでに周囲でM4程度の地震が数回起きた。
同研究所の関口渉次・地震・火山防災研究ユニット長は「すでにプレートの滑りは小さくなっており、スロー地震は収束に向かっていると考えられる」と話している。
『読売新聞』2014年1月10日19時30分
https://blog.so-net.ne.jp/MyPage/blog/article/edit/input?id=69047357
房総沖でスロー・スリップの発生が観測された。
1980 年以降この地域でスロー・スリップが確認されたのは、1983、1990、1996、2002、2007、2010年の6回。
今回のものは前回(2010年10月)から2年3カ月しか経ってなく最も間隔が短い。
1月2日の千葉県東方沖を震源とするM5.1の地震についての記事でまとめておいたが、昨年12月初めから千葉県東方沖でM5クラス(最大震度4~3)の地震が頻発している。
今回観測されたスロー・スリップは、これと関連しているようだ。
これで収まってくれれば問題はないのだが、逆にこれらの活動が、もっと規模の大きな地震の前兆である可能性もゼロではない。
伊豆半島から関東平野の南部、房総半島を経て千葉県東方沖に至る地域は、東日本が乗っているプレート(北アメリカプレートの一部、もしくはオホーツクプレート)の下にフィリピン海プレートが沈みこんでいる地域。
したがって、東日本が乗っているプレートと太平洋プレートの間で起きた東北地方太平洋沖大地震(2011年3月11日、M9.0)の地殻破壊は、犬吠埼からほぼ東に延びるライン(沈み込んでいるフィリピン海プレートの縁)で止まり、地殻に蓄積されている地震エネルギーは解放されていない。
関東地方に大きな被害を与える相模トラフ系の海溝型巨大地震は、歴史上、確実ものは2回しか確認されていない(他に不確かなもの2回)。
878年 相模・武蔵地震(元慶南関東大地震 M7.4
(415年)
1293年 鎌倉大地震(永仁南関東大地震) M 7.0
(410年)
1703年 元禄南関東大地震 M8.1
(220年)
1923年 大正南関東大地震(関東大震災) M7.9
不確実なものを含めて、周期は410~220年ということになる。
つまり、次の相模トラフ系の海溝型大地震の襲来は、早くても2143年ということになり、今世紀中は心配ないことになる。
しかし、こうした考え方と違う仮説も最近出されている。
相模トラフ系の海溝型大地震には、震源域が相模湾から房総半島の西側に及ぶ「大正型」(相模湾型:M7クラス)と、房総半島からその東方沖に及ぶ「外房型」(M7クラス)があり、「大正型」と「外房型」が連動したのが「元禄型」(M8クラス)であるという説である。
大正大地震と元禄大地震の震源域の違いを説明できる仮設でとても興味深い。
この仮説によれば、「大正型」とは別にM7クラスの「外房型」が起こる可能性は残ることになる。
ただ、この説の弱点は、歴史上「外房型」が単独で発生した記録が確認できないことである。
しかし、「外房型」が単独では起こらないとすると、連動タイプの「元禄型」の発生周期は2000年と推測されているので、なにか大地震によらない地殻ストレス解放の仕組みを想定しないと、説明ができなくなる(今回のようなスロー・スリップ現象の多発がストレス解放になっている可能性はある)。
ということで、私は「外房型」(M7クラス)の相模トラフ系海溝型大地震が、近い将来に起こる可能性は否定できないと思っている。
ただ、それが明日なのか、何10年後なのかはわからない。
可能性を頭の隅に置いて、注目していきたい。
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房総沖で「スロー地震」…収束へ?
防災科学技術研究所は10日、千葉県の房総半島沖で、地下のプレート(板状の岩盤)がゆっくりと滑る「スロー地震」を観測したと発表した。
この地域で観測したのは約2年2か月ぶり。同研究所は「房総半島周辺では、念のためしばらく地震に注意してほしい」と呼びかけている。
スロー地震は、プレート境界が約1週間かけて10センチほどずれる現象で、その間に、マグニチュード(M)4~5程度の地震が誘発される危険性が高まる。今回は1月2日頃から滑りはじめ、すでに周囲でM4程度の地震が数回起きた。
同研究所の関口渉次・地震・火山防災研究ユニット長は「すでにプレートの滑りは小さくなっており、スロー地震は収束に向かっていると考えられる」と話している。
『読売新聞』2014年1月10日19時30分
https://blog.so-net.ne.jp/MyPage/blog/article/edit/input?id=69047357
2014-01-11 02:23
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