トランスジェンダーの要素を加えたセクシュアリティのパターン

７月11日（木）
一昨日、朝日新聞の取材で、最近顕在化している男装女子についてしゃべった後、男装女子を加えたセクシュアリティのあり方を考えてみた。

従来のセクシュアリティの分類は、女性×男性のヘテロセクシュアル（異性愛）、男性×男性のゲイ（男性同性愛）、女性×女性のレズビアン（女性同性愛）の３分類だった。
これらの場合、身体的性（セックス）と社会的性（ジェンダー）はズレていないので、その点を考慮することは」なかった。
言い方を換えれば、ジェンダーが固定化されたシスジェンダーであることが無条件に前提化されていた。

私はそれにトランスジェンダーの要素、具体的には女装者を加え、かつジェンダーの在り様（見かけの性別）を重視して、女装×男性を「擬似ヘテロセクシュアル」、女装×女性を「擬似レズビアン」とする考え方を論文などで提示してきた。
（参照）
「現代日本のトランスジェンダー世界 －東京新宿の女装コミュニティを中心に－」
　（『中央大学社会科学研究所年報』7号 中央大学 2003年6月 P87～115 共著⑤ P355～396に収録)
「女装者愛好男性という存在」
　（三橋順子編著『女装者愛好男性Ａ氏のライフヒストリー－戦後日本〈ﾄﾗﾝｽｼﾞｪﾝﾀﾞｰ〉社会史Ⅶ－』中央大学矢島研究室 2004年3月 P66～82 共著⑤ P320～341に収録）
「往還するジェンダーと身体－トランスジェンダーを生きる－」
　（鷲田清一編『身体をめぐるレッスン 1 夢みる身体 Fantasy』 岩波書店 2006年11月 P53～80）

今回、そこに女装男子を加えて再整理してみた。
すると、以下のような10のパターンになる
①　女性×男性　ヘテロセクシュア
②　女性×女性　ホモセクシュアル・レズビアン
③　男性×男性　ホモセクシュアル・ゲイ
④　女装×男性　ヘテロセクシュアル（身体的にはゲイ）
⑤　女装×女性　レズビアン（身体的にはヘテロ）
⑥　女装×女装　レズビアン（身体的にはゲイ）
⑦　男装×女性　ヘテロセクシュアル（身体的にはレズビアン）
⑧　男装×男性　ゲイ（身体的にはヘテロ）
⑨　男装×男装　ゲイ（身体的にはゲイ）
⑩　女装×男装　ヘテロセクシュアル（身体的にはヘテロ）

さらにジェンダー（見かけの性別）に注目して再分類すると、以下のようになる、

（１）　ジェンダー的なヘテロセクシュアルのパターン
①　女性×男性　真正ヘテロセクシュア（身体的にも女性×男性）
④　女装×男性　擬似ヘテロセクシュアル（身体的には男性×男性で、ゲイ）
⑦　男装×女性　擬似ヘテロセクシュアル（身体的には女性×女性で、レズビアン）
⑩　女装×男装　逆転ヘテロセクシュアル（身体的には男性×女性で、ヘテロだが男女逆転）

（２）　ジェンダー的なレズビアンのパターン
⑧　女性×女性　真正レズビアン（身体的にも女性×女性）
⑤　女装×女性　擬似レズビアン（身体的には男性×女性で、ヘテロセクシュアル）
⑥　女装×女装　擬似レズビアン（身体的には男性×男性で、ゲイ）

（３）　ジェンダー的なゲイのパターン
⑨　男性×男性　真正ゲイ（身体的にも男性×男性）
⑧　男装×男性　擬似ゲイ（身体的には女性×男性で、ヘテロセクシュアル）
⑨　男装×男装　擬似ゲイ（身体的には女性×女性で、レズビアン）

つまり、人のセクシュアリティの在り様は、トランスジェンダーの要素を加えることで、３パターンから10パターンになるということ。
身体構造（性器の形）だけを絶対視する考え方からは絶対に出てこない豊かな「性」の世界がそこにある。

コメント 2

まさに順子さんの面目躍如と言えると思います。
ジェンダーということに（そう単純にくくってよいかどうか解りませんが）をここまで仔細に分類し分析した人は過去になかった（これも単なるわたしの不勉強に過ぎないかもしれませんが）と思います。
これは欧米の人たちには理解できないことかもしれませんけど(~_~;)
by カナッペ (2013-07-11 18:56) 

カナッペさんいらっしゃいま～せ。
ありがとうございます。そう言ってくださるのはあなただけです。
自分としてはかなり整理がついたつもりですが、ジェンダー＆セクシュアリティの学者さんは、当然ながら無視でしょう。
今後もずっと、シスジェンダーを無条件に前提化したヘテロ、ゲイ、レズビアンの３分類で行くと思います。
by 三橋順子 (2013-07-12 01:20)