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都留文科大学「ジェンダー研究1」のコメント票から(10月2日分) [お仕事(講義・講演)]

10月9日(火)

【受講動機】
1年生の場合「先輩に勧められて」、2~4年生の場合「友人に『面白いよ』(もしくは『為になるよ』)と勧められたので」という学生が何人もいる。
一昨年、昨年、講義したことが、学生に伝わっていたことがわかって、とてもうれしい。
中には「ずっと取りたかったのですが、必修の関係で受講できず、やっと最終年度で受講できました」という4年生もいた。

ちょっと驚いたのは「早稲田大学に行っている友人に聞いて・・・」
さらに驚いたのは「群馬県出身なのですが、帰省した時に、高校の先輩で群馬大学の学生の人に三橋先生のことを教えられて・・・」
早稲田はゲスト講義で年2~3回だけ、群馬大学(医学部)は年1回2コマしか講義をしていないのに・・・。

少し考えて「ああツイッターか・・・」と気付く。
情報の拡散の範囲やスピードが以前とは違うのだ。
一昔前なら、このように大学を越えて評判が広まることはあまりなかったと思う。
今は、ほんとうに「口コミ」社会なのだということを実感。

いずれにしても、うれしいと同時に、今年も気合いを入れて講義をしなければ、と思う。

もう1つのパターンは「トランスジェンダーの当事者の生の声を聞けるから・・・」という理由。
う~ん、まあ、そう思うのももっともだけど・・・。

私の場合、生の形での当事者語りは、講義ではほとんどしない。
なぜなら、それは学問ではないから。
私のトランスジェンダーとしての体験や見聞が私のジェンダー&セクシュアリティ論のベース・資料になっていることはもちろんだが、それは素材であって料理ではない。

素材を客に出したら料理でないのと同様、学生に自分語りだけしても講義にはならない。
素材をどう料理するかが料理人の腕の見せ所であるように、自分の経験と見聞をどう体系化・理論化するかが研究者の腕の見せどころ。
お客(学生さん)には、そこのところを味わって欲しい。

そこらへん、今日(2回目)の講義の冒頭で話すつもり。

【おまけ】
女子学生A「あの先生、男から女になった人らしいよ」
女子学生B「えっ、うそ!」
女子学生A「あれ、違うのかな・・・」
女子学生B「体のライン女の人らしいし、きれいな撫で肩だし、違うんじゃない?」
女子学生A「でも朝日新聞の記事(配布した「ニッポン人脈記・男と女の間)に、そう書いてあるよ」
女子学生B「あっ、ほんとだ!うわ~ぁ・・・」

シラバスをちゃんと読むように。
「MtFTG(Male to Female Transgender 男性から女性への性別越境者)として生きてきた私なりのジェンダー&セクシュアリティ観も交えながらお話しする」と書いてあるでしょう。

でも、「驚きから入る」という学問の方法もあるから、まっ、いいか。
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コメント 3

初老

講義の様子がよく伝わってくる記事ですね。学生に人気があるのも、新鮮な驚きを超える、内容の充実さあってこそと思います。今の若い人は、意外にも(失礼)ものの本質を見極める目をしっかり養っている人が多いですね。

三橋さんのご活躍ぶりは大変うれしいことですが、ひとつだけ残念なことがあります。それは、今なお「エリザベス会館」のことを折に触れて話題に出し、ご自身の思い出話を語りたがっているところです。

エリザベス会館は、トランスジェンダーの世界においては功罪併せ持つ、それも「罪」のほうが若干重い存在だったと、私は見ています。そして、とうの昔に歴史的意義を終えたと考えています。

「女装と日本人」のご著書はすばらしい労作で、この分野の一般向け総説としては現在のところ第一級の資料と高く評価しておりますが、後半エリザベスでの三橋さんご自身の思い出話に多くのページを割いて、長々とお話されていて、その分書籍が厚くなりすぎていることに、少しがっかりいたしました。

エリザベス会館は三橋さんにとって、この道に誘ってくれた恩人であり、そこでの日々は大切な思い出であり、三橋順子さんとしての心の故郷であるのでしょう。そのお気持ちは尊重しなければなりませんが、だからこそ研究者としては冷静に、むしろ批判的な目を持って考察するくらいの姿勢でちょうどよいくらいではないでしょうか。三橋さんがエリザベス会館を客観視することができれば、ジェンダー論研究者としてひとつ上のステージに進めると思っています。

生意気な感想で失礼いたしました。
今後ますますのご活躍を祈念しております。
by 初老 (2012-10-13 10:51) 

シロップ


こんにちは。

現在、大学院の修士1年生のシロップと申します。

私は性別越境の服飾に関心があり、三橋先生の『女装と日本人』を拝読して、研究テーマの世界観・大枠を設定することができました。

「資料は、素材であって料理ではない」という言葉を大切に、未熟なりにも研究をしていこうと思います。

ありがとうございました。


――――――――――――――――――――

追記

まことに僭越ながら申し上げます。

エリザベス会館の記述に関して、客観的でないという意見も見受けられますが、私はそうは思いません。

女装者の実態を伝える資料として、読者に親近感を持たせつつ、学問的な内容に誘導しているように見えます。

実体験を料理した結果が、「第5章 現代日本の女装世界」を構成しており、研究の斬新さと受け取りました。

体験も想いも、中世・近世の資料も、すべてを大きな流れで捉え、理論・体系化されていて、これが研究でなくて何なのだ、という感想を持ちました。


修士1年生なので、幼く無知な感想しか抱けないことをお許し下さい。


批判はひとつの意見だとしても、先生の記事が
文字化けのようなコメントが入ったまま、荒らされているのが
居た堪れなかったのです。


by シロップ (2014-01-26 00:09) 

三橋順子

シロップさん、いらっしゃいま~せ。
コメントならびに拙著の感想、うれしく読ませていただきました。

本というものは、世の中に出してしまえば、著者の思いを離れて、いろいろな読み方をされることは覚悟しています。
だからこそ、思いが伝わったときには、いっそううれしいわけで・・・。
ありがとうございました。

by 三橋順子 (2014-01-27 00:54) 

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