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思春期前後の性別違和についての私見 [現代の性(性別越境・性別移行)]

12月5日(火)

「GID学会」の最古参会員である私が知る限り、日本では、子ども(思春期以前)の性別違和に、積極的に介入しようとする医療者はほとんどいない。

そもそも、子どもの性別違和は確定診断が困難であり、「受容的見守り」しかないというのが、大方のコンセンサスだと思う。

思春期以後については、「思春期ブロッカー」の仕様、15歳からクロスホルモンの投与がガイドラインで認められいる。

しかし、多くの医療者が積極的かというと、必ずしもそうではないと思う。
私(医療者ではないが)は、15歳からのクロスホルモン投与は「早すぎる」と思っている。

ちなみに、拙著には以下のように述べている。
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三橋順子『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』(辰巳出版)141頁

質問:思春期以前に身体と逆の性ホルモンを投与したら、どうなりますか?

答え:少年なら男性化(声変わり、骨格形成)、少女なら女性化(初潮、乳房の発達)をある程度、抑制することはできます。ただ、医療倫理的にそうした措置は認められていません。日本では、性同一性障害の診断があれば、思春期以降、性ホルモンの作用を薬でブロックして第二次性徴の発現を遅らせ、15歳になってから、生物学的性とは逆の性ホルモンを投与することは「治療」として認められています。ただ、思春期以前の段階で性同一性障害の確定診断は困難という説もあり(私はその立場)、なかなか難しい問題です。

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三橋順子『これからの時代を生き抜くためのジェンダー&セクシュアリティ論入門』(辰巳出版)168頁

質問:思春期以前の性同一性障害の確定診断が困難というのは、その時点でなんらかの違和感があっても自然と解消されてしまうことがある、ということでしょうか?

答え:そうです。思春期以前(小学校時代)にかなり強い性別違和を感じながら、思春期以後に徐々に緩和するケースは、とりわけ女子ではしばしばあります。大学の講義のリアクション・コメントで、そうした体験を語ってくれる受講生が毎年のようにいます。
もし、そういう人を思春期以前に「性同一性障害」と診断して、「治療」のコースに乗せてしまったら、それは誤診・過剰医療になってしまうということです。



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