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性別変更の手術要件「撤廃すべき」 最高裁弁論前に当事者が訴え [現代の性(性別越境・性別移行)]

9月26日(火)

『朝日新聞』二階堂友紀記者による記事。

長年、ほとんど無視されてきた「GID特例法」の問題点(重要な人権である生殖権の侵害)を、大手メディアが記事にするようになったことは、一歩前進。

しかし、司法の壁は、そうたやすくは崩れないと思う。

生殖不能要件だけでなく、国際的な人権規範に則し、かつ日本社会に適合的な「性別移行法」はどうあるべきか、枠組みから総合的に議論し直す必要がある。

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性別変更の手術要件「撤廃すべき」 最高裁弁論前に当事者が訴え

LGBT法連合会が開いた記者会見。当事者や支援者が、性同一性障害特例法の手術要件撤廃を訴えた=2023年9月26日午後4時14分、東京・霞が関の厚生労働省、二階堂友紀撮影

トランスジェンダーが戸籍上の性別を変更する際に性別適合手術を求める法律は、憲法に違反するのか。注目の家事審判をめぐる最高裁の判断が近づくなか、全国の当事者や支援者らでつくる「LGBT法連合会」は26日、東京都内で記者会見を開き、法律の要件を撤廃するよう訴えた。

性同一性障害特例法は、戸籍上の性別変更にあたり、生殖能力の喪失などを求めており、「手術要件」と呼ばれている。最高裁はこの規定が憲法に違反するか審理しており、27日には性別変更を求めた申立人側の意見を聞く弁論を開く。法連合会はこれに先立ち会見を開き、トランスジェンダーの当事者らが思いを語った。

18歳で「絶望に近い感情」
トランス男性の木本奏太さん(31)は、18歳の時、戸籍上の性別を変えるには「体にメスを入れ、子どもを残せないようにしなければならない」と知った。「『その条件をのまなければ、真の男性ではない』と突きつけられているような気持ちになった。絶望に近い感情だった」

「手術をして性別を変えるか、死ぬか」の二択だと思い詰めたすえに、性別適合手術を受けることを決意。昼夜問わずバイトをして手術費用200万円をため、25歳で乳房と子宮・卵巣を切除する手術を受けた。

特例法の要件を満たし、戸籍上の性別を女性から男性に変えた。すでに男性として生活していたため、戸籍との不一致がなくなり、社会生活はスムーズになった。しかし、性自認のままに生きるという、多数派にとっては当たり前の権利を得るために払った代償は、あまりにも大きかった。

木本さんは会見で「(特例法の)要件がなかったら、手術をしていなかったと思う」と振り返った。「僕の体のあり方は僕が自己決定すべきことで、国や他の誰かが決定することではない。不妊化要件は、自分の体に関する自己決定権、性と生殖に関しての国の不当な介入だと感じている」

父なのに「養母」に
トランス男性の杉山文野さん(42)は、乳房の切除はするが、子宮・卵巣は摘出しないという選択をした。「心から手術を望んでいるのか」「手術しないと(スムーズに)社会生活を送れないため、手術したいと社会の側から思い込まされているのではないか」と自問自答した結果だった。

今では13年あまり連れ添った女性パートナーと暮らし、友人から精子提供を受けて2児を授かった。だが、生殖能力を失わせる手術を受けていないため、戸籍上は女性のまま。パートナーと戸籍のうえでは同性同士となるため、結婚できない。

パートナーの強い希望もあり、現在は、子どもと法的な関係を持つため養子縁組して、2人の子の「養母」という形になっているという。杉山さんは会見で「当事者の実生活と書類上の表記がちぐはぐになっていることで、多くの生きづらさを生んでいる。一刻も早い法改正を心から望んでいる」と話した。

「人権侵害の懸念、極めて強い」
法連合会は、特例法の要件について「人権侵害の懸念が極めて強い手術要件を中心に、撤廃すべきである」としている。

性同一性障害特例法の「手術要件」が憲法に違反するかどうかについて、最高裁は年内にも結論を出す見通しだ。(二階堂友紀)

『朝日新聞』2023年9月26日 20時40分
https://www.asahi.com/articles/ASR9V6HPMR9VUTIL00W.html
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