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「トランスジェンダーの82%は診断を受けていない」 は、ほとんど虚説 [現代の性(性別越境・性別移行)]

9月19日(火)

最近、あちこちで見かける
「トランスジェンダーの82%は診断を受けていない」
という言説、ほとんど虚説に近い。

何%というのは、分子/分母から導き出される割合だが、この件、分母も分子も、学問的に信頼できる推定値はなく、割合が計算できない。

まず、分母(トランスジェンダーの総人数)だが、大阪市の調査データの0.7%が最大値だろう。
日本の全人口1億2600万人に当てはめれば88万2000人になる。
ただ、これはトランスジェンダーの定義が緩く、実態的にはかなり過大だと思う。

トランスジェンダーの定義を「生まれた時に指定された性別とは別の性別で生活している人」とするならば、0.1~0.2%が実態だと思う。
とすると、12万6000~25万2000人ということになる。

次に分子(GID診断を受けているトランスジェンダーの数)だが、これも、信頼性の高いデータはない。

戸籍の性別を変更している人は、法律的にGID診断を受けているので、2004~22年で1万1000人というデータ(ほぼ確定値)が基数になる。

過去の調査(針間克己ほか2017)で、GID診断者の戸籍変更率がFtM23.3%、MtF16.0%というデータがある。
戸籍変更済みの性比をFtM:MtF=3:1として試算すると。GID診断済の人数は5万2596人(MtF1万7188人、FtM3万5408人)と推計できる。

ということで、分子/分母(診断を受けているトランスジェンダー/トランスジェンダーの総数)は、以下のようになる。

分子/分母最大=5万2596/88万2000人=5.96%
分子/分母最小=5万2596/12万6000人=41.7%

前者によれば、82%どころか94%が「診断を受けていない」ことになる。
後者によれば。58%が「診断を受けていない」ことになる。

推計の幅が大きすぎる。
私は、後者の数値が実態に近いと考えるが、あくまで推測である。

こういう場合は「よくわからない」と言うのが学問的に正しい。
それを「82%は診断を受けていない」とあたかも確定的なデータでもあるかのように言いつのるのは虚説だし。はっきり言えば「デマ」である。

「活動家」が自分たちの政治的主張に都合が良い数値を声高に叫ぶことはしばしばあるが、これもその一例と考えるべきだろう。
もうそういう愚かなことは止めようよ。

診察が受けやすい大都市部(とりわけ首都圏)では、「生まれた時に指定された性別とは別の性別で生活している人」の内70~80%は、「GID診断書」を持っていると思う。

医療介入拒否主義者を除き、社会生活上、診断書があった方が、間違いなく便利だから、そういうことになる。

つまり「活動家」の主張の真逆に近いのが、大都市部での実態だろう。

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