SSブログ

性別移行済の被告へのホルモン投与問題 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2月12日(金)

性別移行済の被告へのホルモン投与問題については、前にも指摘したことだけど・・・。
http://junko-mitsuhashi.blog.so-net.ne.jp/2015-12-02-2
この被告は、すでに身体外形的にも、法的性別(戸籍)的にも女性であって(だから拘置所で女性として扱われている)、男性から女性への移行を望む性同一性障害の診断基準には適合しない。
つまり、性同一性障害は既往症であって、現往症ではない。

だから、「性同一性障害」の治療として女性ホルモン投与を求めるのは論理的に間違いで、いろいろな理由で女性ホルモンが欠乏し、それによって心身に問題が生じている女性(女性ホルモン欠乏症)として治療(女性ホルモン補充療法)を求めるべき。

とはいえ、心身の状態を悪化させている刑事施設収容者に、医師が治療の必要性を認めているにもかかわらず、治療を行わないのは重大な人権侵害であることは、言うまでもない。

------------------------------------------
性同一性障害の被告にホルモン投与、なぜ認められない?
AS20160209003517_comm(2).jpg
戸籍上の性別変更が認められた人数の推移

東京・銀座の元ホステスの女が交際相手を殺害したとされる事件。性同一性障害で男性から女性になった元ホステスに対し、収容先の東京拘置所が女性ホルモンの投与を拒んだ。弁護人や医師らは体調悪化を懸念するが、なぜ投与が認められないのか?

■拒む拘置所「病気ではない」

この元ホステスの女(29)は東京地裁で昨年12月にあった裁判員裁判では時に震え、口はほとんど開いたまま。しゃべろうとしても、何度も言葉を詰まらせた。弁護人は体調不良の一因として、「拘置所が、必要なホルモン剤を投与していない」と指摘した。

弁護側によると、女は男性として生まれたが、10代で性同一性障害と診断された。18歳から女性ホルモンの投与を開始。20歳までに性別適合手術を受け、戸籍上も女性になった。昨年2月の逮捕後、警察署はホルモン投与を認めたが、その後に移された東京拘置所は投与を拒んだ。弁護人が投与を求めたが、「病気ではない」と応じなかった。

裁判では、女の精神鑑定をした医師が出廷。弁護側の質問に対し、「卵巣がなく、女性ホルモンが欠乏している状態」と指摘し、「投与が必要。投与をしないと精神的に不安定になる」と懸念を示した。

昨年12月4日の判決は懲役16年(求刑懲役18年)。ホルモン投与の問題は触れられなかったが、弁護側は拘置所のやり方を問題視しており、何らかの対応を検討しているという。

■医師による「個別の判断」に

そもそも、拘置所や刑務所は、性同一性障害がある人たちにどう対応することになっているのか。

法務省は2011年、拘置所など全国の刑事施設に向けて指針を出し、昨年改正している。それによると、戸籍上の性別が変わっていれば、収容先もその性別に合った区画や施設となる。戸籍の性別が変わっていなくても、男性から女性への適合手術を受けていれば、入浴や身体検査は基本的に「女子職員による対応とする」。法務省によると、性同一性障害と診断されたかその傾向のある人は昨年9月時点で約50人いたという。

問題となっているホルモン投与について、この指針は極めて専門的な領域であり、投与をしなくてもすぐに大きな影響が出るとは考えられないと説明。「特に必要な事情が認められない限り、国の責務として行うべき医療上の措置の範囲外」としている。投与の是非は、医師による「個別の判断」となっており、今回のケースについて法務省は「個別の事案は答えられない」という。

■「指針改めるべきだ」

法務省の指針や対応を、関係者はどう見ているのか。性的少数者の課題に取り組む弁護士らでつくる「LGBT支援法律家ネットワーク」の山下敏雅弁護士は「収容前に性別適合手術や長期のホルモン療法をしていた場合、継続的な投与が必要になる。刑事施設でも認められるべきで、指針は現実と合っていない」と批判する。性同一性障害には個人差があり、「実態に合わせるよう指針を改めるべきだ」と指摘する。

性同一性障害の当事者らでつくる「gid.jp 日本性同一性障害と共に生きる人々の会」は13年に、指針の改善を求める要望書を法務省に提出した。「刑務所や拘置所の医師に障害の専門的な知識があるとは限らない」。こう語る代表の山本蘭さんは「指針で『専門知識がある医師の意見を聞いて適切に対処する』と明確に示すべきだ」と訴えている。(塩入彩、金子元希)

『朝日新聞』2016年2月11日07時21分


nice!(0)  コメント(1)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 1

アンデルセン

一見「病気じゃない」を口実にした被疑者イジメの一種に見えますが(私はそれを疑いました)、実態は刑務所拘置所内の財政上の問題ではないでしょうか。

刑務所内ならタダだからと、わざわざ捕まってから治療を受ける不届きものもいるとか。収容者の治療費は全額国が負担、各種健康保険は使用できず、その金額が財政を圧迫しているそうなので、優先順位の高いものから割り振った場合、女性ホルモン投与は「贅沢」の一種との認識で切られたのかなと。決して良いことではありませんが、いくらなんとかしてあげたくても先立つものがなければ動きようがないのが宮仕えです。

記事の範囲では、弁護士さんグループは費用の問題に一切言及していませんが、権利の主張と共に刑務所内でも受刑者個人の負担で受けられる治療枠を作るなど譲歩(?)案の提示などはないのでしょうか。
by アンデルセン (2016-02-13 17:24) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0