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『現代思想』2015年10月号「特集:LGBT」拾い読み感想 [現代の性(同性愛・L/G/B/T)]

9月29日(火)

『現代思想』2015年10月号(青土社)「特集:LGBT」を拾い読み感想。

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(1)「(LGBTが)今年の流行語大賞になるんじゃないかと言われているのですよ!」という東小雪さんと、LGBT概念に感謝しつつも「さようなら」と決別を告げる牧村朝子さんが実に対照的。
私がどちらにシンパシィを感じているかは、LGBT特集への寄稿なのに「LGBT」という言葉を一度も使っていないことから察していただきたい。

(2)マサキチトセさんの論考「排除と忘却に支えられたグロテスクな世間体政治としての米国主流 「LGBT」運動と同性婚推進運動の欺瞞」が論題の文字数だけでなく、内容的にも圧倒的な迫力。
LGBT運動と商業資本の安易で無自覚な癒着を、ブログやFBなどでブツブツ批判していた私としては、わが意を得た思い。

(3)「富士高校放火事件」を掘り起こして再構成した石田仁さん、ほんとうに良い仕事をしている。
それにしてもこの事件、なぜ日本の同性愛史の中でまったく忘れられてしまったのだろう? 偶然なのか、それともなにか理由があるのか。
とても重要な問題だと思う。

(4)吉野靫「砦を去ることなかれ」の中で「古参の精神科医」という表現があった。「誰のことだろう?」と思ったら針間克己先生のことだった。
針間先生が「若手」だった頃から知っている私としては、実に感慨深い。

(5)「特集」の全体構成的に、巻頭の対談とその後に続く論考との落差が有りすぎ。
まあ、『現代思想』も商業誌だから、営業政策的に巻頭に「スター」対談を持ってくるのはわからないわけではないが・・・。
1996年に候補止まりだった「AC」を越えて、「LGBT」が流行語大賞になるかもしれないことを「すごいこと」「すごいですね」と対談者が確認しあう場面、この巻頭対談の意識レベルを知る上で重要なポイントかもしれない。

(6)巻頭対談で信田さよ子さんが「あの姿(東京ディズニーリゾートでのレズビアン・カップルの結婚式のウェディングドレス姿)が『美しい』ということが、メディア戦略的にも本当に良かったと思いました」と語っている。
私は最近、ある雑誌の原稿に「ゲイ・カップルの挙式写真はあまり流れず、美しく華やかなレズビアン・カップルの写真ばかりが流れるのかを考えると、あきらかに『見られる性としての女性×2』というジェンダーバイアスが掛かっていて、問題だと思う」と書いたのだが、女性の口からこういう肯定的な発言が、しかも『現代思想』という場で出るとは思いもしなかった。
大きな驚きというか、衝撃に近い。

(7)LGBTという言葉が流行り始めた頃から指摘しているが、「まず連帯ありき」という考え方が間違い。
LGBTと言っても、経済状況や社会的ポジションは様々なわけで、意見が異なるのは当然のこと。
何について連帯するかということをしっかり詰めた上での、1点突破・合目的な連帯を考えないと無理。
だから『現代思想』LGBT特集で露わになった「分裂」はむしろ当然のことだと思う。
LGBTの間にも様々な「違い」があることを前提に、どういうテーマ、どんな提案なら連帯できるかを考えないといけない。
逆に「このテーマに同調できるの人がLGBT」というような考え方はまったくの倒錯。



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コメント 3

A.J.

古参とは、大久保彦左衛門みたいな感じかな・・・
まあ、読んでみるか。

by A.J. (2015-10-01 09:46) 

A.J.

「時代錯誤の古参精神科医」とメッタ切りされているかと思ったら、穏当な引用で、ちょっと拍子抜けでした。
数年後には「老害な精神科医」?
by A.J. (2015-10-01 21:50) 

三橋順子

A.J. さん、いらっしゃいま~せ。

数年後に、「古老が語る『性同一性障害』があった頃」というテーマで座談会をしましょう。
by 三橋順子 (2015-10-02 01:43) 

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