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「女粧(おんななり)」と「女装」 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

6月26日(金)

「女装」という言葉の意味
① 女性の服飾(いでたち)
② 男性が(女のようにみえることを目的に)女性の服飾を身にまとうこと

②の意味が生じるのは、近代(明治20年代)以降。
②の意味の「女装」は近代語。

940807(2).jpg
↑ この画像は、1994年8月7日「東京湾納涼船」で、乗り合わせた3人のお嬢さんと「C.C.ガールズ」風に撮影したもの。
4人全員が①の意味の「女装」、1人だけ②の意味の「女装」も当てはまる。

「男性が(女のようにみえることを目的に)女性の服飾を身にまとうこと」を意味する「女装」近代語だとしたら、同じことを前近代語ではをなんと言ったのだろうか?

それは、「女粧(おんななり・おんなづくり)」。
対義語は「男粧(おとこなり・おとこづくり)」。

【用例】
「男ニシテ女粧(おんななり)シ、女ニシテ男粧(おとこなり)シ・・・」
 (『東京違式詿違条例』第62条、1872年)
「島田髷に振袖、幅広の女帯を〆めて女粧(おんなづくり)したるなり」
 (榎本破笠「下谷の風俗」『文芸倶楽部』6‐11、1900年)

ちなみに、 「女形」も「女形容」で「おんななり」である。

画像は、鈴木春信「陰間の送り」から。
鈴木春信「陰間の送り」3.jpg
島田髷に振袖、幅広の女帯をしめた典型的な「女粧(おんなづくり)」である。

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コメント 3

ルクレツィアの娘

こんにちは。いつもいろいろ勉強させていただいています。

いつも思うのですが、江戸初期の若衆や児小姓の振袖姿は、女装なんですか? それとも、成人式のキラキラ羽織や族のお兄さんたちのコテコテ刺繍衣装みたいなものなんですか? 女性が着る振袖と男性が着る振袖は、生地とか染めとか刺繍に違いがあったんでしょうか?
by ルクレツィアの娘 (2015-06-30 17:28) 

三橋順子

ルクレツィアの娘 さん、いらっしゃいま~せ。
>女性が着る振袖と男性が着る振袖は、生地とか染めとか刺繍に違いがあったんでしょうか?

おそらく違いはないと思います。
確実な証拠は乏しいですが、春信の絵に、異なる絵の若衆と娘の振袖が同じ柄の例があります。

>江戸初期の若衆や児小姓の振袖姿は、女装なんですか?
とてもむずかしい質問です。
以前の私は「女装的」と考えていましたが、そもそも女装か男装かという二元論的な発想が間違っていることに気づき、2013年に出した論文「性と愛のはざま-近代的ジェンダー・セクシュアリティ観を疑う-」(『講座 日本の思想 第5巻 身と心』岩波書店)では「若衆装」という概念を提唱しました。
現在は、振袖という衣服は、若衆装が元であり、それを娘たちが真似をして(受け入れて)女装(女性の衣料)になった可能性が高いと考えています。



by 三橋順子 (2015-07-02 03:42) 

ルクレツィアの娘

お返事ありがとうございます。
なるほど、若衆→娘なんですね。目からうろこです。言われてみればそうかも!と思いました。
若衆の振袖に手紙を投げ入れる男たちの話があり、どうやらけっこう真剣にその技術を磨いていたらしいこともどこかで読みましたが、エピソードが若衆ばかりなのは、未婚の娘は表座敷に勤務してなかったからだと考えていました。
が、そもそも振袖が若衆の衣装だったと考えたらなんだか納得しました。
by ルクレツィアの娘 (2015-07-08 09:24) 

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