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中国人は、今でも女性の足が好き?―欲情装置の民族文化― [お仕事(講義・講演)]

11月1日(土)
都留文科大学の「ジェンダー研究1」の講義の第3講「性と社会を考える―セクシュアリティ論の基礎―」で、 セクシュアリティの構築性という話をした。

性的欲望の存在そのものは、生物学的な身体に由来する本能的なものであっても、性的欲望の質は、社会・文化的に構築されたもの、ということ。
つまり、何に対して性的欲望を抱くか、なにが欲情装置になるかは、歴史的・文化的に異なり、変化する。

例として、日本の前近代から近代にかけて、女性の乳房に向けられる男性の視線の変化に注目する。
具体的には、前近代においては、必ずしも性的視線の対象ではなかった乳房が、明治時代以降の西欧文化の流入にともない、次第に性的視線の対象になっていく。
そして、戦後、「乳房大好き」のアメリカ文化の影響によって、その傾向は助長されていく。
さらに1980年代には、母性の象徴だった母親の乳房にすら性的視線が向けられるようになり、公共の場(電車の中など)における授乳行為ができなくなっていく。
また、ほぼ同時期の1980年代後半に、「巨乳」という言葉が造られ大衆化し、大きな乳房への性的嗜好(Sexual Preference)がメディア(男性向け写真週刊誌など)によって煽られて一般化していく。

例年、こんな話で終わるのだが、今年は、性的嗜好の「どんな部位に性的魅力を強く感じるか?」というの絡みで、清朝末期、明治時代の末に日本に留学した中国人留学生が、下宿先の日本人女性の着物の裾から見える素足に欲情して困った、という話も紹介した。
乳房の話が「欲情装置は歴史的に異なる」事例なら、足の話は「欲情装置は文化的(地域的・民族的)に異なる」事例になる。
井上章一先生に聞いた話で、ちゃんと典拠を調べてないので(留学生の日記だったと思う)、雑談的に話したのだが、思いがけないリアクションがあった。

受講生の中国人留学生がコメント票にこう書いてくれた。
「今の中国でも足首に魅力を感じる人はまだいっぱいいます。僕も『あの人の足首はきれいだなぁ』と思ったことがけっこうあります(笑)」

補足すると、中国人の欲情のポイントは「脚」ではなく「足」、足首より先の部分にある。
小さな足に過度にこだわった「纏足」という中国特有の身体変工文化と、こうした足への嗜好は強く関係している。
それに対して、日本人は「脚」(太腿や脹脛)に欲情する人は多いが、「足」に嗜好がある人は少ないと思う。

1人の学生のコメントだから、あまり重きを置くことはできないが、それでも前近代からの中国人の伝統的な性欲文化が、中華民国の近代化、共産党政権下の中華人民共和国、さらに21世紀に入っての急速な資本主義化を経ても、なお継承されているとしたら、とても興味深い。
日本でも、江戸時代以来の女性の「うなじ」への性的な視線は、現代になってもまだ継承されている。

欲情装置の民族文化は、それなりに根強いということを再認識した。

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コメント 5

西尾明子

私は真っ赤なペディキュアした素足…、細い足首に欲情しますわ(笑)。
by 西尾明子 (2014-11-01 21:32) 

三橋順子

西尾明子さん、いらっしゃいま~せ。

それは真っ赤なペディキュアに欲情しているのでは?
by 三橋順子 (2014-11-02 02:36) 

西尾明子

その通りかも。あたしは女装歴は20年超だけど、ペディキュアをしたのは2、3年前から。今は無しの足は考えられません…。
by 西尾明子 (2014-11-02 04:19) 

YUKO

中国で「足」に欲情するのに「纏足」という文化的ベースがあるのなら、日本の「うなじ」には文化的ベースはないのでしょうか?
by YUKO (2014-11-02 14:42) 

三橋順子

江戸時代初期までは、多くの女性は垂れ髪で、「うなじ」は出してませんでした。それ以前にも「うなじ」へ視線はあったと思いますが、やはりそれが強まるのは女性が結髪をするようになる江戸時代中期(18世紀)以降だと思うのです。では、なぜ女性が結髪するようになるか?というと、また話がややこしくなるのですが。

by 三橋順子 (2014-11-02 16:59) 

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