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福島県の子供の甲状腺癌多発問題 [事件・事故]

3月11日(火)
今夜の「テレビ朝日」の「報道ステーション」が「わが子が甲状腺がんに… 原発事故との関係は」という特集を組んで、福島県の子供に甲状腺がんが多発していることを大きく報じた。
報道によると、福島県で震災当時18歳以下だった約27万人の検査で33人(約8180人に1人)の甲状腺がんが見つかり、これは従来年間100万人に1~2人と言われていた発症率よりはるかに高いという。
実は、福島県で子供の甲状腺がんが33人見つかったという報道は2月の上旬にされていて、それを受けた研究会も行われていて、必ずしも新しい情報ではない。
しかし、視聴率が高い報道番組で、しかも震災3周年の夜に、こうした形で報道されたインパクトはかなり大きいと思う。

まず、福島第一原発原発から高濃度の放射性物質が放出された2011年3月15日以降の1週間ほどで、福島県だけでなく、東日本の広範囲(東京を含む)に膨大な量の放射性ヨウ素(主にヨウ素131)がばらまかれた。
それらは、呼吸によって体内に取り込まれ、甲状腺に蓄積する。
ヨウ素131の半減期は8日なので、8日で半分に、16日で4分の1に、24日で8分の1という具合で減少し、数カ月もすればほとんどなくなってしまう。
しかし、その間、周囲の組織に放射線(ベータ線、ガンマ線)を浴びせ、甲状腺の細胞を傷つける。
その結果、傷ついた細胞の中に癌化するものが増えて甲状腺癌が発症する。
その確率は、大人では低く、細胞分裂が盛んな子供で高くなる。

つまり、ヨウ素131に曝された子供の甲状腺癌の発症率が高くなるのは、まず確実ということ。
問題は、どの程度、発症率が上がるのか、あるいは被曝後、いつ頃から発症率が高まるのかのデータが少ないこと。
参考になるのは、チェルノブイリ原発事故後のデータしかないが、被曝の程度や被曝の仕方が違うので、比較がなかなか難しい。

それと、子供の甲状腺癌は進行が遅く、一般には気づかれないことも多く、それが発症率の低さになっているという説もある。
一方、成人の場合、健康な人でも詳しく調べれば、10人中約2~3人の割合で甲状腺内の「しこり(結節)」が見つかるという話もあり、その「しこり」を腫瘍と見れば、発症率はとても高くなる。

今回のケースも、自覚症状がない子供を、綿密に検査して腫瘤を見つけた結果であって、自覚症状に基づく従来の発症率と単純に比較していいものなのか、いささか疑問である。

人体では毎日数1000個単位で遺伝子の病変が発生し、健康な人でも、遺伝子が病変した癌細胞がある程度の個数、体内に存在する。
しかし、多くの人は、免疫システムで身体を統御しているので、癌細胞がそのまま悪性腫瘍になるわけではない、
そうした考え方に立つと、放射線被曝による癌の発症率をどう認識するかは、ますます難しい問題になってくる。
癌細胞なんて、丁寧に探せば、たいていの人に見つかるのだから。

いずれにしても、あと5年も経てば、どの程度、甲状腺癌の発症率が上がってくるか、はっきりするだろう。
そうなれば、馬鹿学者たちももう「事故の影響考えにくい」とは言えなくなるはずだ。
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福島の甲状腺がん「放射線影響考えにくい」 国際研究会
東京電力福島第1原発事故の健康影響を議論する環境省や福島県立医大などが主催の国際研究会が23日、都内で3日間の日程を終え、これまで福島県で見つかった33人の甲状腺がんについて「放射線の影響は考えにくい」との結論をまとめた。

研究会では、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故では4~5年後から周辺の子供たちの甲状腺がんが増加し、事故時0~4歳の小さい子供ほどがんになるリスクが高かったと報告された。

福島の甲状腺がんは事故後3年以内の発見で、乳幼児のがん患者もいないことなどから、高性能の機器を使ったことで、これまでは見つけられなかった症状の無い患者を見つけた可能性が高いとした。

福島県が事故後、県内の18歳以下を対象に実施している検査で、33人の甲状腺がんが見つかっている。〔共同〕
『日本経済新聞』2014/2/24 0:54
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO67281080T20C14A2CR8000/
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YUKO

チェルノブイリでは明らかな甲状腺がんの増加および奇形・障害の子供達の増加が見られました。原爆後の臨床例もかなりのもみ消しがあったようです。原爆に関しては敗戦国であったことを考慮したとしても、チェルノブイリとの比較では、白人種であろうと黄色人種であろうと人間であるというDNAレベルは変わらない訳で、同じ事が起こる事は素人目で見ても当たり前。それを「放射線の影響は考えにくい」という結論は科学者・医療者両側から見て許せないレベルだと思います。

あぁ、腹が立つ〜
by YUKO (2014-03-13 01:19) 

三橋順子

YUKOさん、いらっしゃいま~せ。
おっしゃるとおりで、原発事故→ヨウ素131大量放出→福島の子供たちが摂取→子供の甲状腺癌発症率上昇というのは、論理的・システム的に明らかな定性的な変化です。
それを定量的なデータ(発症までの時間など)がチェルノブイリと合わないからといって「放射線の影響は考えにくい」と結論づけるのは、あまりに非科学的というか、科学でも医学でもありません。
最初から「放射線の影響は考えにくい」という結論があって、それを鸚鵡のように繰り返しているだけなのだと思います。
by 三橋順子 (2014-03-14 20:42) 

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