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「慰安婦」問題に触れたくない理由 [現代の性(一般)]

2月26日(金)

2日前の『夕刊フジ』の1面。
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あまりにすごい見出しで、何事かと思った。

ハーバード大学のラムザイヤー教授の、日本軍の「戦地慰安所」が近代公娼制の戦地版であるという見解は、基本的には正しい(例外はある)。

しかし、そもそも近代公娼制そのものが、人権蹂躙・女性搾取の極悪システムなのだから、まったくなんの「免罪」にもならないのだよ。

私は、一応、セクシュアリティの歴史、とくに買売春の歴史を専門にする研究者なので、「慰安婦」問題にも関心はあるし、主な文献には目を通している。

ただし「慰安婦」問題は、歴史事実としてよりも、日韓の政治的な問題として扱われることが多く、史料に基づく実証的な研究が軽視される傾向がある。

これは、今回のような右翼からの発言でも、逆の韓国側とそれを支援する左翼からの発言でも同様。
SNSで「慰安婦」問題に触れると、すぐにどちら側からの反発が来る。
反論ではなく、情緒的・政治的な反発が。

だから、触れたくない。
大学の講義ではきちんと自分の見解は述べるけど。
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コメント 2

KumatanPentan

 『新宿 性なる街の歴史地理」のp122当たりの記述から、近代公娼制についてもそこまで否定的ではないのかなと印象を持っていたので、少々意外でした。
 救うべき当事者がみんな亡くなってしまったら、ナショナリズムの空中戦だけがひたすら続いて、誰も近寄りたくない分野になってしまうかもしれません。

 法と経済学の論文誌に掲載されたということですので、法的問題を経済的効率性の問題に帰着させようとする学問分野の性質上、単に「契約」というところだけに着目して、その背後にあるものは無視しているのかと思います(そういう姿勢が経済学の強みなのですが)。そういうところが、歴史修正主義系の論者に着目されっちゃったんでしょうね。
by KumatanPentan (2021-03-31 09:27) 

三橋順子

KumatanPentanさん、いらっしゃいま~せ。

拙著、ご購読、ありがとうございます。

「契約」の文面だけに注目すると、ほとんどの場合、合法的な契約と言えると思いますが、問題はその契約がどういう状況で行われたかだと思います。

また、「契約」の結果が、人身拘束をともなう性労働の強制だとしたら、それは、やはりNGでしょう。

あと、近代公娼制の最大の問題は、国家の関与です。
by 三橋順子 (2021-03-31 18:39) 

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