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「読むのが怖い」論文 [現代の性(性別越境・性別移行)]

2月20日(木)

『現代思想』2020年3月臨時増刊号「フェミニズムの現在」掲載の千田有紀「『女』の境界線を引きなおす――『ターフ』をめぐる対立を超えて」、危ぶんだとおり、というかそれよりひどかった。
すでに指摘している通り、問題設定(枠組み)からして、TERFに乗ってしまっている。

私は『女たちの21世紀』98号(アジア女性資料センター、2019年8月)に寄稿した「日本のフェミニズムが問われるもの―トランスフォビアの克服とトランス女性との連帯ー」という論考で次のように書いた。
「TERFの台頭を許し身体本質主義に退行して再びトランス女性排除に向かうのか、それとも、トランスフォビアを克服し、トランス女性を「女性」として包摂し、ジェンダー&セクシュアリティに基づくあらゆる差別に反対する同志として連帯していくのか、日本のフェミニズムは岐路に立っている」

そのフェミニズムからの答えが、千田論文なのか・・・。
トランス排除批判派の1年半の真摯な議論の積み重ねはなんだったのか?
どうして、それをあっさり無視できるのか?

日本のフェミニズムの現状と未来を思うと、暗澹たる気持ちになる。

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『現代思想』「フェミニズムの現在」掲載の千田論文が、トランスジェンダーの言い分や現実を踏まえていないという批判はその通りだが、実はTERFの側の言説もちゃんとリサーチしていない。
「論文」の中で対抗させているトランスとTERFの双方の言い分をちゃんと調査しないで「論文」が書けてしまうという、まさに「神業」。
研究者という(建前であっても)中立的な立場で、現実に起こっている複雑な対立問題について書くのなら、両者の言い分をちゃんと聞いて、それに基づいて分析すべきだと思う。
現実の社会で起こっていること、そして社会の中で懸命に生きているトランスジェンダー当事者の言い分を軽視する「社会学者」なんていらない。
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千田論文、これだけTERF(トランスジェンダーを排除する過激派フェミニスト)言説に乗ったトランスジェンダー差別的な内容で「論文」として日本語活字媒体で公になったものは今までにないので、今後永く批判の起点として使えそう。
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千田論文の論題「境界線を引きなおす」、誰が引きなおすのか?(主語は誰?)、そんな権限(権力性)を誰が誰に付与するのか?と考えると、けっこう重大な問題。
なのに、それをあっさり論題にしてしまう感覚が信じられない。
しかも、それだけ大上段に振りかぶりながら、結論的に具体的な線引きをはっきり語っていない(結局、男性器の有無なの?)お粗末。
まして、一方的に境界線を引きなおされる側(線引きにより排除される側)の心情なんて、想像もしていないように思う。
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野良講師風情が、大学教授に言うことじゃないけど、
「よく知らないことを論文に書いてはいけません」
ということだと思う。
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