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浜野佐知映画祭(1)ピンク映画「平成版阿部定 あんたが、欲しい」 [映画・コンサート]

8月5日(月)
(続き)
14時、渋谷円山町の「オーディトリウム渋谷」で開催中の「浜野佐知映画祭」へ。
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ロビーで浜野監督にご挨拶。
1部の1本目は浜野佐知監督のピンク映画「平成版阿部定 あんたが、欲しい」(主演:時任歩、1999年、エクセス配給)。
実は、今日、初めてピンク映画というものを観る。
浜野監督の作品だけでなく、ピンク映画は1本も見たことがない。
近年になって、研究の必要上、日活ロマンポルノを数本見たことがあるだけ、

この作品は「平成版阿部定」という題名の通り、昭和11年(1936)に起こった「阿部定事件」を現代にアレンジした作品。
「阿部定事件」は、東京・中野の「石田屋」の仲居阿部定が主人であり愛人である石田吉蔵を性行為中に扼殺し、その遺体から男根を切断して逃亡した事件。
猟奇事件として、当時、大評判になった。
現代版では、税理士の夫をもち、副業のコインランドリーを管理する美しい人妻が、新宿2丁目のゲイバーで「売り専ボーイ」をやっているゲイの青年に惹かれ、彼を誘惑してSexにのめり込んでいく。
そして快楽を追及するあまり、性行為中に青年を絞め殺し、死後も勃起したままの男根を切り取って逃亡、蓮の花が咲く池の畔でオナニーにふけるというラスト。
ラストの「料亭」での二昼夜にわたるSexシーンは、実際の「阿部定事件」のディーテルを、浴衣の紐で首を絞めるところなど、かなり丁寧に摸していることがわかる。

全体として浜野監督らしい美しい映像、というか、「第七官界彷徨—尾崎翠を探して」(1998年)や「百合子、ダスヴィダーニヤ」(2011年)などの文芸作品で映像の美しさに定評がある監督は、ピンク映画でも美しい映像を撮っていたのだということが確認できたのが大きな収穫。
監督のお話では、ピンク映画というのは、開始から3分?以内に主人公がSexを始めなければいけないとか、いろいろ約束事が多く、どうしても様式的になってしまう。
その中で、どれだけ描きたいものを盛り込むかが腕の見せ所なのだそうだ。
ピンク映画では口説くという行為が最低限しかなされない。
男女が出会って見つめ合うと、もう次のシーンではSexしている。
Sexシーンでは言葉がない。
女性は延々とよがり声だけあげて、男は黙々とひたすら腰を使うだけ。
言葉でのコミュニケーションが好きな私は、こんなことして楽しいのだろうか?と、かなり違和感。

この作品でいちばん疑問なのは、なぜ誘惑する相手が二丁目のゲイの青年なのか?ということ。
男性経験しかなかった青年は、人妻の誘惑にほとんど抗う術もなくあっけなく溺れていく。
これでは、ヘテロセクシュアリティがホモセクシュアリティに一方的に勝利しているようで、なんとも嫌な気がする。
理不尽にも、人妻に思い人を奪われるゲイバーの店主があまりにかわいそう。
性別を入れ替えれば、レズビアンの女性に「ちんぽ入れられれば、男嫌いなんてすぐに治るよ」とエロオヤジが言いながら迫るのに等しい。
言葉を換えるならば、メジャー・セクシュアリティのマイナー・セクシュアリティへの横暴。
お互いのセクシュアリティを尊重するという考え方からすると、大いに疑問だ。
「こんな脚本を書いたのは誰だ! 責任者出て来い!」
と言いたくなるが、考えてみれば、セクシュアリティの相互尊重という考え方は1999年段階ではほとんどなかったから、仕方がないのか・・・。
(続き)

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コメント 2

ヤマザキ

すみません。「脚本書いた責任者」です。他でも同様の批判を受けました。当時、セクシュアリティの曖昧な領域があるのではないかと考えたのですが、「メジャー・セクシュアリティのマイナー・セクシュアリティへの横暴」と言われると、お詫びするしかありません。
昨日は「浜野佐知映画祭」に来て頂き、ありがとうございました。ご批判を含め、感謝しています。
by ヤマザキ (2013-08-06 08:35) 

三橋順子

ヤマザキさん、いらっしゃいま~せ。
あのストーリーで、人妻の相手がゲイ男性である必然性はないと思うのです。
なのにそういう設定になったのはヤマザキさんの「趣味」なのかなぁとおもったわけです。
「一度、女といいSexすれば、真っ当な男に戻れる」、「一度、男のペニスを突っ込まれて感じれば、真っ当な女に戻れる」みたいな言説が、どれだけマイナー・セクシュアリティの人を苦しめてきたか、よく知っているだけに、一言、言わざる得ませんでした。
まあ、あの映画が作られた当時はヘテロセクシュアリティの権力性みたいなものは、ほとんど自覚されてなかったから(今でも自覚していない人が多いくらいで)、そういう点では仕方がないと思います。

by 三橋順子 (2013-08-06 14:53) 

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