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第21回多摩ジェンダー教育ネットワーク会合 [お勉強(研究会)]

3月4日(水)
(続き)
銀座から東京メトロ丸ノ内線に乗る。
新宿駅でJR中央線に乗り換えるつもりだったが、とても眠かったので、そのまま終点の荻窪まで乗っていく。
荻窪駅でJR中央線に乗り換え。
帰宅ラッシュ時なので超満員。
踏ん張っているうちに、また右の坐骨神経痛が悪化。
それにしても座っている人がまったく動かない電車だなぁ。
18時20分、国立駅に到着。
歩いて一橋大学へ。
この時間、もう大学キャンパスは真っ暗。
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空には朧月。
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やっと、灯りがついている建物(東キャンパス・マーキュリータワー)に到着。

19時過ぎ、「第21回多摩ジェンダー教育ネットワーク会合」開会。
今日の報告者は、『日本占領とジェンダー』で(最後の)「山川菊栄賞」を受賞された平井和子さん(一橋大学特任講師)。
テーマは「軍隊と性暴力の密接な関係を考える―日本軍『慰安所』と占領軍『慰安所』と―」。

メイン報告は、昨年11月に一橋大学CGraSS(社会科学研究センター)公開レクチャー・シリーズ 第28回「日本占領と性 ―性暴力、売買春から親密な関係まで」でうかがった内容と基本的に同じ内容。
ただ、占領軍の内実が、占領初期(1945~46年)、占領中期(47~49年)、朝鮮戦争期(1950~)で、質量ともに変化し、それに応じて「公衆衛生福祉」(性的慰安の在り方)も変化している様子が、以前よりはっきり述べられていた気がした。
この部分、ご著書にはあるのだが、さらに研究を深めてほしいと思う。

第2報告の一橋大学社会科学入門ゼミ「日本軍『慰安婦』問題を多方面から考察する(2014)」が興味深かった。
平井さんの適切な資料提供と討論を通じて、ゼミに参加している現代の若者がこの問題について視野を広げ、認識を深めていく様子がよくわかり、すばらしい実践だと思う。
まあ、一橋大学に入学できる知的素材だからこそ、可能なことなのだが。
同時に、いつも大人数の講義ばかりで、一度もゼミをもったことにない野良大学講師としては、なんとも羨ましかった。

「セックスワーク論」についての平井さんの見解、とてもバランスがとれているのでメモ。
①「売春」をする女性たちの労働権を認めることによって、奴隷的な労働、危険な労働から女性たちの身を守ることになる。
②「売春」に従事することが、女性の「自由意思」のように見えても、その背後にある「構造的強制」を見逃してはいけない。
③「売春」に従事した女性たちが、生き延びるために選んだ行為を「主体」として尊重することも大事。
④ それらのためには、まずは当事者の証言に耳を傾けること。 

質疑応答を聞いていて感じたことは、以前にも書いたことだが、占領期の性暴力に関心がある方ですら、占領期の日本社会のリアリティがもうすごく希薄になっていること。
たとえば「RAA(特殊慰安施設協会)の従業婦募集広告がなぜ北海道にはないのですか?」という質問。
1945年8~9月の日本の交通事情がイメージできないのだろう。
青函航路は、1945年7月14日:アメリカ海軍艦載機の空襲で、全連絡船12隻の内8隻沈没、2隻大破炎上、2隻航行不能(352人死亡)でほぼ壊滅している。
青函航路の旅客航送が再開するのは、1946年2月11日の連合軍専用列車(上野~札幌)。
つまり、北海道に広告出しても、応募者が東京に来られない状況だった。

あるいは「RAAはなぜ沖縄には作られなかったのですか?」という質問。
内務省警保局長が全国の知事・警察へ外国軍駐屯地に性的慰安施設を作るように無電秘密通牒を出した1945年8月18日には、もうすでに沖縄は日本政府の施政権下にはなくアメリカ軍政下。
日本政府の指示を送る意味がないし、受け手もいない。
そもそも、上陸したアメリカ軍兵士による性暴力(レイプ)が頻発したのは、日本軍が玉砕して組織的戦闘が終わった6月24日以後のことで、8月18日段階ではすでに「性の防波堤」施策は手遅れだった。

戦後70年、平井さんだって私だって、本当のことはもうわからないのだが、それでももう少し・・・と思ってしまう。

それにしても頭の固い教条主義的な「フェミニスト」が、資料に基づいた実証的なセクシュアリティ研究の積み重ねを、「考えが甘い」の一言で否定するのは何度見ても不愉快だ。
なぜなら、それは実証的な研究者の労苦を否定するだけでなく、資料の語り手になってくれた娼婦たちの声を圧殺することになるからだ。

21時、閉会。
ご自宅が遠い平井さんは大急ぎでお帰りになり、報告者不在の懇親会は5人だけ(新旧幹事の先生4人、おまけの私)。
イタリア料理の「イルフルット」というお店。
こじんまりしたレストランだが、なかなかおいしかった。
22時40分、散会。

立川駅でJR南武線に乗り換えて、I先生とおしゃべりしながら帰る。
23時40分、帰宅。
長い一日で疲労困憊のはずなのに寝られない。
お風呂に入った後、来週打ち合わせ会がある依頼原稿の構想を考える。

就寝、4時。


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