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ICD-11の改訂、性別問題に関するポイント [現代の性(性別越境・性別移行)]

6月20日(水)

今回のICD-11の改訂、性別問題に関するポイント。

① ICD-10(1990年)で、精神疾患の中のグループ名として位置づけられていた「gender identity disorder(性同一性障害)」がグループ名としても、疾患名としても完全に消滅した。

② 性別問題については、新設された第17章「Conditions related to sexual health (性の健康に関連する状態)」に「gender incongruence(性別不合)」が設けられた。

③ 第17章は、第1~16章のdisorder(疾病)とdisorderではない第18章妊娠・出産との間の位置づけで、ICD-10では性別問題が精神疾患と位置づけられていたのに比べて、扱いが大幅に「軽く」なった。

④ 「gender identity disorder(性同一性障害)」と「gender incongruence(性別不合)」は、リスト(疾患分類)上の位置づけが大きく異なるだけでなく、診断基準も変更されているので、単純な病名変更(置き換え)ではない。

⑤「gender incongruence(性別不合)」は、「その人が体験するジェンダー(experienced gender )と指定された性別(assigned sex)の間の著しく、持続的な不一致により特徴づけられ、以下のうちの2つ以上が徴候として認められるもの」として定義された。

⑥ 診断基準は最初の3つで、primary or secondary sex characteristics(第一次及び第二次性徴)が重視されている。
身体的性徴への強い違和、解放願望、獲得欲求(の内の2つ)がないと診断されない。
望みのジェンダーで扱われたい(生活したい)という欲求だけでは、診断基準を満たさない。

⑦ 今回の大改訂は、前回の改訂(1990年)で同性愛の脱病理化が達成された流れを受けたもので、19世紀後半以来、病理(精神疾患)とされてきた様々な非典型な性の在り様が、病理から脱却していく大きなパラダイム転換の最終段階ととらえるべき。


WHO(世界保健機関)など国連の諸機関には「ジェンダーの多様性は病気ではなく個人の状態」という認識がすでに強くある。

個人の性別をどうするかは、その人が決めればいいこと(選択自己・自己決定)で、WHOのような機関が基準を定める必要はなく、むしろ、個人の性別に医療的な診断や法律が介入するのは、自由な自己決定を妨げるという意味で、むしろ人権侵害という考え方だ。

その基本認識は、すでに10年以上前に「ジョグジャカルタ原則」(や、2014年5月30日のWHOなど国連5機関の「法的な性別の変更に手術を要件とすることは身体の完全性・自己決定の自由・人間の尊厳に反する人権侵害とする共同声明」で示されている。

今回の改訂(ICD-11)でも、そうした認識がベースになっている。
ただ、性別の問題で医学的診断を必要とする人も(まだ)いるという現状に配慮して「疾患」ではなく「condition(状態)」として残したのだと思う。
つまり、今回の改訂は、性別問題の完全な脱病理化までの過渡的措置と考えるべきだろう。


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