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京都国立博物館「大出雲展」 [お勉強(博物館・美術館)]

9月2日(日)

(続き)
烏丸御池駅から地下鉄東西線で三条京阪駅へ。
京阪本線に乗り換えて七条駅へ。

緩い上り坂の七条大路を東に歩く。
ちょうど雲間から太陽が出て暑い!

13時過ぎ、京都国立博物館に到着。
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古事記1300年・出雲大社大遷宮記念・特別展覧会「大出雲展」を見る。
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会期残り1週間のせいか、かなりの混雑。

1 神話とはなにか-古事記と神話の成り立ち-
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いきなり『古事記』最古の写本「真福寺本・古事記」(国宝、愛知県・大須観音宝生院)。

最古と言っても南北朝時代の1371年(南朝:建徳2年)で、部分的には平安時代初期の写本がある『日本書紀』に比べるとかなり時代が下る。
それが、賀茂真淵以来、偽書説や改竄説が絶えない大きな原因になっている。
しかし、上代特殊仮名遣からして偽書説は成り立たず、序文の通り和銅5年(712)に、天武天皇の命で稗田阿礼が「誦習」していた「帝皇日継」(天皇の系譜)と「先代旧辞」(古い伝承)を太朝臣安萬侶が記述・編纂した現存する日本最古の歴史書と考えてよい。

八重垣神社の本殿板絵の神像(国重要文化財)も出ていたが、やはり神話(古事記)を、物で展示するのは難しいという印象。

2 神話世界の出雲
弥生時代から古墳時代の出雲の出土遺物の展示。
特に埴輪の展示が充実していた。
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人物埴輪の製作は、『日本書紀』(垂仁紀)によると、相撲の開祖でもある出雲の野見宿禰(のみのすくね)が提言したとされる。
近年、出雲で全国最古級の力士を含む人物埴輪が発見され、伝承との関わりが注目されている。
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↑ 力士埴輪(松江市石屋古墳出土・5世紀中頃)
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島根県山持遺跡(弥生時代・2~3世紀)のジョッキ型木器(取手付き刳物桶)は、初めて見た。
同様なものが石川県で出土しているが、祖形となるものが朝鮮半島北部の楽浪漢墓から出土した漆器にあるとのことで、日本海経由の文化移入として興味深い。

3 出雲大社の創設
日本海に突き出した島根半島の西端、杵築(きづき)の地に、いつ、どうして出雲大社が作られたのか、いまだに謎が多い。
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このパートの展示は、一昨年(2010年)の出雲・石見旅行でじっくり見たので・・・。

4 出雲の青銅器祭祀
荒神谷(こうじんだに)遺跡出土青銅器(国宝)と、加茂岩倉遺跡出土銅鐸などの展示。
お馴染みと言うか、荒神谷の銅矛と銅鐸は出土時に見学しているので懐かしい。
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5 出雲の神と仏
ここもなかなか充実。
出雲の仏教と古神道関係の遺物・美術品を郡別に展示し、出雲の地方仏教文化の全体像を理解できる好展示だと思う。
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摩多羅(またら)神は、どういう神様なのか?謎が多い。
慈覚大師円仁が唐から請来して比叡山常行三昧堂の守護神としたが、もともとどういう神か不明。
大黒天(マハーカーラ)と同様、シヴァ神の化身のひとつとする説が有力。
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6 出雲の神宝
出雲大社の秋野鹿蒔絵手箱(国宝)が見られてよかった。
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「大出雲展」の名の通り、古代出雲の文化財の展覧会としてはなかなか充実した内容だった。
とはいえ、この展覧会を熱心に見た人たちが、古代の出雲のイメージをしっかり描けるかというと、いささか疑問。
なぜなら、展示物は豊富だが、それが歴史像を構成につながっていない。
肝心の出雲の地方史の展開、そしてヤマト王権との関係史が明らかになってこない。

いろいろ謎が多く出雲、研究者の見解も様々な現状で、それを提示するのは難しいのだろうが、もう少し踏み込んだポイント整理をして欲しかった。

14時半、退館。

まだ、日は高かったが、疲労を感じたので、タクシーで京都駅へ。

14時53分発「のぞみ30号」に乗車。
なんと16号車15番でいちばん先頭の席。

車中、ずっと居眠り。

16時54分、新横浜駅に到着。

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