NHKスペシャル「ヒューマンエイジ(第4集)性の欲望 [現代の性(一般)]
6月23日(日)
NHKスペシャル「ヒューマンエイジ(第4集)性の欲望」かなり後の方になって、やっと阪口菊恵さん(大学改革支援・学位授与機構教授:行動科学)が登場。
コメントは、スタジオ収録で、全部で3分ほどか。
まあ、この種の番組のいつものパターンなんだけど、もっと長く、お話を聞きたかった。
NHKでは「自慰」を「セルフプレジャー(Self-Pleasure)」と言うのか。
1人の先生が1箇所だけ「マスタベーション」と言ってしまったが。
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024062317809
NHKスペシャル「ヒューマンエイジ(第4集)性の欲望」かなり後の方になって、やっと阪口菊恵さん(大学改革支援・学位授与機構教授:行動科学)が登場。
コメントは、スタジオ収録で、全部で3分ほどか。
まあ、この種の番組のいつものパターンなんだけど、もっと長く、お話を聞きたかった。
NHKでは「自慰」を「セルフプレジャー(Self-Pleasure)」と言うのか。
1人の先生が1箇所だけ「マスタベーション」と言ってしまったが。
https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2024062317809
性別変更前の精子利用、他にも 岡山大、医療機関に調査 [現代の性(性別越境・性別移行)]
6月23日(日)
性別変更前に凍結保存して、変更後に使用した事例、さらに2例。
実際にはもっとあると思う。
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性別変更前の精子利用、他にも 岡山大、医療機関に調査
性同一性障害で男性から性別変更した女性が、変更前に保存した自身の凍結精子で女性パートナーとの間に子どもをもうけた事例が、国内の少なくとも2カ所で確認されたことが21日、全国の医療機関を対象にした岡山大の調査で分かった。子の認知を巡り最高裁判決を受けた訴訟当事者の他に、同様の医療行為を受けた人がいたとみられる。
同様の生殖医療を望む人が10施設でいたことも判明した。調査を担った日本GI(性別不合)学会理事長の中塚幹也・岡山大教授は「代理出産でなくても子どもをもうけることができ、今回の判決で多様な家族の在り方が進むだろう」と話した。
「共同通信」2024年6月21日 18:40
性別変更前に凍結保存して、変更後に使用した事例、さらに2例。
実際にはもっとあると思う。
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性別変更前の精子利用、他にも 岡山大、医療機関に調査
性同一性障害で男性から性別変更した女性が、変更前に保存した自身の凍結精子で女性パートナーとの間に子どもをもうけた事例が、国内の少なくとも2カ所で確認されたことが21日、全国の医療機関を対象にした岡山大の調査で分かった。子の認知を巡り最高裁判決を受けた訴訟当事者の他に、同様の医療行為を受けた人がいたとみられる。
同様の生殖医療を望む人が10施設でいたことも判明した。調査を担った日本GI(性別不合)学会理事長の中塚幹也・岡山大教授は「代理出産でなくても子どもをもうけることができ、今回の判決で多様な家族の在り方が進むだろう」と話した。
「共同通信」2024年6月21日 18:40
おかま、おかめ、カクサイボーイ、レンコン -プランゲ文庫の戦後男娼資料から- [性社会史研究(性別越境・同性愛)]
6月23日(日)
2010年3月7日「性慾研究会」(兄弟会館)での研究報告(レジュメ)
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おかま、おかめ、カクサイボーイ、レンコン -プランゲ文庫の戦後男娼資料から-
三橋 順子
1 「おかま」
資料1:角 達也「飢餓と淪落の生態-上野に拾う職業諸相-」
(『旬刊ニュース』32号(上野へ行く) 1947年1月15日 東西出版社 J382)
1946年晩秋の上野のルポ。「おかま」の項目。上野の男娼についての最初のルポルタージュ。(写真多数、内2点が男娼関係)
おかま
日が暮れると上野の山に女装した男たちが現われる。ドーラン化粧のメーキャップで背が高く颯爽として本当の女達よりモダンだ。女達は彼等を、姐さんと呼ぶ。男あつかいにすると蹴飛ばされる。ギャングのお春さんと云う名に似ないおだやかな、世話好きのバクチ打ちの女形。車坂のお師匠さんとよぶ流しの芸人。お菊姐さん等が親分株。お市、お富、お瀧、狸のまーちゃん。十銭坊やなど――派手な連中を中心に三十六七名がいる。かせぎ場は山。一回二〇〇円の規定。だが一〇〇円の仲間破りが出るとお春さんが嘆く。一夜で千円程度。縄張は緩いが、すぐ男とバレるような素人は仲間の邪魔になるから追出す。金を集めて差入れや入院の見舞をしあう。
彼等の男に対する恋愛感情に三態ある。
一、絶対に女と思われたい、女姿にほれられたい者。
二、情夫の洗濯をしたり連子の世話をして女のようにやさしいと云う事でほめられたい者。
三、女装は生活の方便。かつらを脱いで同性愛でほれられたい者。
彼等は、夏の間は女よりも収入が多く、生活もしっかりしている、が寒くなると、客は宿屋に、泊りたがる。彼等はバレるから、泊りは苦手であって、不景気になる。
女装の他に、男装の男(ややこしいが陰間)が男を漁って歩く。しかし大阪の客のように粋な習慣のない東京では、男装では金にならぬ。女をたらして、男に貢ぐもの。盗みをする犯罪者。この人種は意外に多い。
資料2:岩崎 弘「男娼の生態」
(『特ダネ雑誌』2巻3号 1948年2月 スクープ社 T579)
東京では男娼のことを「おかま」と言う。しかし、彼女等 ―彼らと言うのが本当かもしれないがこの方がピッタリする― はこの言葉が嫌いだ。彼女等は
「大阪では私達をみると“ホラお姐さんが通るよ“と言うのね。所が東京では“オイ、あいつはおかまだぜ“こうでしょう。気分が悪いわ」
と言うのである。それで私も“おかま”とはいはずに関西で“お姐さん”の外にもっと一般的に使はれている“陰間”という言葉を用いることにする。
資料3:角 達也「男娼の世界-『男娼の森』創作ノート」
(『世界評論』4巻2号 1949年2月 世界評論社 S765)
(前略)上野の寺小姓も明治維新で浅草に投出された。この系譜は大正時代まで浅草中心の芸人、流し芸人としてつづき、かつぽれ踊りやたいこ持を兼ねて、ひそかな男色を売っていた。大震災で生活を失い、大挙して大阪の釜ガ崎に移動した。俗称のオカマというのは、肛門淫姦の昔からの言葉だが、上野の男娼たちは釜ガ崎の頭文字からでた呼び名だと信じているので、私も小説の中では、これに従った。釜ガ崎の男娼に就ては、武田麟太郎氏の小説がある。釜ガ崎も空襲で阿倍野の旭町通に移動した。ここを総本山と上野の男娼は信じている。また実際に交流がある。
資料4:江戸川乱歩司会「(座談会)夜の男の生態」
(『旬刊ニュース』52号 1949年2月10日 東西出版社 J382)
「おかま白書」(用語辞典)
ごれんさん 男娼の世界ではオカマという言葉を非常に嫌う。仲間同志を呼ぶ場合、「ごれんさん」という。ごれんさんにも男女両方の作用が出来る「おたち」と全然女としての気持だけしかない「おねえ」に分かれる。
(参考資料)角達也『男娼の森』(1949年4月 日比谷出版社)
(38頁)
「良いのよ。お客が千円呉れたんだからさ。全部取って置けばいいのよ。私にはよいから、オンナガタのお姐さんたちによくお礼を云うのよ……オンナガタのお姐さんよ。オカマなんて間違っても云うんじゃないのよ。オホホホホ、皆さんどうもすみませんでしたね」
(53頁)
商売の呼名もオンナガタに一定した。芝居のおやまと云う言葉は侮辱的なオカマと紛れ易いからだ。仲間の事も、初めは出鱈目に―お姉さん、オネエ、一件仲間、毛知り、おかまやさん、ゴレンサン等―と呼びあっていたが、「御連さん」と定めた。(53頁)
2 「おかめ」、「カクサイボーイ」
資料5:「おかめの巻:女装(ぢよそう)の男」
(『犯罪読物』1巻3号 1947年10月 犯罪科学社 H242)
闇の女の領分を荒す闇の男に、オカメとカクサイボーイの二種類がある。おかめはもとおかまといったのが、終戦後……おかまは下品だから……と彼(?)らみづからおかめと称えだしたのだという。カクサイボーイのカクサイは、パンパン同様に南方語からきたもので尺八の意。すなわち喋ったり食つたりする口で用をたす十五六の少年をカクサイボーイというのである。
3 「レンコン」
資料6:富田英三「女装の男たち-東京の夜の一章節-」
(『ホープ』3巻12号 1948年12月 実業之日本社 H762)
「いいのよ、いいのよ、お繁ちゃん」と時ちゃんが引きとめるのを「ううん、邪魔者はレンコン、レンコン」と、私と入れ違いにお繁と呼ばれる大柄な彼は部屋を出て行ってしまった。
レンコンとは蓮根、節穴があって先方が見える、つまり様子をうかがって気を利かす…といふ意味である。
資料7:江戸川乱歩司会「(座談会)夜の男の生態」
(『旬刊ニュース』52号 1949年2月10日 東西出版社 J382)
「おかま白書」(用語辞典)
れんこん 複雑な生活から沢山、隠語が生まれて来る。特に広く使われている重要な隠語が「れんこん」である。彼等が屯している中を「れんこんやし!」と叫んでいるのは狩り込みを意味し、警官のことを「れんこん」と称し、部屋の外から呼んで中のからの返事が「今、れんこんよ」と云うときは仕事の最中の事である。「此処が私のれんこんよ」と云うのは彼等の稼ぎ場所を指す。
資料8:角 達也「男娼の世界-『男娼の森』創作ノート」
(『世界評論』4巻2号 1949年2月 世界評論社 S765)
秘儀(注-街娼に化ける閨房技術)も実は簡単なことで、学生間でよく行われる股間を代用するスマタと称する方法と相互手淫とを、組合せて複雑化した、「手の蓮根」と称する技法なのだ。
その技法については、書くことはしないが、上半身の姿態の工夫と、女らしさの細心の注意とを加えて行われるので、股間を拡げてさえ、気付かれない。特に男娼は自分が男性であるから、対者の性感の処理を理解し、微妙な満足感をあたえる。
(参考資料)井上章一+関西性欲研究会『性の用語集』(2004年12月 講談社現代新書)
三橋順子「レンコン」(356頁)
現在のゲイ社会ではレンコンは秘密の意味だそうだ。「この話はレンコンよ」みたいに使うらしい。
多義的な隠語としてのレンコン(狩り込み)
(警官)
(秘密) → (ゲイ世界の用法)
(稼ぎ場)
(秘技) → 手レンコン→(テレンコ)→ レンコン
(おまけ) 「プランゲ文庫」について
太平洋戦争の勝利者として日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、占領政策の一環として新聞、雑誌、図書などの出版物、放送、映画、演劇、郵便といったあらゆる種類のメディアに対して検閲を行った。出版物については、検閲体制が整った1946年初から検閲が終了する1949年末までの4年間、日本全国を3つの地区に分け、東京、大阪、福岡の民間検閲局(CCD)でプレスコード(日本出版法)にもとづく検閲が実施された。
「プランゲ文庫」は、GHQ参謀2部戦史室に勤務していたゴードン W. プランゲ博士(Gordon W. Prange 1910~80)が、CCDに保管されていた検閲済み出版物の歴史的重要性を認識し、母校のメリーランド大学へ送ったものである。その量は木箱にして約500箱という膨大なもので、1950年から約2年をかけて横浜港から船便で積み出された。
それから、28年後の1978年9月15日にメリーランド大学理事会はこれらの占領期資料を正式に「ゴードン W. プランゲ文庫」と命名した。
その中には、日本に現存しない出版物も数多く、その貴重性を認識したメリーランド大学と国立国会図書館は協力して「プランゲ文庫」のマイクロ化事業を行い、公開の運びになった。
マイクロフィッシュ(マイクロスライド7×7=49枚が1枚のシートになっている)は、「雑誌コレクション」だけでもタイトル数13,787件、マイクロフッシュ数63,131枚、推定ページ数610万頁という膨大なものである。国際日本文化研究センターにも、「プランゲ文庫」マイクロフィッシュのうち、「雑誌コレクション」と「新聞コレクション」が入っている。
山本武利早稲田大学教授を代表とするチームは、2000年度から「プランゲ文庫」コレクションの全雑誌全号の記事・論文タイトル名、著者名、発行年月日、発行所(出版者)などをデータベース化する作業を開始した。2007年に完成し、ウェブ上で「占領期雑誌記事情報データベース」として公開された。これによって、データ検索が可能になり、「プランゲ文庫」の利用度は飛躍的に高まった。
http://m20thdb.jp/login
プランゲ文庫には、1946年から49年までの期間に日本で刊行された出版物(発禁になったものも含む)のほとんどが含まれており、占領期の政治・経済・社会・文化の資料としてきわめて高い価値をもっている。今後、各分野で「プランゲ文庫」の資料を使った研究が活発化することが期待される。
性風俗研究においても、「プランゲ文庫」に網羅的に収められている「カストリ雑誌」群は資料的にきわめて貴重である。しかし、近年刊行された「プランゲ文庫」研究成果、山本武利ほか編『占領期雑誌資料大系 大衆文化編 全5巻』(岩波書店 2008~2009年)は、残念ながら、性風俗をほとんど無視している(第4巻『躍動する肉体』収録の松田さおり「ヌードとレビュー」だけ)。逆に言えば、それだけ開拓の余地があるということだ。
2010年3月7日「性慾研究会」(兄弟会館)での研究報告(レジュメ)
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おかま、おかめ、カクサイボーイ、レンコン -プランゲ文庫の戦後男娼資料から-
三橋 順子
1 「おかま」
資料1:角 達也「飢餓と淪落の生態-上野に拾う職業諸相-」
(『旬刊ニュース』32号(上野へ行く) 1947年1月15日 東西出版社 J382)
1946年晩秋の上野のルポ。「おかま」の項目。上野の男娼についての最初のルポルタージュ。(写真多数、内2点が男娼関係)
おかま
日が暮れると上野の山に女装した男たちが現われる。ドーラン化粧のメーキャップで背が高く颯爽として本当の女達よりモダンだ。女達は彼等を、姐さんと呼ぶ。男あつかいにすると蹴飛ばされる。ギャングのお春さんと云う名に似ないおだやかな、世話好きのバクチ打ちの女形。車坂のお師匠さんとよぶ流しの芸人。お菊姐さん等が親分株。お市、お富、お瀧、狸のまーちゃん。十銭坊やなど――派手な連中を中心に三十六七名がいる。かせぎ場は山。一回二〇〇円の規定。だが一〇〇円の仲間破りが出るとお春さんが嘆く。一夜で千円程度。縄張は緩いが、すぐ男とバレるような素人は仲間の邪魔になるから追出す。金を集めて差入れや入院の見舞をしあう。
彼等の男に対する恋愛感情に三態ある。
一、絶対に女と思われたい、女姿にほれられたい者。
二、情夫の洗濯をしたり連子の世話をして女のようにやさしいと云う事でほめられたい者。
三、女装は生活の方便。かつらを脱いで同性愛でほれられたい者。
彼等は、夏の間は女よりも収入が多く、生活もしっかりしている、が寒くなると、客は宿屋に、泊りたがる。彼等はバレるから、泊りは苦手であって、不景気になる。
女装の他に、男装の男(ややこしいが陰間)が男を漁って歩く。しかし大阪の客のように粋な習慣のない東京では、男装では金にならぬ。女をたらして、男に貢ぐもの。盗みをする犯罪者。この人種は意外に多い。
資料2:岩崎 弘「男娼の生態」
(『特ダネ雑誌』2巻3号 1948年2月 スクープ社 T579)
東京では男娼のことを「おかま」と言う。しかし、彼女等 ―彼らと言うのが本当かもしれないがこの方がピッタリする― はこの言葉が嫌いだ。彼女等は
「大阪では私達をみると“ホラお姐さんが通るよ“と言うのね。所が東京では“オイ、あいつはおかまだぜ“こうでしょう。気分が悪いわ」
と言うのである。それで私も“おかま”とはいはずに関西で“お姐さん”の外にもっと一般的に使はれている“陰間”という言葉を用いることにする。
資料3:角 達也「男娼の世界-『男娼の森』創作ノート」
(『世界評論』4巻2号 1949年2月 世界評論社 S765)
(前略)上野の寺小姓も明治維新で浅草に投出された。この系譜は大正時代まで浅草中心の芸人、流し芸人としてつづき、かつぽれ踊りやたいこ持を兼ねて、ひそかな男色を売っていた。大震災で生活を失い、大挙して大阪の釜ガ崎に移動した。俗称のオカマというのは、肛門淫姦の昔からの言葉だが、上野の男娼たちは釜ガ崎の頭文字からでた呼び名だと信じているので、私も小説の中では、これに従った。釜ガ崎の男娼に就ては、武田麟太郎氏の小説がある。釜ガ崎も空襲で阿倍野の旭町通に移動した。ここを総本山と上野の男娼は信じている。また実際に交流がある。
資料4:江戸川乱歩司会「(座談会)夜の男の生態」
(『旬刊ニュース』52号 1949年2月10日 東西出版社 J382)
「おかま白書」(用語辞典)
ごれんさん 男娼の世界ではオカマという言葉を非常に嫌う。仲間同志を呼ぶ場合、「ごれんさん」という。ごれんさんにも男女両方の作用が出来る「おたち」と全然女としての気持だけしかない「おねえ」に分かれる。
(参考資料)角達也『男娼の森』(1949年4月 日比谷出版社)
(38頁)
「良いのよ。お客が千円呉れたんだからさ。全部取って置けばいいのよ。私にはよいから、オンナガタのお姐さんたちによくお礼を云うのよ……オンナガタのお姐さんよ。オカマなんて間違っても云うんじゃないのよ。オホホホホ、皆さんどうもすみませんでしたね」
(53頁)
商売の呼名もオンナガタに一定した。芝居のおやまと云う言葉は侮辱的なオカマと紛れ易いからだ。仲間の事も、初めは出鱈目に―お姉さん、オネエ、一件仲間、毛知り、おかまやさん、ゴレンサン等―と呼びあっていたが、「御連さん」と定めた。(53頁)
2 「おかめ」、「カクサイボーイ」
資料5:「おかめの巻:女装(ぢよそう)の男」
(『犯罪読物』1巻3号 1947年10月 犯罪科学社 H242)
闇の女の領分を荒す闇の男に、オカメとカクサイボーイの二種類がある。おかめはもとおかまといったのが、終戦後……おかまは下品だから……と彼(?)らみづからおかめと称えだしたのだという。カクサイボーイのカクサイは、パンパン同様に南方語からきたもので尺八の意。すなわち喋ったり食つたりする口で用をたす十五六の少年をカクサイボーイというのである。
3 「レンコン」
資料6:富田英三「女装の男たち-東京の夜の一章節-」
(『ホープ』3巻12号 1948年12月 実業之日本社 H762)
「いいのよ、いいのよ、お繁ちゃん」と時ちゃんが引きとめるのを「ううん、邪魔者はレンコン、レンコン」と、私と入れ違いにお繁と呼ばれる大柄な彼は部屋を出て行ってしまった。
レンコンとは蓮根、節穴があって先方が見える、つまり様子をうかがって気を利かす…といふ意味である。
資料7:江戸川乱歩司会「(座談会)夜の男の生態」
(『旬刊ニュース』52号 1949年2月10日 東西出版社 J382)
「おかま白書」(用語辞典)
れんこん 複雑な生活から沢山、隠語が生まれて来る。特に広く使われている重要な隠語が「れんこん」である。彼等が屯している中を「れんこんやし!」と叫んでいるのは狩り込みを意味し、警官のことを「れんこん」と称し、部屋の外から呼んで中のからの返事が「今、れんこんよ」と云うときは仕事の最中の事である。「此処が私のれんこんよ」と云うのは彼等の稼ぎ場所を指す。
資料8:角 達也「男娼の世界-『男娼の森』創作ノート」
(『世界評論』4巻2号 1949年2月 世界評論社 S765)
秘儀(注-街娼に化ける閨房技術)も実は簡単なことで、学生間でよく行われる股間を代用するスマタと称する方法と相互手淫とを、組合せて複雑化した、「手の蓮根」と称する技法なのだ。
その技法については、書くことはしないが、上半身の姿態の工夫と、女らしさの細心の注意とを加えて行われるので、股間を拡げてさえ、気付かれない。特に男娼は自分が男性であるから、対者の性感の処理を理解し、微妙な満足感をあたえる。
(参考資料)井上章一+関西性欲研究会『性の用語集』(2004年12月 講談社現代新書)
三橋順子「レンコン」(356頁)
現在のゲイ社会ではレンコンは秘密の意味だそうだ。「この話はレンコンよ」みたいに使うらしい。
多義的な隠語としてのレンコン(狩り込み)
(警官)
(秘密) → (ゲイ世界の用法)
(稼ぎ場)
(秘技) → 手レンコン→(テレンコ)→ レンコン
(おまけ) 「プランゲ文庫」について
太平洋戦争の勝利者として日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、占領政策の一環として新聞、雑誌、図書などの出版物、放送、映画、演劇、郵便といったあらゆる種類のメディアに対して検閲を行った。出版物については、検閲体制が整った1946年初から検閲が終了する1949年末までの4年間、日本全国を3つの地区に分け、東京、大阪、福岡の民間検閲局(CCD)でプレスコード(日本出版法)にもとづく検閲が実施された。
「プランゲ文庫」は、GHQ参謀2部戦史室に勤務していたゴードン W. プランゲ博士(Gordon W. Prange 1910~80)が、CCDに保管されていた検閲済み出版物の歴史的重要性を認識し、母校のメリーランド大学へ送ったものである。その量は木箱にして約500箱という膨大なもので、1950年から約2年をかけて横浜港から船便で積み出された。
それから、28年後の1978年9月15日にメリーランド大学理事会はこれらの占領期資料を正式に「ゴードン W. プランゲ文庫」と命名した。
その中には、日本に現存しない出版物も数多く、その貴重性を認識したメリーランド大学と国立国会図書館は協力して「プランゲ文庫」のマイクロ化事業を行い、公開の運びになった。
マイクロフィッシュ(マイクロスライド7×7=49枚が1枚のシートになっている)は、「雑誌コレクション」だけでもタイトル数13,787件、マイクロフッシュ数63,131枚、推定ページ数610万頁という膨大なものである。国際日本文化研究センターにも、「プランゲ文庫」マイクロフィッシュのうち、「雑誌コレクション」と「新聞コレクション」が入っている。
山本武利早稲田大学教授を代表とするチームは、2000年度から「プランゲ文庫」コレクションの全雑誌全号の記事・論文タイトル名、著者名、発行年月日、発行所(出版者)などをデータベース化する作業を開始した。2007年に完成し、ウェブ上で「占領期雑誌記事情報データベース」として公開された。これによって、データ検索が可能になり、「プランゲ文庫」の利用度は飛躍的に高まった。
http://m20thdb.jp/login
プランゲ文庫には、1946年から49年までの期間に日本で刊行された出版物(発禁になったものも含む)のほとんどが含まれており、占領期の政治・経済・社会・文化の資料としてきわめて高い価値をもっている。今後、各分野で「プランゲ文庫」の資料を使った研究が活発化することが期待される。
性風俗研究においても、「プランゲ文庫」に網羅的に収められている「カストリ雑誌」群は資料的にきわめて貴重である。しかし、近年刊行された「プランゲ文庫」研究成果、山本武利ほか編『占領期雑誌資料大系 大衆文化編 全5巻』(岩波書店 2008~2009年)は、残念ながら、性風俗をほとんど無視している(第4巻『躍動する肉体』収録の松田さおり「ヌードとレビュー」だけ)。逆に言えば、それだけ開拓の余地があるということだ。