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『新宿「性なる街」の歴史地理』の予約注文開始 [新宿「性なる街」の歴史地理]

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『一冊の本』2018年10月号「『遊廓』『赤線』『青線』の忘れられた物語」 [お仕事(執筆・成果)]

9月22日(土)

朝日新聞出版の広報誌『一冊の本』2018年10月号「著者から」の頁に、10月上旬刊行予定の拙著『新宿「性なる街」の歴史地理』を紹介する「『遊廓』『赤線』『青線』の忘れられた物語」と題する小文を書かせていただきました。
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お読みいただき、本書に興味をもっていただけたら、幸いです。
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『一冊の本』2018年10月号(朝日新聞出版)「著者から」  
 「遊廓」「赤線」「青線』」の忘れられた物語
                     三橋順子
このたび、朝日選書で『新宿「性なる街」の歴史地理』を出していただくことになりました、三橋順子です。

「性なる街」とは、かつて、女たちが身体を張って稼ぎ、男たちが心をときめかした「性なる場」の集合体のことです。そうした性的な遊興空間、具体的には、「遊廓」、「赤線」(黙認買売春地区)、「青線」(黙認しない買売春地区)の今や失われつつある記憶を、風俗雑誌などの怪しい文献、古い住宅地図、年配の方からの聞き取り、街歩きなどを合わせた、私なりの方法で掘り起こそうという試みです。

本書の概要を記しておきましょう。

第1章「『新宿遊廓』はどこにあった?」は、この本の主な舞台である新宿の「性なる場」の原点である「新宿遊廓」について、その場所にこだわって解明してみました。コラム1「『廓』という空間』」は、前近代日本の買売春の略史と「廓」の空間論。

第2~4章「『赤線』」とは何か」は、東京を中心とした「赤線」総論で、その成立、実態と経済、その終焉を記しました。第4章は「売春防止法」成立後から現代に至るセックスワークの問題にも及んでいます。

コラム2「RAAと『赤線』亀戸」は、RAA(特殊慰安施設協会)と「赤線」の関係についての新発見。コラム3「映画に見る『赤線』の客」は、注目されることの少ない「赤線」に通う男性について。コラム4「昭和33年3月31日『赤線最後の日』の虚構」は、「最後の日」はいつか、その時「蛍の光」は歌われたのかを追跡しました。

第5章「新宿の『赤』と『青』」は、本書の中核をなす章で、新宿の「青線」の詳論と「赤線」との関係。併せて昭和戦後期の新宿の「性なる場」の形成を歴史地理的に分析した都市論です。コラム5「朝山蜻一『女の埠頭』を読む」は「青線小説」の紹介とその資料価値。
第6章「欲望は電車に乗って」は、「赤線」と都電の関係を整理した都市交通論。コラム6「『原色の街』の原色の女」は、「赤線」女給と銘仙の関係に着目したファッション論。ついでにカバー画像の解説。

第7章「『千鳥街』を探して」は、闇市起源の小さな飲み屋街「千鳥街」を探索し、新宿「ゲイタウン」の成立にかかわるミッシングリンクを検出します。コラム7「旭町ドヤ街の今昔」は、旭町ドヤ街の形成と変貌のメモランダム。そして、あとがきは、研究の出発点となった2つの出会いを記しました。

読んでいただくと、半分くらいの章が、飲み屋を舞台にした会話で始まります。しかも、普通の飲み屋じゃなく、ニューハーフ系・女装系のお店です。それらはだいたい20年ほど前の私の実体験、実際にあった会話です。そうした設定にしたのは、私が抱いた疑問を読者の皆さんと共有したかったからです。特に第1章と第7章は「探す」ということを強く意識した書き方をしました。私といっしょに「探す」気分で読んでいただけたら、うれしいです。

ところで、幼い頃の私は地図好きの男の子でした。母や祖母に連れられて歩いた道筋を家に帰ると地図に書いていました。行動範囲が広がるにつれて手書きの地図は貼り継がれ、とうとう畳二つ分にまでなりました。昭和30年代、1960年頃の話です。

その男の子は長じて、なぜかネオンきらめく新宿・歌舞伎町の「女」になりました。40代後半で夜の世界から足を洗い、自分が親しんだ新宿の街のことを調べ始めました。そして17年かけて、ようやく「新宿の(なんちゃって)歴史地理」の本をまとめることができました。

地図好きの男の子から数えると58年、地図がたくさん載った本を出せて、とてもうれしいです。図版をたくさん載せすぎて製作費がかさみ、印税を削られましたが、仕方がありません。その分、本を担いで行商でもしましょう。

実は、この本には続編があります。今回は女と男の「性なる場」を中心に記しましたが、男と男、あるいは女装者と男性の「性なる場」について記す「男色編」です。「性なる街」新宿の歴史地理的な最大の謎は、長らく女と男の「場」であった二丁目の「新宿遊廓」・「赤線」が、1960年代、きわめて短期間に男と男の「場」である「ゲイタウン」にどのように変貌したのか?です。その見通しは第5章・第7章で述べましたが、まだ詰め切っていません。

もし、この本が売れれば、「男色編」が日の目を見ることができるかもしれません。

ということで、朝日選書としてはかなり変な本ですが、物好きな、もとい好奇心旺盛な読者の皆さんには、それなりに楽しんでいただけると思います。どうかよろしくお願いいたします。

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『セックスワーク・スタディーズ ー当事者視点で考える性と労働ー』(日本評論社、2018年9月) [現代の性(一般)]

9月22日(土)

『セックスワーク・スタディーズ ー当事者視点で考える性と労働ー』(日本評論社、2018年9月)をいただいた。
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とても読み応えのある内容で、今後、セックスワークに関わる諸問題を論じる際に、必ず参照されるべき本だと思う。

セックスワークへの施策でいちばん大事なことは、当事者であるセックスワーカーが施策立案の場にちゃんと参加して、その意見がしっかり反映されること。
60数年前の売春防止法制定の時は、性産業で働く女性の意見がまったく反映されず、廃娼運動家とそれに支持された女性政治家の意見だけが取り入れられた。
当事者を無視する誤りを、今また繰り返してはいけない。
そのためにも、ぜひ大勢の方に読んでほしい本。

刊行がもう1月早かったら、あるいは自著(『新宿「性なる街」の歴史地理』)の校了がもう1月遅かったら、参照できた部分がいくつかあり、仕方がないが残念だった。

ところで、この本のカバー裏(表4)に掲載されている2枚の写真の内、右側の1枚は、私が撮影し、依頼されて提供した写真だ。
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アマチュアの撮影者の写真を使っていただいたことは、とてもうれしく思う。

ただ問題は、クレジットの付け方だ。
奥付に「カバー写真(表4)ー佐藤郁夫・三橋順子」と記されているが、これでは、どちらが佐藤さんの写真で、どちらが私の写真かわからない。
クレジットの付け方として不適切だと思う。

写真の著作権は、個々の写真にあるのだから、撮影者がわかるように、たとえば「撮影・提供:(左)佐藤郁夫、(右)三橋順子」のように注記すべきだろう。

「細かいことを」と思う方も多いだろうが、権利というものは、実はけっこう細かいものなのだ。

私も、近刊の自著にたくさんの写真を使用したが、撮影者、提供者、出典については、ずいぶん気を遣い、くどいほど注記を付した(1点だけ、どうしても撮影者不明の写真があるが・・・)。

要は、そういうものなのだ。
出版に関わる人は意に止めておいてほしい。

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