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近代公娼制の地域差 [性社会史研究(遊廓・赤線・街娼)]

2月3日(月)

近代公娼制とは、簡潔に言うと、行政が売春を行う女性に「娼妓鑑札」(ライセンス)を与え、その売春行為を「貸座敷」という場所に限定し、さらに「貸座敷」の場所を指定する(貸座敷指定地)ことによって、コントロールする制度。

娼妓鑑札を持たない女性、貸座敷以外の場所での売春行為は、すべて違法。

ここで重要なことは、制度の大枠(法律)を作ったのは国だが、貸座敷の認可を行うのは、それぞれの道府県だということ。

したがって、地方によって違いが大きい。
たとえば、道府県あたりの娼妓数は、10倍以上の開きがある。

やたらと貸座敷を指定する県と、したがらない県とがある。
実態に即した指定をする県と、売春の場をできるだけ集約したい県とがある。
行政の基本姿勢にかなり差がある。
これが政治的要因。

一方、売春行為は、性的サービスと金銭の交換という経済的行為の側面をもつので、経済が発達した地域や大都市で活発になる。
これが経済的要因。

また、売春に対する考え方の違い(思想性)が投影される。
その思想とは、「廓」的な女色文化を忌避する前近代の武家の思想と、西欧キリスト教文化由来の売春を否定する近代的な「廃娼」思想。
後者の結果が、「廃娼県」(群馬県)。
これが文化的要因。

この3つ(政治的、経済的、文化的要因)が複雑に絡まって、近代公娼制(近代遊廓システム)の地域差を作り出している。

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