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1号要件(成人要件)みついてのやり取り [現代の性(性別越境・性別移行)]

11月8日(金)

日本大学法学部の院生さんの質問は「GID特例法」第3条1項1号(成人要件)について。

私が「現状、改正の議論で1号要件については存続でほぼ異論はないと思う」と述べたことに対して。

彼曰く、1号要件の立法趣旨は、侵襲が強く不可逆的な手術(4・5号要件)を未成年者に課すことは適当でない、というもの。2023年10月25日の最高裁判決で4号要件(生殖機能喪失要件)が無効になり、今後の法改正で5号要件(性器外観近似要件)が廃止されれば、1号要件(成人要件)も立法の根拠を失うことになりませんか?

私「なるほど、法理的にはそうなりますね」
しかし、現在、1号要件は、自己決定権の問題としてとらえられることが多いと思います。性的マイノリティの自己決定の重要性、その尊重については、2007年の「ジョグジャカルタ原則」が一つの基点で、日本で認識されるようになるのは2010年代に入ってからだと思います。つまり立法の時点(2003年)では、自己決定権という論点はほとんどなかったけど、現在は違うということです。未成年の当事者の自己決定がしっかり独立的になされているか、そこに親の意思の介入・影響がないかという点はやはり重要で、成人要件の撤廃には、そのあたりの議論は避けられないと思います。

関連して、性別不合が疾患でなくなった現在、論理的に、医療の提供は「治療」ではなく、したがって「治療」のプロセスと法制度がリンクする必要はなくなったはずですが、実際にはガイドラインが「性別不合の診断と治療のガイドライン」であるように、両者をリンクさせる考えが根強いのです。その状況で、成人要件を撤廃する、あるいは年齢制限(現行18歳以上)を引き下げたら、リンクして必ず未成年者の「治療」の問題が出てきます。これも、賛否両論、紛糾は確実です。

ということで、来年(2025年)に想定される法改正では、4号要件の撤廃(確定)と5号要件の処理(現行の条文での存続は無理、そして3号要件(現に未成年の子なし要件)の検討までがせいぜいで、1号要件に踏み込んでいる時間的余裕はないと思います。

あなたは,法学者の卵ですから、法理に基づいてしっかり論文を書いてください。
現実重視の私の見解はお伝えしました。


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