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『信濃毎日新聞』の〈社説〉性別変更の要件 特例法の改正が急務だ [現代の性(性別越境・性別移行)]

7月11日(木)

『信濃毎日新聞』の要を得た社説。
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〈社説〉性別変更の要件 特例法の改正が急務だ

『信濃毎日新聞』2024/07/11 09:31

政府は司法の判断に基づき、性同一性障害特例法を早急に改正するべきだ。

出生時は男性で性自認が女性のトランスジェンダーが、特例法に定められた手術を受けないで、戸籍の性別を女性に変更するよう求めた差し戻し家事審判だ。広島高裁が変更を認める決定をした。

特例法が定める性別変更要件のうち、「変更後の性器部分に似た外観を持つ」(外観要件)を満たすには手術が必要とされる。当事者の肉体的、金銭的な負担は大きい。高裁はこの規定を「違憲の疑いがある」と判断した。

ただし、違憲無効に踏み込まず「公衆浴場などで異性の性器を見せられない利益の保護」のため、外観要件には正当性があると言及している。

その上で継続的にホルモン療法を受けている申立人は「身体各部に女性化が認められ、性別変更後の外
性器に近しい外見を有している」と判断し、変更を認めた。

外観要件を維持した上で、これまで手術が必須とされてきた解釈を緩和し、申立人の個別状況に応じ性別変更の可否を判断する、という内容である。

性器の手術を受けないで性別を変更する是非について、日本社会で論議が尽くされたとはいえないだろう。一方で性自認に基づいた性別で生活することは「法律上、保護された権利」との司法判断は繰り返されてきた。

こうした社会状況の中で、当事者の人権を救済するために、高裁が柔軟な判断をしたといえる。
争う相手方がいない家事裁判で、今回の高裁決定が確定する。対象は今回の申立人に限られる。

ただし、手術が必要になる2要件のうち「生殖機能がない」(生殖能力要件)は、最高裁が昨年10月
に違憲とする決定を出した。国会は2要件を改正する義務を負ったと受け止めるべきだ。

自民党は要件を見直す一方、「性自認に基づいた性別で社会生活を送っている」などの要件を加えることを検討している。曖昧な要件を加えれば恣意(しい)的な運用を招き、新たな障壁になりかねない。要件は最小限に絞るべきだ。

懸念されるのは高裁決定が結果的にトランスジェンダーへの誤解と偏見を増幅しかねないことだ。
「身体が男性のまま性別変更した当事者が女湯に入ってくる」などはその典型だろう。政府は公衆浴場の利用は身体的特徴で男女を区別するとの通知を自治体に出している。浴場の利用方法は変わらないことを押さえておきたい。
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