SSブログ

「下総国府の犬」  [生活文化・食文化・ファッション文化論]

2月9日(木)

古代の犬の従来のイメージを変える、とても興味深い発掘成果。

犬が国府に集められ、放し飼いではなく、管理のもとに飼われていた。


------------------------------------
奈良時代遺跡から発掘の7頭のイヌに血縁関係なし 意味することは?

奈良時代の下総国の国府(現・千葉県市川市)跡から発掘された11頭のイヌのうち、7頭のDNAを調べたところ、毛の色も耳の形も異なるイヌたちだったことが分かった。血縁関係もなかった。この結果が意味することは? 市立市川考古博物館が12日から開催する「遺伝子からみた古代のイヌ」展(会場は市立市川歴史博物館)で紹介する。
奈良時代の犬.jpg
イヌの骨が発掘されたのは、同市北西部にある須和田遺跡。奈良時代の地方行政府があった国府の一部だった地区だ。すり鉢状の穴は、地表部の直径が4・2メートル、深さは2・7メートル。1984年にここから、8世紀後半に埋められたイヌ11頭とウマ、ウシの骨が、ハマグリやカキの貝殻の層に挟まれるように発掘された。同館の山路直充学芸員は「貝の層の状況から、極めて短期間、もしかすると1年の間に埋められたのでは」とみる。

奈良時代の遺跡から、まとまったイヌの骨が発掘されるのは、全国でもあまり例がない。そこで同館は今年度、骨のDNAを分析し、骨格や歯の状況の研究と合わせ、企画展で紹介することにした。

11頭のうち、DNAを抽出できる7頭について、金沢大学と共同研究したところ、この7頭に血縁関係がないことが分かった。耳の形は6頭が立っていたが1頭は垂れ、尻尾も6頭は伸びていたのに対し、1頭は巻いていたとみられる。毛色は、黒く灰色がかった野生型と明るい黄色を特徴とするイエロー型が混在。古くから日本列島にいた縄文時代のイヌの遺伝子を受け継ぎつつ、大陸由来の犬種と長く交雑していた可能性も明らかになった。

犬同士の血縁関係がなかったことから、山路さんは「下総の各地から集められ、放し飼いではなく、交雑しないようにきちんと管理して飼育されていた可能性がある」と指摘する。奈良時代、平城京には諸国から犬が集められており、有力な皇族であった長屋王の邸宅では、犬を飼育する部署「犬司」まで設けられていた。「集めた理由は、平城京に送るためだったのか、それとも、下総の国府の役人が自分のために飼っていたのか。今後、さらに研究を進めたい」

12日から市立市川歴史博物館で始まる企画展では、イヌの骨の形状の分析や歯の健康状況などのほか、同じ穴から発掘されたウマとウシの分析もしている。山路さんは「下総の国で、どのように動物と共生していたか、知ってほしい」と話す。19日には、DNAを分析した金沢大学の覚張隆史助教の「遺伝子からみたイヌの歴史」などの講演も市生涯学習センターで予定。講演会は事前に往復はがきで申し込みが必要。締め切りは10日。入場は無料。(本田大次郎)

『朝日新聞』2023年2月8日 10時45分
https://www.asahi.com/articles/ASR277FQVR27UDCB001.html
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントの受付は締め切りました