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1960年代のゲイ世界 ー映画『老ナルキソス』に寄せてー [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

1月26日(木)

東海林毅監督の新作映画『老ナルキソス』の主人公・山崎は、80歳手前という年齢設定。
とすると、彼とその仲間たちが若者だったのは1960年代の後半。
2022年基準で25歳だったのは1968年、大学卒業の22歳とすれば1965年。

その頃の東京のゲイは、どこに集っていたのだろうか?
これかなり、難しく微妙な問題。

私や石田仁さんの研究では、1965年だと、新宿二丁目「ゲイタウン」はまだ存在しない。
新宿だと、三丁目に「イプセン」、区役所通りに「アドニス」、二丁目に「ぼんち」、あとは無くなってしまった「千鳥街」に数軒、中央街から「要通り」に移る「蘭屋」くらいか。
二幸(アルタ)裏の「夜曲」は店主が殺害された後、もう閉店していると思う。

お店が少ないだけでなく、それなりの料金なので、22歳の青年はボーイとして働くことはできても、客として遊ぶのは無理だと思う。

これが1968年だと、様相が変わってくる。
二丁目「ゲイタウン」の形成期で、ゲイ系のお店の数が急速に増えていく。
働ける店も増えただろうし、お金がある身分なら客としても通える。
若くてお金がなくても、年上の客がおごってくれる。

あとは、満員電車、公衆トイレ、映画館、出来始めた一般のサウナなど(石田さんの教示による)、

この時代の若者だと、「店」より、野外ハッテン場だったかもしれない。
夏休みの湘南・江の島とか。

その点、映画の中で、海辺の漁具小屋みたいなところでハッテンしている描写は、歴史的に妥当性が高いと思う。

ともかく、この時代のゲイ世界のことは、聞き取り調査が乏しく、よくわからない。
その点、ある程度のことがわかっている女装世界とは対照的だ。

もし、山崎老人が実在の人なら、石田さんなり私なりがインタビューを申し込んでいるだろう。
で、偏屈なので断られる(笑)
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