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診断と医療倫理 [現代の性(性別越境・性別移行)]

12月16日(木)

診断書は、医師が診断基準に基づいて診断して出すもので、当事者が求めるから、それに応じて出すものではない、という基本原則がなぜ理解できないのだろう。
診断基準を満たしているのに診断書が出ないのは大いに問題だけど、診断基準を満たしていないのに診断書を出したら、それも問題なのだ。

その診断基準は、各国が勝手な基準で診断しないように、WHOという国際機関が定めて(ICD)、(医師以外にも)公表しているわけで、発効の2週間前になって「活動家」がクレームつけても変わるものではない。

何度も書くのも嫌だけど、医師が診断基準に則してちゃんと診断すれば、強い身体違和をもつ人には「性別不合」の診断書はすんなり出るはず。
強い身体違和がなく社会的違和だけの人には「性別不合」の診断書は出ないはず。
それは、診断基準の論理的帰結。

「活動家」が、医師に診断基準を曲げて診断書を出すように要求するのは、医療の基本論理からして間違い。
そうするのなら、私ははっきり医療の基本を擁護する側に立つ。

そもそもの話、今までずっと「脱病理化」を主張してきた「活動家」が、今になって、なぜ診断書をそんなに求めるのだろう?

診断書が必要な人は診断書を適正な方法で手に入れて使えばいい。
それはまったく否定されることではない。
私のように「性別を越えて生きることは病ではない」と主張する人は診断書を使わずにトランスジェンダーとして望みの性で生きていく。
それができる社会を目指して努力してきたはずではないか。

「活動家」が、「性別不合の診断基準は間違っている!」と言う。
私はそうは思わないが、そういう考えもあるだろう。

しかし、なぜ施行の2週間前になってそれを言う?
どう考えたって、遅すぎだろう。

性別不合の診断基準(案)が情報として日本に伝わって、公開されたのは3年半前。
その後、論文にも書かれているし、専門医の著書でも言及されている。
私も及ばずながら、ブログで解説している。
それらをぜんぶ無視して、なぜこの時期になって?

繰り返すが、ICD-11の「性別不合」の項目は、性別移行に身体的な医療サービス(ホルモン投与やSRS)を望む人のアクセスのために残された項目。
医療サービスを必要とする人の妨げになるはずはない。

正規の医療というものは、

違和感・愁訴(具合が悪いんですけど)→診察・検査ー(診断基準)→診断(必要なら診断書発行)→治療(カウンセリング・投薬・手術など)

という段取りで進むもの。

「性別不合」の診断が出ないのに、医師がホルモン剤を投与するなど、正規の医療ではありえない。

診断なしで、どうしてもホルモン投与をしたければ、身体の自己決定は誰にでもあるわけで、非正規ルートでホルモン剤を入手して、自己決定・自己責任で投薬すればいい。
それだけの話。

私は、山内俊雄先生(元・GID研究会理事長、埼玉医科大学名誉学長)の「性別移行の医療は医師と当事者が協力して、より良いシステムを作っていこう」という方針に共感して、22年間、GID学会に参加してきた。
その点で日本の性別移行医療と医師を異様に嫌悪(憎悪に近い)している某「活動家」氏とは立場も見解も異なるのは当然。

医療・医療者の批判すべきところは批判する(実際にかなり痛烈にしてきた)。
しかし、医師と当事者が協力して、より良いシステム構築を目指すという、当初からの基本姿勢は、どれだけ悪し様に言われても、変えるつもりはない。

これだけ言葉を尽くして説明しても、分かってもらえないのなら、もう仕方がない。
なんにしても、ICD-11は、2週間後の2022年初めから発効するし、「性別不合」という項目(「性の健康に関する状態」のひとつ)も診断基準に従って診断されるようになる。


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