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扇屋亜夫『白い血の狩人』ー1950年代男性同性愛関係書籍の紹介(4)ー [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

9月19日(月・祝)

【書誌】扇屋亜夫(おうぎや あふ)著『白い血の狩人』
  発行所:妙技出版株式会社(東京都文京区小日向台町2の26番地) 
  発行年月:1957年2月
  定価:180円
  体裁:四六判(B6版)316頁
  序文:太田典禮・比企雄三・原比露志望・角達也・橋爪檳榔子・長崎謙二郎
  跋文:武野藤介
  内容:17篇の短編小説を収録した小説集

扇屋亜夫『白い血の狩人』 (1) - コピー.JPG扇屋亜夫『白い血の狩人』 (3) - コピー.JPG
↑(左)表紙(右)裏表紙
扇屋亜夫『白い血の狩人』 (4) - コピー.JPG
↑ 奥付

【著者】
奥付の「著者紹介」
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静岡県に生る。昭和三年中央大学経済科卒。編集生活を転々、かたわ文学を志す。「風俗科学」を中心にして風俗科学研究会、略称「FKK」を起こす。
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ここに見える『風俗科学』は1953年に創刊された月刊の性風俗雑誌で、とくに同性愛研究に力をいれていた(1955年3月、19冊で終刊?)。
「風俗科学研究会(FKK)」は、『風俗科学』編集長西條道夫が発起し、同誌で会員を募集していた、隠れ蓑(カモフラージュ)として「花卉(かき)研究会」とも名乗った男性同性愛者の親睦サークルで、扇屋はその実質的な主宰者で、その機関誌『羅信』の編集発行人だった。

なお、扇屋については、太田典礼編著『第3の性―性は崩壊するのかー』(妙義出版、1957年)の執筆者にとして執筆していて、1903年の生れであること、当時の住所が東京都千代田区神田小川町3の9であることがわかる。

扇屋亜夫については、下記を参照ください。
扇屋亜夫『そどみあ挽歌』ー1950年代男性同性愛関係書籍の紹介(1)ー
https://junko-mitsuhashi.blog.ss-blog.jp/2016-09-19-2

【考察】
扇屋の小説集としては『そどみあ挽歌』(新鋭社、1958年7月)を入手していたが、それより1年早くほぼ同じ内容の小説集が刊行されていたことがわかった。
扇屋亜夫『そどみあ挽歌』1.jpg
↑ 『そどみあ挽歌』(1958年)

ほぼ同じというのは、序の推薦者(6名)、跋文の著者が同じ、収録された小説17本の内15本が同じ題名ということ。

まったく同じなら、1年半後に、出版社と書名を変えて再刊したですむのだが、2本だけ違っていいるところが微妙。

〇印は『そどみあ挽歌』に採録されているもの

ひと夜の情熱  〇 『風俗科学』1954年11月号
絶望への前夜  〇 
白い情欲    〇 『風俗科学』1954年4月号 (原題)「白い色の情慾」
素朴な活火山  〇 『風俗科学』1954年5月号
肉体への反逆  〇 『風俗科学』1954年1月号
そどみあ輪廻
そどみあ遍路  〇 『風俗科学』1953年12月号 (原題)「男色遍路」
紅いベレエ   〇 『風俗科学』1954年6月号
そどみあ挽歌  〇 『風俗科学』1954年7月号 (原題)「そどみあは行く」
薔薇盗人    〇 『風俗科学』1954年8月号
磐梯のホルムス 〇 『風俗科学』1954年9月号
女心男身  
白い血の猟人  〇
雁来紅の家   〇 『風俗科学』1954年12月号
港の見える丘  〇 『風俗科学』1955年1月号
そどみあ無頼  〇
氷雨の夜    〇

目次で見る限り、『白い血の狩人』に入っている「そどみあ輪廻」と「女心男身」の2編が『そどみあ挽歌』には見えず、逆に『そどみあ挽歌』に見える「バアのひととき」と「外道」(『風俗科学』1954年10月号、原題:「彷徨える出発」)が『白い血の狩人』にはない。
ただし、改題の可能性があるので、これから調べる。


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