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「経産省職員トイレ使用制限訴訟」の高裁判決(原告敗訴) [現代の性(性別越境・性別移行)]

5月28日(金)

27日、「経産省職員トイレ使用制限訴訟」の高裁判決が出た。
一審の国側敗訴の判決を破棄して、原告敗訴。

一審(地裁)で原告の人権に留意した画期的な判決が出ても、控訴審(高裁)でひっくり返される典型的なパターンで、とても残念に思う。

私は、いちばん重視すべきは、その人の生活実態だと考えるので、その点、おおいに疑問がある判決。

ただし、今回の東京高裁判決でも、「自認する性別に即した社会生活を送ること」が「重要な法的利益」であることを追認していることは重要である。
「性別は、社会生活や人間関係における個人の属性の一つとして取り扱われており個人の人格的な生存と密接かつ不可分のものということができるのであって、個人がその真に自認する性別に即した社会生活を送ることができることは、重要な法的利益として、国家賠償法上も保護されるものというべきである」
こうした認識はすでに判例となって久しい。
(原点は2002年6月20日「昭文社・性同一性障害者解雇事件」訴訟。東京地裁判決)

今になって「性自認に基づいた性別で社会生活を送ること」を否定しようとする人たちは、そこのところ、解っているのだろうか?
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経産省トイレ訴訟、性同一性障害の原告職員が逆転敗訴 東京高裁
『東京新聞』2021年5月27日 16時52分

性同一性障害で女性として働く経済産業省の50代職員が、職場の女性用トイレの自由な使用など、処遇改善を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(北沢純一裁判長)は27日、使用制限を違法とした一審東京地裁判決を変更し、原告の逆転敗訴とした。

一審判決によると、職員は戸籍上は男性だが、経産省入省後、専門医から性同一性障害と診断された。健康上の理由で性別適合手術は受けていない。2010年に同僚への説明会を経て女性の身なりで勤務を開始したが、経産省は「抵抗を感じる同僚がいる」として職場の勤務フロアと、上下1階ずつの女性用トイレの使用を認めなかった。

19年12月の一審判決は「自認する性別に即した社会生活を送ることは重要な法的利益で、制約は正当化できない」と指摘。使用制限を違法とした。(共同)
『東京新聞』2021年5月27日 16時52分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/106944
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性同一性障害のトイレ使用制限、高裁「違法ではない」

戸籍上は男性だが女性として暮らす性同一性障害の50代の経済産業省職員が、女性トイレの使用制限は差別だなどと国を訴えた訴訟の控訴審判決(北沢純一裁判長)が27日、東京高裁であった。使用を制限した同省の対応は「注意義務を尽くさなかったとは認め難い」として違法ではないと判断し、違法性を認めた一審・東京地裁判決を覆した。

原告の職員は、健康上の理由で性別適合手術は受けていないが、2010年以降は女性の服を着用するなど女性として勤務することを同省に認められた。だが戸籍上の性別が男性との理由で、勤務フロアから2階以上離れた女性トイレを使うよう同省に求められたため15年に提訴した。

高裁判決は「性自認に基づいた性別で社会生活を送ることは法律上保護された利益」と認めつつ、性同一性障害への同省の対応は「先進的な取り組みがしやすい民間企業とは事情が異なる」と指摘。原告が同省側に性同一性障害と告げた09年時は「各官庁で指針となる規範や参考事例はなく、(戸籍上で)性別変更をしていないトランスジェンダーへの対応は未知だった」とした。

そのうえで、同省が使用制限を決める際に原告や原告の主治医の意見に加え、ほかの職員の意見を聴く説明会を2回開くなどしたことを「積極的に検討、調整して決めた」と評価。使用制限を続けたことは「ほかの職員が持つ性的不安なども考慮し、全職員にとって適切な職場環境をつくる責任」を果たすためだったと指摘し、使用制限の撤廃を求めた原告の請求を棄却した。

ただ、上司が「(性別適合)手術をしないなら、もう男に戻ってはどうか」と発言したことは違法性があるとし、国の賠償責任を認めた。賠償額は一審が命じた132万円から11万円に減額となり、事実上の原告側の逆転敗訴となった。

原告側弁護士は判決後の会見で、「マイノリティーの権利を保障する議論がたくさんあるなか、極めてひどい判決だ。憤りを感じる。人権を守るべき行政機関が取り組みづらいとの理由で人権侵害することはあってはならない」と訴え、上告する方針を示した。

原告の職員は声を詰まらせながら、「まさに、ちゃぶ台返し。長年ホルモン療法を受けていることや、外見的に女性として見られることが多いなど個別の事情を高裁は考えてくれなかった」と説明。生まれた時の性別とは異なる性別で生きるトランスジェンダーについては、「職場で正当に扱われないことがある。自認する性で勤務できることが当たり前になってほしい」と話した。(村上友里)
『朝日新聞』2021年5月27日 22時39分
https://www.asahi.com/articles/ASP5W5228P5TUTIL04B.html?iref=pc_ss_date_article
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