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1927年の大阪の定常的女装者 [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

4月2日(金)
1927年(昭和2)11月の新聞記事(掲載紙不明)
『風俗奇譚』1961年7月号に再録
「七日夜、大阪市東淀川区本庄川崎町五丁目旅館備前屋を中津署員が臨検すると、怪しい男女が同衾しているのを発見し、引っ捕えて本署に連行取り調べると、女と思ったのは全く男で、取り調べの結果、同人は、静岡県生まれ渡辺清(三四)とて、幼少の時家庭のおもしろくないところから旅役者の群れに投じ、爾来女形としてかせいでいたが、二十二歳の時、きよ子と称して、山巻源太郎という男を内縁の夫に持ち、なかよく大阪西成区今宮入船町六〇六に家を持って暮していたが、最近、源太郎と痴話げんかからわかれ話になり。手切金を出せといったところ、源太郎がなかなかおうじないので家出し、女装をさいわい各所で若い男をあざむき、金をまきあげていたものであることが判明した」

【経緯】
① (おそらく)密売淫を摘発する「臨検」で逮捕、警察署に連行。
② 取り調べで、女性ではなく男性と判明 →この時点で密売淫の容疑は消滅。
③ 逮捕されたのは32歳の元女形の定常的な女装者(男性名:清、女性名:きよ子)。22歳から最近まで男性と内縁関係の「結婚生活」。→「同性結婚」の事例
④ 痴話げんかから別れ話になったが、夫が手切れ金を出さないので家出。
⑤ 若い男を相手にセックスワークで稼いでいた。

【考察】
① 警察官処罰令の「密淫売」の罪は、男性なので適用できない。
② 男性であるにもかかわらず相手に女性と思わせた(「あざむき」)詐欺罪が成立するか?→ 他の事例からかなり微妙。
③ 金銭の強要(「金をまきあげていた」)があったか? 性行為の対価に金をもらっていただけでは(密売淫ではないので)罪に問えない。金銭の強要を立証でれば「恐喝」で立件できるが・・・。

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