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1950年代の性風俗雑誌のアーカイブ化を目指して [性社会史研究(一般)]

12月6日(日)

下に書いたような経緯で集めた1950年代の性風俗雑誌(約130冊)、もう先が長くないので、どう処分しようか、考えていた。

お金がない研究者が苦労して集めたもので愛着はあるが、あの世には持っていけないし、できれば、後進の研究者の役に立てる形で処理したいと思っていた。

それが、某出版社が立ち上げた有償のデーターベースで、全文公開できる可能性が出てきた。

細かい打ち合わせは、まだこれからだが、うまくことが運べば、冥途の旅路の心残りが1つ減ることになる。
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昭和戦後期の性風俗雑誌の書誌研究
  ―1950~60年代を中心に―    三橋順子

はじめに
昭和20年代前半(1946~50)、戦後の混乱期、出版規制が解除されると、性風俗を主なテーマにした粗悪な紙質の短命な雑誌が数多く刊行された。それらの雑誌は、3号くらいで出版元が倒れる(倒産)ことから、3合飲むと悪酔いして倒れる粗悪な酒「カストリ」(酒粕から作ったとされる)にたとえて「カストリ雑誌」と呼ばれた。

「カストリ雑誌」を含む連合国軍占領下の日本で刊行された出版物は、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が設置した民間検閲支隊(CCD)によって検閲目的で集められた。
そして、民間検閲支隊の解体後、集められた出版物は、参謀第二部・戦史室長を務めていたゴードン・ウィリアム・プランゲ(1910~1980)によって、アメリカのメリーランド大学に移送され、1978年にゴードン・W・プランゲ文庫(Gordon W. Prange Collection)と命名され、整理・研究が進められた。
この膨大な資料群はマイクロフィルム化され、その複製(マイクロフィッシュ)が国立国会図書館、国際日本文化研究センターなどで閲覧できる。

「カストリ雑誌」の実物は残存数が少なく、現在では収集は困難だが、プランゲ文庫のお陰で、1949年初頃までの雑誌については全容のほぼ把握と、研究に必要な資料の抽出が可能である。
しかし、GHQによる検閲終了(1949年10月)後、1950年代に出版された性風俗雑誌は、体系的に収集・保存している機関がなく、全体像の把握、書誌研究が大きく遅れていて、研究の「穴」になっている。

たとえば、この時期の代表的な性風俗雑誌『人間探究』(1950年5月号~1953年8月号、増刊を含めて全34冊、第一出版社→探究社)、『風俗草紙』(1953年7月号~1954年10月号、2冊の増刊号を含めて全14冊、日本特集出版社)、『風俗科学』(1953年8月号~1955年3月号、全19冊、第三文庫)、でさえ、まとめて閲覧できる図書館・研究機関はない。
まして、他の性風俗雑誌となると、刊行状況の把握すら、困難である。

私は、2010年頃から、1950年代に刊行された性風俗雑誌の収集を始め、幸い『人間探究』『風俗草紙』『風俗科学』の3誌はコンプリート(完全収集)することができた。
また1960年代の代表的な性風俗雑誌『風俗奇譚』も、諸先輩から譲られて、かなりの量を所蔵している。

他の雑誌の収集は、きわめて不十分ではあるが、私もすでに高齢者の仲間入りで、収集の進行を待っている状況ではなくなりつつある。

風俗科学195501.jpgあまとりあ195412.jpg
青春タイムス 3-8(195011) - コピー.jpg内外特報 1953年10月19日号 - コピー.jpg
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