SSブログ

「変態性欲」研究書シリーズ(その3)澤田順次郎・羽太鋭治『變態性慾論』(1915年) [性社会史研究(性別越境・同性愛)]

9月3日(木)

「変態性欲」研究書シリーズ(その3)

澤田順次郎・羽太鋭治『變態性慾論(同性愛と色情狂)』
1915年(大正4)6月15日刊行
発行所:春陽堂(東京市日本橋区通4丁目)
発行人:和田利彦

全704頁。13×18.3㎝(四六判)
定価:1円60銭

【概要】
通俗的で、一般的に手に入る『変態性欲』をテーマにした「通俗性慾学」の代表的な著作。
著者に澤田順次郎と羽太鋭治は1910~20年代(大正^昭和初期)の「性ブーム」とりわけ「変態性欲」流行の立役者。
(参照:斎藤光編『近代日本のセクシュアリティ3〈性〉をめぐる言説の変遷』解説、ゆまに書房、2006年)

【背表紙】厚さは4cm。堂々たる大著。
変態性欲論(羽太鋭治・澤田順次郎) (1) - コピー.JPG

【表紙】
変態性欲論(羽太鋭治・澤田順次郎) (7) - コピー.JPG
エンボスで「Psycho-Pathological Sexes an introduction into the Study of Homosexes and Nymphomania」と記されている。

【内扉】
変態性欲論(羽太鋭治・澤田順次郎) (2) - コピー.JPG

【目次】
総論
 第1章 変態性慾研究の必要としての性慾学の研究
 第2章 変態性欲の範囲、及び其の研究法
 第3章 同性間性慾の概論
 第4章 色情狂の概論
第1編 顛倒的同性間性慾
 緒論
 第1章 顛倒的性慾感覚
 第2章 顛倒的同性間性慾の本性本質及び原因
 第3章 後天的顛倒性慾
 第4章 先天性同性間性慾
 第5章 先天性同性間性慾者の体格及び其の性的関係
 第6章 男子に於ける先天性同性間性慾
 第7章 女子に於ける先天性同性間性慾
 第8章 疑問の同性間性慾
 第9章 顛倒的同性間性慾の利害及び其の社会に及ぼす影響
 第10章 同性間性慾と法律 
 第11章 同性間性慾の予防及び其の治療
 第12章 第1編の結論
第2編 
 緒論
 第1部 色情狂通論
  緒論
  第1章 先天性色情狂
  第2章 後天的色情狂
  第3章 中間性精神障礙
 第2部 色情狂各論
  第1章 色情亢進症
  第2章 淫虐狂
  第3章 獣姦
  第4章 身体部位に於ける性的狂崇
  第5章 庶物に対する性的狂崇
  第6章 法医学問題としての強姦
第3篇 准色情狂
  緒論
  第1章 近親姦淫
  第2章 年齢上の顛倒
  第3章 情死
変態性欲論(羽太鋭治・澤田順次郎) (3) - コピー.JPG

【奥付】
変態性欲論(羽太鋭治・澤田順次郎) (4) - コピー.JPG

大正4年6月15日発行
大正4年7月7日再版
大正4年10月12日三版
大正5年8月15日四版
とあることから、売れ行きが良かったことがわかる。

【著者】
澤田順次郎(さわだ じゅんじろう 1863年~1944年)は、日本の性科学者。
1863年(文久3)、江戸の生まれ。東京府士族。
1882年(明治15)から中等教育に従事し、1904年頃、宮崎師範学校、1907年頃、海城中学校で博物の教師をしていた。
1912年(大正元)に『性慾論講話』を刊行して以降、著述業に転じ、1920年『性』、『性の知識』、『性欲と恋愛』などの雑誌を創刊した。
1915年(大正4)には、羽太鋭治と共著で『変態性欲論』(春陽堂)を刊行し、「性慾学ブーム」の中心的存在となった。
通俗性科学者として著作は多く、中でも『変態性医学講話』( 通俗医書刊行会、1934年)は晩年の集大成的な著作。
1944年(昭和19)、没。

羽太鋭治(はぶと えいじ 1878年~1929年8月31日)は、日本の性科学者。
1878年(明治11)、山形県山形市出身。
医学予備校「済生学舎」を卒業し、1900年(明治33)、医術開業試験に合格。
故郷で開業するが、一念発起して上京、1912年(大正元)、ドイツに約1年半留学して医学博士(ドクトル・メヂチーネ)の学位を取得。
1914年(大正3)、東京・神田小川町に泌尿生殖器科医院を開業。
1920年(大正9)に『性慾と人生』を創刊し、多くの通俗性科学書を著した。
しかし、1928年(昭和3)暮、精力増強剤の誇大広告に関わった容疑で医師法違反で取り調べを受け、前年の脳溢血の後遺症、神経衰弱での苦悩もあって、1929年(昭和4)8月30日、服薬自殺を図り、翌日、逝去。
主著に『変態性欲の研究』(学芸書院、1921年)等。
(参照:斎藤光編『近代日本のセクシュアリティ3〈性〉をめぐる言説の変遷』解説、ゆまに書房、2006年)

【感想】
洋行帰りの医学博士である羽太鋭治と、15歳年長で学士ですらない在野の研究者の澤田順次郎という対照的な2人の共著だが、澤田が序文を書き、また奥付の著者捺印も澤田。

この点については、序文に、澤田は800枚余の原稿を執筆したが、出版に至らず、「畏友、ドクトル・メヂーチ羽太鋭治氏、その他の先輩諸氏に計りて、原稿を修訂改竄し、且つ羽太氏の研究も併せて共著となし」、ようやく出版に至ったことが記されている。
境地ではあるが、チ術の中心は澤田にあると思われる。


nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。